「優しい気持ち」凪待ち CHIEALOHAさんの映画レビュー(感想・評価)
優しい気持ち
主演の香取慎吾さんは「人の優しい気持ちが痛い」と表現した。
友人だから、好きだから、好きな人の大切な人だから、家族だから。
縁があった人との関わりの中でつながる「優しい気持ち」。
ギャンブル依存のろくでなしが、掛け違えたボタンを直せないままろくでもない行動で闇に引きずり込まれる。
そんなろくでなしでも、一人で生きていたわけではなく、人生の中には「縁」があるのだなと心に染みた。
私の一番好きな映画はずっと「バベットの晩餐会」だった。
この映画は「優しい気持ち」が物語からにじみ出るように溢れている。
ストーリーの運びも出演者も、派手さは全く無いのだが、「優しい気持ち」はきらきら輝き、そっと宝石箱にしまいたくなる。
映画にちりばめられたサイドストーリーのようなさりげないエピソードで登場人物と関係性が想像でき、
説明しすぎないストーリーの運びも秀悦で、「映画を観る」楽しさを気づかせてくれる映画だ。
「凪待ち」も「優しい気持ち」がにじみ出でている。
この映画の「優しい気持ち」は宝石の輝きというよりは、大切な原石を見つける感覚。磨かれたものではなく「不偏の貴石」。
だれしも「優しい気持ち」を持ち合わせているがその気持ちをいつどうやって使っているのだろう。
一つ一つのシーンは丁寧に紡がれ、登場人物の人となりや性格すら感じさせる。
語りすぎないのに、シーンにはない登場人物の物語までも知っている感覚になる。
人生は山あり谷あり。今がどん底で、そのどん底をなんとかやり過ごすことができれば、次はもうどん底ではなくなる。
生きていること、縁のある喜びを感謝に変えて「優しい気持ち」を持ち続けたいと思う。
この映画は石巻の海、街、人々、だからこその空気感の厚みを感じました。
慎吾ちゃん。この映画で郁男になってくれてありがとうございます。
おかげで、私はこの映画を観る機会を得て、一番好きな映画が2つに増えました。