アップグレード : 特集
斬新で秀逸!予備知識ゼロで見たら、予想外の爽快感に“やられた”!!
これぞ掘り出し物アクション映画! 全身麻痺の男がAIで“超人”に!?
「ヴェノム」×「エクス・マキナ」!? この映画…楽しすぎる!
特に期待を抱かず何気なく鑑賞してみたら、あまりの面白さに度肝を抜かれてしまった。10月11日公開の「アップグレード」は、まさにそんな経験を与えてくれる。“全身麻痺の男がAIの力を借りて超人になる”というアイデアのもと展開される、新感覚の“高次元アクション”が楽しすぎる。そして、作品の手触りは「ヴェノム」のようであり、「エクス・マキナ」のようでもある。
映画は日々“進化”している――。そのことを痛感させるこの秀作を、日本の映画ファンに早く味わってもらいたい!
【今年最高レベルの掘り出し物映画】予想以上に爽快、最高にアツい!
斬新なアイデア&アクションに興奮確定
映画.com編集部も本作を予備知識なしで鑑賞し、予想以上の爽快感に完全に“やられてしまった”。掘り出し物を見つけたような気分で、誰かに感想を伝えたくて仕方がなかった。この作品……見れば血が沸騰するような興奮が押し寄せてくる。
[傑出したアイデア] 男は、AIで進化するまず、設定に光るものがある。温かい暮らしを送っていたグレイは、突如現れた謎の組織によって妻を殺され、自身も全身麻痺となってしまう。しかし天才科学者が生み出したAIチップ「STEM(ステム)」を埋め込まれ、絶望の淵で“進化”。謎の組織を追い、行動を始める。
STEMが全身を司り、グレイの肉体を動かす。しかも高度なAIにより会話も可能(脳に直接話しかけてくるタイプ)で、相棒として彼の復讐をサポートしていく――。そう遠くない未来に実現しそうな“傑出したアイデア”が、観客の心をぐいぐいと引っ張り離さない。
[新次元のアクション] ハイスピードの“人間には不可能な動き”
第一容疑者を襲ったグレイだが、あえなく返り討ちにあいノックアウト寸前に。そのとき、STEMはグレイの体を“操縦”することを提案。仰向けにぶっ倒れた状態からノーモーションで瞬時に起立し、目にも留まらぬ高速パンチを叩き込んでいく。STEMの力を借り、彼は超人的な身体能力を獲得した――。
人間には不可能だが、AIなら実現できる“最小限かつ効率的な挙動”が非常に新鮮。古今東西、これまでのどんな作品とも異なる“新次元アクション”を見ることができるのだ。
[夢タッグの製作陣] 「ソウ」監督&「ゲット・アウト」Pのセンス炸裂
鑑賞後、満足感に肌をつやつやさせながら、作品のスタッフ陣を眺めてみる。監督は人気ホラー「インシディアス」「ソウ」シリーズを手がけたリー・ワネル。そして製作は、「ゲット・アウト」「アス」など世界的ヒット作を連発するジェイソン・ブラムではないか。
この2人がタッグを組んでいたのか……! ここまで面白かった根源が、瞬時に理解できた。また随所に散りばめられた「ターミネーター」「ロボコップ」「ブレードランナー」など1980年代の名作SFへのオマージュも愉快だ。ワネル監督からの“ギフト”に、映画ファンは歓喜すること間違いなし。
[異様に高い評価] 鑑賞後、観客は恍惚のため息をつく――
いろんな賞を獲得しているのでは……、と調べてみると、やっぱりあった。2018年のサウス・バイ・サウスウエスト、そして第51回シッチェス・カタロニア国際映画祭で、ともに観客賞に輝いていた。過去に前者は「ベイビー・ドライバー」、後者は「ゾンビランド」などが受賞しており、本作も“良作”と太鼓判を押されたことになる。
鑑賞中、あるいは鑑賞後、観客は「なんて楽しいんだ」と恍惚のため息をつくにちがいない。ちなみに、ネット上では“ジェネリック・トム・ハーディ”(!?)と呼ばれるローガン・マーシャル=グリーン(主演)の熱演も忘れがたいので、ぜひとも注目してもらいたい。
【こいつが相棒】 AIチップ「STEM」にクローズアップ!
冷静沈着、合理主義、そして容赦なし でも意外と…かわいいかも?
最新技術の粋を結集しているだけに、グレイの要望のほとんどを瞬時にかなえてくれる、“なんでもできるすごいやつ”だ。その語り口は、SiriやAlexaよりもはるかに抑揚がなく事務的。しかしなんだか親しみも覚えるうえに、そう言えばこの声、どこかで聞いたことがある……「2001年宇宙の旅」のHAL9000にそっくりだ。
・洞察力と問題解決力がとんでもないグレイの復讐をサポートしていくSTEMだが、その精度がバカみたいに高い。例えば“妻の殺害現場の映像”を解析することを頼まれ、容疑者の1人の腕に肉眼では確認できないタトゥーを発見する。
しかも模様から個人情報を割り出し、住居をも特定してみせた。この間、わずかに1分。千里眼のような洞察力と完璧な問題解決力に支えられ、グレイは修羅の道を突き進んでいく。
・ツッコミが意外と鋭い
戦闘中、グレイが調子に乗って「俺は忍者だ」と声をあげると、STEMはすかさず「忍者ではない」と訂正。独特のトーンでツッコミを入れまくる様子は、オフビートなコメディを見ているようでもあり、“シリアスな笑い”がこみ上げてくる。
・やりすぎてしまいがち(人の心がないので)
ときにはグレイがドン引きするような“処刑”も、平気で実行してしまう。心を通い合わせていたのも束の間、冷水をかけられたような気分に……。軽々しい理解を拒むかのような、一筋縄ではいかないキャラクターだ。
・やたら“操縦”を替わってもらいたがる
あくまでもSTEMはアシスト役であり、体の“操縦権”はグレイにある。しかし「一度ピンチを救った」という成功体験からラーニングした結果か、脅威が現れるやいなや、STEMは即座に「単独で動く許可を」と求めてくるように。せっかちで、どこか可愛らしさすら感じる。
アクション好きは無条件で“恋に落ちる”! バディ感は「ヴェノム」
スピード感は「ジョン・ウィック」、革新的なAIは「エクス・マキナ」
冒頭でも触れたが、本作の手触りはさまざまな作品と似通っている。いわば“革新的な名作”の要素を抽出し、それらを有機的に結びつけた“ハイブリッド映画”なのだ。
グレイとSTEMの関係性は「寄生獣」「ヴェノム」、あるいは「ドラえもん」にも通ずる部分がある。スピード感あふれるトリッキーなアクションは、「ジョン・ウィック」や一人称視点の快作「ハードコア」にも似ている。
・バディ感は… 「寄生獣」「ヴェノム」 ・アクションは… 「ハードコア」「ジョン・ウィック」 ・雰囲気は… 「エクス・マキナ」「search サーチ」 ・復讐劇は… 「96時間」「イコライザー」無機質な近未来の描写は「エクス・マキナ」を彷彿させる。さらに復讐の過程に胸をアツくする一方、容赦のない無軌道な暴力にハラハラさせられる。要所要所で、映画ファンをニヤリとさせるような気が効いた展開が待ち受ける本作。あなたは、即座に“恋に落ちる”だろう。