劇場公開日 2019年6月21日

「快感すぎる人殺し映画。」ザ・ファブル お水汲み当番さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0快感すぎる人殺し映画。

2020年7月19日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

私は原作を読んでいないので、岡田准一と木村文乃がどういう関係なのか、とうとう最後までわからずじまいでしたけど、そんなことはどうだっていいと思えるほどの、派手でスリリングで見事な人殺し映画でした。

まずなにより、人殺しとしての岡田准一の造形が良かったです。

幼い頃から人殺しになるためだけの訓練を受け、人としての常識を何も知らずに育った青年で、一瞬の躊躇もなく、殺す殺す殺す。
親代わりのボスの言葉が唯一で至上。ある意味でストイックな殺し屋で、興奮した後ろの客が私のイスの背中をガンガン蹴飛ばすほどの、そんな活躍を見せてくれます。

殺人の能力という点では、観客よりも圧倒的に秀でているけれど、それ以外の、たとえば社会常識なんて点で言うと、観客の足元にも及ばない。しかも今、必死に勉強しようと頑張っているのだから、観客は、よしよしいい子だねって気になって、なお一層この主人公を支持してしまうのでしょう。

人殺しの造形としては、敵役の「殺人フェチたち」のような異常者としての描き方もあるかも知れませんし、柳楽優弥をはじめ、良く演技していましたが、しょせんは主役向けではないキャラなので、その意味でも岡田准一の造形は優れていました。

相棒の木村文乃も最高。
凄く上手な女優さんだなとは思っていたけど、ここまで演技の幅が広いと、この先が末恐ろしいと思えます。
兄妹の「関係を演じる」ストイックな関係という、アメリカだったらすぐに恋愛感情に発展するだろうシーンでも状況を維持させるって、これまたストーリーの妙ですね。

そして山本美月。
超美人だけど、これまでは演技がイマイチな人だと思っていたのですが、この映画では見事な演技を見せてくれました。

全体として、ハリウッドのアクション映画にも遜色ない、小気味の良い映画だと感じました。

ただ、もう少し希望を言うなら、エピソードの盛り上がりをもう一山欲しかったと思いますが、そこまで求めるのは、ないものねだりかも知れません。

お水汲み当番