「ロッキーの思い入れが強すぎてのジレンマ。」クリード 炎の宿敵 マツマルさんの映画レビュー(感想・評価)
ロッキーの思い入れが強すぎてのジレンマ。
シルベスター・スタローンと言うよりもロッキー・バルボアが大好きでいとおし過ぎて、ロッキーに共感アンド感情移入し過ぎた人はとても多いかと思いますが、そんなロッキー大好き人間にとっては見逃せないクリードの新作。
「ロッキー4」の最強ボクサー、イワン・ドラゴの息子が出てきて、ドルフ・ラングレンも出演しているとあれば期待をするなと言うのが無理と言う物です。
で、感想はと言うと…普通に面白いです。
でも、なんとなくノレない感じがしなくもないと言うのが、個人的な感じ。
原因はどうしてもロッキーシリーズに重ねて観ているからかなと。
なので、やっぱりロッキーがエイドリアンのお墓に語りかけるシーンにあのビル・コンティのBGMが流れると涙腺が緩くなる様な熱い物が込み上げてきますし、ラストであの「gonna fly now」が掛かると拳をギュッと握りたくなります。もう、それはそれはパブロフの犬の状態みたいにw
ロッキーが唯一と言っていいコンプレックス的な息子との交流の葛藤もラストで解消されていくのには「ランボー 最後の戦場」で実家に帰っていくランボーの姿を重ね合わせた様な報われた感があります。
結局、「クリード」自体を単体作品としての観られず、あくまでもロッキーシリーズの流れとして観ていて、今までのロッキーシリーズに重ね合わせているからかなと。
観る側がロッキー離れが出来ていないんですよねw
これは単体の作品として観ていない、観る側の問題と作り手側が過去のロッキーシリーズの意識を組み込み過ぎる所も問題かと。
でも、どうしてもロッキーシリーズの思い出を期待してしまうし、期待せざるおえない訳ですから、自分で言っててなんですが、困ったもんですw
ロッキー2とロッキー4のオマージュを骨組みに組み込んでるので予定調和と言えば予定調和ですが、それが心地好いですし、歴史のある作品のスピンオフなだけに王道パターンを踏んでいても過去の名シーンとの重ね合わせる所も多いです。
難点は主人公のアドニス・クリードは生い立ちこそ、波乱がありますが、アポロ・クリードの息子でロッキーをトレーナーに付けている時点でもう血統の良さは申し分無し。
勿論、楽な人生を送ってきた訳ではないけど、ハングリーさに関しては少し薄くもあるので、アドニスよりもイワン・ドラゴの息子のヴィクター・ドラゴの方に感情的にも肩入れをしてしまう所ですねw
ドラゴの30年前の敗戦からの苦難と元母親のブリジット・ニールセン演じるルドミラが良い感じで嫌な奴でw
圧倒的な強さとハングリー感でどうしてもアドニスよりもヴィクターの方が魅せる訳で、これはアドニスとヴィクターのダブルストーリーとも言えますが、なんと言っても影の主役はロッキーな訳ですから、なかなかアドニスは難しい立場なんですよね。
マイケル・B・ジョーダン演じるアドニス・クリードに思い入れを持てないと言うよりかは、同じ主人公でもシルベスター・スタローン演じるロッキー・バルボアが稀代の感情移入アンド愛すべきキャラクター過ぎて、比較する方が酷な訳とそこにこれまたハングリーの塊を体現したヴィクターがいる事でいろんな事が重なって、魅力が薄くなってるからかなと思いますが如何でしょうか?
あと、ビル・コンティの音楽が掛かるとグッと来る分、作中のレゲエやヒップホップに何か違和感があるんですよね。
まぁ現代の若者を主人公にしているボクシング映画なので、作中の音楽までなにがなんでもビル・コンティでなければいけない懐古主義な訳はないんですが、やっぱりあの一連のロッキーのBGMが流れると嬉しいしw、ここでもロッキーシリーズの伝統を意識してしまってます。
ラストではアドニスの勝利にもリングに上がらず、“お前の時代だ”と言った台詞はアドニスだけでなく、ボクシング界からのさよならを意味していると思うだけに切ない。
未練タラタラにしがみつくのを見ていたい訳ではないけど、やっぱりリングを通して、人生を戦うロッキーの姿をいつまでも見ていたいんですよね。
アポロのトレーナーのデュークの息子が出てきたりと胸熱な感じが多いのに、何かノレないのは個人的なロッキーの思い入れが強すぎるだけですが、ロッキーに思い入れが強い人は多いと思うので、この辺りのジレンマがむず痒かったりしてしまうのがちょっと難しい感じです。
かと言って、ロッキーのボクサーとしての見せ場は「ロッキー・ザ・ファイナル」でこれ以上の無い有終の美の大団円を迎えた訳ですから、ボクサーのロッキーは求めませんが、やっぱりロッキーに注目してしまう。
ロッキーが活躍した時代との背景は違うので比べるのが野暮でアドニス・クリードの活躍を素直に見るととても面白い作品なんです。
なんですが、ロッキーと言う単語をアドニス以上に書きましたがw、ロッキーファンの戯言の感想の1つとして思って頂ければ幸いです。