「もはや理解不能」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン とある映画ファンさんの映画レビュー(感想・評価)
もはや理解不能
ヴァイオレット・エヴァーガーデン。本当に素晴らしい作品です。テレビシリーズと外伝は、という条件付きですが。
で、シリーズ集大成とも言うべき、この劇場版。事前PVの時点でギルベルト少佐の様子がおかしかったので、まさかとは思っていましたが、予想を上回る出来の悪さに呆然自失。
ロリコン、二番煎じ、ご都合主義、よく飛ぶ手紙。この映画を表すキーワードはこんなものでしょう。そして主要キャラクターたちを概観すると、この映画のお粗末さが見えて来ます。
離島に逃げ込み自己中の傷心青年を自演乙しながら幼児退行した挙げ句、ロリコン性癖を大爆発させるギルベルト少佐。
ゴミ扱いして一度はポイ捨てした道具がスゴく魅力的な美少女になったので、にわかに発情して弟同様にロリコン化し、ストーカー行為に走るディートフリート大佐。
いつの間にか保護者面して立ち回り、やたらとヴァイオレットに粘着して嫌われるうざい束縛系オヤジと化したホッジンズ社長。
上映時間を延ばす為だけに仕立て上げられ、テレビシリーズの二番煎じ感動茶番劇をやらされて死んだオマケキャラのユリス。
映画の導入と締めの為だけに登場させられた、狂言回し役のデイジー。
とにかく演出、脚本がひどい。例えば大佐に関する描写を見ると、ヴァイオレットが失くしたヘアリボンを届けに来るとか、言葉巧みに彼女を船へ誘い込むとか、完全にふたりの間に性的関係があることを匂わしていました。
作中のヴァイオレットは高校二年生くらいのようですが、大佐は三十代半ばくらいでしょうから、下手をすれば親子ほどの年の差。これじゃ変質者の記録映画です。
また、少佐がどうやって生き延びたのかも十分な説明無し。ただ単に、ラストで感動的な夜の海での再会シーンをやらせたかっただけなのでは?片眼と片腕を失うほどの重傷を負ったのに、実兄のディートフリートにも同期のホッジンズにも気付かれず怪我を治して辺境の島へ辿り着くとか、あり得ないです。
ファンタジーでありつつもリアリティー重視のアニメだと思っていましたが、どうやら勘違いだったようです。
更に、まさかもうやらないよね?と思っていた病気感動ネタをまたまた長々と差し込んできて、メインストーリーの邪魔をするとか、製作チームは一体何を考えているのでしょうか。
極めつけは、ロリコン泣き虫構ってちゃんに変わり果てたギルベルト少佐のキャラ設定。原作はどこに行った?と言いたくなるメチャクチャな作りです。140分もの長編なのに、主役の彼は見せ場ゼロどころか延々とダメ男を演じるばかりとか、大丈夫かこの映画?
ラストの島内疾走シーンなんて、見苦しいを通り越し滑稽すぎてギャグアニメかと思いました。落ち着きがあって、凛々しくも優しい模範的な軍人だった彼はいずこに?ヴァイオレットって、こんな落ちぶれたクズ男を想い続けてたの?
そしてそんな本作品に対する巷の評価はどれも、最高!素晴らしい!感動した!泣ける!涙が止まらない!などなど、ざっくり見ても全体の99%は絶賛レビューばっかりです。
この状況、動くヴァイオレットちゃんが見られたから脊髄反射的に称賛!ということになってはいないでしょうか。原作とはまるっきり似ても似つかないお話なんですよ、この映画。実際に見終わったあと、マジこれで終わりなの?って感じでした。
こんなストーリーでは、匠の技を見せたアニメーターや声優さんたちが可哀想です。原作破壊も甚だしい。この劇場版ヴァイオレット・エヴァーガーデンは、とてもじゃないが公式作品とは認め難い出来、内容です。
もし劇場版鬼滅の刃で炭治郎がヘタレ少年に描かれていたら、ファンは怒るでしょう。今回のギルベルト少佐改変は、それに等しい暴挙ですよ。なのになんでそれが大絶賛の嵐となるのか、自称熱心なファンのひとりとして理解不能です。
本日、地上波放送(金曜ロードショー)で、テレビシリーズ再編集版と外伝が二週連続放送されるそうです。また新たな感動が生まれ、新しいファンが増えることでしょう。でもまさか、あの感動ストーリーの裏で少佐がエカルテ島にコソコソ隠遁し、悲劇のヒーロー気取りで精神的自慰に耽っていたとはがっかりです。
そして最後には、夜間水泳でズブ濡れぐちゃぐちゃになったヴァイオレットちゃんを、見るに堪えない泣き虫変態少佐が愛欲丸出しで待ち構えているなんて、すべてがつや消しです。テレビ版ギルベルト少佐のセリフを借りるなら「もうやめてくれ!」ですね。
以上、このレビューを不快に感じた方には心からお詫びします。でも、ファンのひとりとして書かずにはいられませんでした。これを読んでいらっしゃる方々はヴァイオレット・エヴァーガーデンのファンかと思います。いま一度、この映画への評価を再考すべきかと。
点数評価は内容的には0点ですが、制作に尽力された皆様への敬意を込めて0.5点としました。