「シリーズを通して語られるアメリカ」クリード 炎の宿敵 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
シリーズを通して語られるアメリカ
あの頃のアメリカを取り戻す戦いではなく、アメリカが自信を取り戻す為の戦い。
重たいパンチ音が印象的でした。
クリードのストーリーを追いながら『ロッキー』の名シーンが蘇ってきます。
回想シーンが控えめな分、逆に自分の中に焼き付いているシーンの数々が自動で脳内再生され、
目の前の映画を観ながら過去のシーンもWで観ている感覚に興奮しました。
私の映画仲間にも“ロッキーステップ”で写真を撮った者が何人かいますが、フィラデルフィアに行ったなら、階段を駆け上ってポーズをとらないとね☆
今回もお約束のこの場所が出てくるのですが、映画の中でもロッキーファンの聖地となっていて、観光客が写真を撮って喜ぶ姿が…。
現実とリンクして、これまた不思議な感覚でした。
もはやロッキーは、フィクションを超えてアメリカと共に時代を生きているような錯覚が生まれ、
本シリーズを通して語られているのは、アメリカそのもののような気がしました。
「30年前の因縁…」
改めて過ぎ去った年月に愕然としましたが、
私もロッキーと共に時代を歩んだ一人なのだなぁ。しみじみ ( ̄ー ̄ )
1作目はまだ子供でした。
物心ついた頃のアメリカのイメージは
“女神が鎮座する自由の国”
“誰もが平等にチャンスを掴める多民族国家”
イタリア移民のロッキーの活躍は、まさにアメリカン・ドリームそのもので興奮しました。
そして冷戦。
アメリカ良い国強い国(by浜村淳)
今回の元になるエピソード『炎の友情』は、観ていて恥ずかしくなるくらいUSA!USA!映画でしたが、既にソ連に陰りが見えていた時代なので、アメリカの余裕を感じました。
その後、イラク戦争を経て9.11を経験したアメリカは、それまで信じていた「資本主義の正義」が揺らぐと共に、経済の冷え込みにも拍車がかかり…。
今や自国の経済を守る事が優先で、温暖化には目をつぶり、自由の国はどこへやら、移民やマイノリティーを排除する方向に舵を取るリーダーが選ばれるしまつ。
そこで今『クリード2』が語ることは、
強かった頃のアメリカを思い出しつつも、
いつまでもその頃の呪縛に囚われて、失ったモノを取り戻す為に戦っているようではダメなんだ!
外に敵を作って戦うのではなく、内なる自信と誇りの為に鍛えて立ち上がろう!!ってメッセージだったように受け止めました。
そして、女子目線のキュンキュンポイントとしては、宿敵のドラゴ親子がとても魅力的!
彼らは全て失ったところから出発していて、「失ったモノを取り戻す為の戦い」の象徴と思われます。
息子のヴィクターは子供の頃からある意味父親に洗脳されていて、特訓に次ぐ特訓だったのだろうなぁ。
その強い思いが親子を繋ぐ絆となっていて、健気に頑張る姿が哀れで涙を誘います。
息子の真っ直ぐで仔犬のような瞳に、キュンキュンしちゃいました。(≧∀≦)
そして、エイドリアンとの思い出を語るロッキーにも涙。
生き方が不器用で、様々な後悔を抱えている彼もまた
クリードの手助けをする事で、自分自身を見つめなおして、殻を打破る勇気をもらったように思います。
クリードを取り巻く女性達も素敵でした。
母親の、心の中では心配しながらも、息子を一人の男として尊重できる、強さと優しさ。
クリードの彼女も、ハンディキャップを背負いながら、自分の表現の世界を持って自立している。
安らぎと刺激を与えてくれる存在。
この先もロッキーファミリーのサーガを見守りたくなります。
そして、何と言ってもクライマックス。
クリードの粘り強いファイトに心が熱くなりました。
#クリード#クリード炎の宿敵