「鎮魂の作品」劇場版 ヴァイオレット・エヴァーガーデン mmさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0鎮魂の作品

2020年11月4日
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鑑賞方法:映画館

泣ける

幸せ

 暗い。最初にぬかるんだ道と轍が続く。やがて暗い森の中に一軒の屋敷が現れ、我々の視点はその中に入っていく。轍は京アニの今まで示してきた道筋だろうか。そして館はあの京アニスタジオを示しているのだろうか。
館の中に入るとそこはこの作品の世界。一転して明るい世界が存在している。だがその場はたった今葬儀の終わったところ。
 死者からの手紙で、ヴァイオレットの功績を探っていくストーリーが始まる。そして、作品には3通の手紙が登場する。1通は亡くなった母から娘が50歳になるまで毎年送られた手紙。1通はもうすぐ死んでしまうものから家族へ送られる手紙。この2通は共通している。最初のは自分の死後、娘の成長を楽しみに想像し激励し、何時もあなたを見守っているよと伝える手紙。2つ目は自分が亡くなった後、残される家族への感謝を伝える手紙。いずれも残されたものを気遣う気持ちが溢れている。残された者の未来を激励し、過去を振り返って感謝の言葉を残す。
 3通目は海ヘの賛歌。しかしその文章はその式典の時には音にならず、別のところで戦場に赴き帰ってこない男たちへの追悼の言葉として語られる。つまり残された者からの言葉。
 この3通の手紙は、あの忌まわしい事件で亡くなられたり負傷された方々へ贈られた言葉だと思っている。そしてこの作品は鎮魂のために作られた作品ではないか。
 あなたの声が道しるべ。この作品を完成させなければ、京アニは前に進めないのではないだろうか。
 一番最後、轍を追う視点はヴァイオレットを追い越し先に進んでいく。まだまだ暗いけど先に進んでいく決意だろうか。
 さて、少佐が生きていたのはお決まりのパターンだったけど、こんなヘタレなやつだったとは。自分の手で武器として使ってきてヴァイオレットを不幸にしてしまったから会う資格が無いだと。それだからこそ今から彼女を幸せにするとなぜ考えられないのか。真さに大馬鹿ヤローだよ。最後の最後にヴァイオレットの愛を知り、2人が結ばれたのは判ってても大感動の涙でした。今まであまり感情を現さない彼女が、湧き上がる様々な思いに、感極まって言葉が出ず体も動かず只々泣きじゃくるという気持ち。さっさと少佐に歩み寄れという意見もあるけどそうじゃないのだ。動けないんだよ。「愛してる」の意味が分かったんだよ。
 ヴァイオレットちゃんのはにかんだ笑顔は最高です。

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mm