「小ボケとアクションの絶妙なバランスは、そこそこ楽しめる」ザ・ファブル Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
小ボケとアクションの絶妙なバランスは、そこそこ楽しめる
岡田准一主演のコメディという意味で相当に楽しめる。とくに民放のバラエティ番組を見ないような、NHK限定オッサン、オバハンには新鮮な岡田准一かも。
何しろ日本アカデミー賞の最優秀主演男優賞・最優秀助演男優賞をはじめ、日本映画を代表する俳優・岡田准一には近年、歴史作品や時代劇に偏ったシリアスな役どころばかりである。
ようやく気分転換できる本作は、南勝久原作の同名コミックの実写化である。しかも岡田の得意とするアクションも同時に披露できる、又とない役柄だ。殺陣以外の本格アクションは、「SP 野望篇/革命篇」(2010)以来かも。
岡田准一が演じるのは、伝説の殺し屋"ファブル"。"fable=寓話"という意味の呼び名を持つほど、まさに都市伝説的な男。ふだんは心優しい温厚な性格だが、仕事となると、"どんな敵でも6秒以内に殺す"天才的な戦闘能力を持つ。
東京で数々の標的を仕留めてきた、ファブルの正体がバレるのを恐れたボス(佐藤浩市)が命じたのは、1年間、普通の人間として生活すること。もちろん殺人はご法度。相棒のヨウコ(山本美月)とともに大阪で潜伏生活を始めることになる。
ここからは、"もしも凄腕の殺し屋が、普通の生活をしたら・・・"のいわゆるシチュエーションコメディのノリである。
幼少から普通の生活をしたことのないファブルの一挙手一投足がいちいち笑え、ギャップがすべて笑いとなる。そのたび劇場が笑いに包まれる。
このギャップを支えるのは、いたってマジメなヤクザ役の面々だが、これがまた豪華。ボス役の佐藤浩市だけでなく、ヤクザ(殺し屋)役で、福士蒼汰、柳楽優弥、向井理。あらためて存在感の大きさが、この作品にプラスになると再確認できるキャスティングだ。
柳楽優弥は、「ディストラクション・ベイビーズ」(2016)での狂気じみた演技を思い出す。狂悪人役という一面が板についてきた。
エンタメとしては、小ボケの連続で、冷静に考えるとそれほどでもない。実は共演者の豪華さやアクションで絶妙にバランスしている。もしシリーズ化するとなると、飽きられる可能性が高いので、ゲストプレーヤー次第かも。個人的には本作で止めておいたほうがいいと思う。
(2019/6/22/TOHOシネマズ日本橋/シネスコ)