「シリアスに描く闘う男達と家族の姿」クリード 炎の宿敵 みかずきさんの映画レビュー(感想・評価)
シリアスに描く闘う男達と家族の姿
やはり映画はラストで決まる。本作のラストは感動的であり、観終わって爽やかな余韻に浸ることができる。本作は、ロッキーシリーズの後継シリーズ第2作であり、主人公アドニス・クリード(マイケル・B・ジョーダン)が宿敵に立向っていく姿が描かれている。
世界チャンピオンになったアドニスは、かつて、アポロを倒しロッキーに敗れたドラゴの息子ヴィクター(フロリアン・ムンテアヌ)から挑戦を受ける。ロッキーの忠告を聞かず、彼は、ヴィクターとの闘いに挑んでいくが、そこには想像を絶する苦難が待ち受けていた・・・。
ロッキーシリーズに比べ、派手さはないが深みは増している。作品の贅肉は削ぎ落され、よりシリアスになっている。闘う2人の若者と、彼らの家族の姿に真摯に迫っている。本作の主人公はアドニスではあるが、作品全体を包み込んでいる優しい眼差しはアドニスではなくロッキーのものである。本シリーズは、闘うロッキーの後日譚と言った方が正確かもしれない。
本作はボクシング映画であるが、予想以上に家族の物語に時間を割いている。闘う2人の若者の家族への想い、彼らを支える家族の想いが丁寧に描かれているので、ラストの激闘シーンには素直に感情移入ができ、自然に涙が溢れてくる。
やはり、ロッキーを演じるシルベスター・スタローンの存在感が際立っている。セコンドとなったその目は、ロッキーシリーズのように精悍なものではなく、優しく慈愛に満ちている。アドニスへの助言は、ボクシング技術より精神的なものが多い。人生経験に裏打ちされたものであり、人生訓のように奥深い。
本シリーズの中心にいるのはロッキーであり、演じるスタローンの役者人生の全てが投影されている感がある。ロッキーはスタローンが生み出し、彼が全身全霊で演じてきた。ロッキーはスタローンそのものと言ってもいいかもしれない。次回作でも、スタローンの健在ぶりが観られることを期待したい。