「メッセージは何だろう」ビューティフル・ボーイ aMacleanさんの映画レビュー(感想・評価)
メッセージは何だろう
スティーブ・カレルが良い。
ドラッグにハマるティモシー・シャラメも素晴らしいとは思ったけど、他の作品ではどこかトボけた役の多いスティーブ・カレルが、息子を必死に支えようとする父親役が、こんなにハマるとは。甲高い声で無理難題ふっかけたり、場を白けさせたりというイメージだが、本作では全身全霊で、仲の良い息子をドラッグの地獄から救おうとする優しい父を見事に演じた。
軽い気持ちから始めた葉っぱのうちは、息子から告げられても父親としても大目に見ていた。だが、息子はクスリのせいで、やがて自制が効かなくなり、信頼していた父へも嘘をついて、より深みに落ちていく。手を尽くして、クスリを辞めさせようとするが、常に裏切られる。それでも、激情に駆られることなく、いつも穏やかに話をしようとする愛情深い父親は、アメリカの親父とは少し違ったタフガイ像だ。
特に、元妻からなんとかしたいので「助けて」という電話で、もう出来ることはないと苦しく語る姿、息子から「助けて」とかかってきた電話に「私では助けられないんだ」と、突き放さなければならない姿は、辛すぎる。
これは、実話だということだが、この映画で語りたかったことは何だろう。ドラッグの怖さの啓蒙としては、一定の役割を果たしているとは思う。家族で抱えていても無理な事柄なんだという事を知らしめることなのか。
ドキュメンタリーなら良いが、映画として伝えるメッセージが弱いのか、日本慣れした私の感覚が鈍いのか、せっかく良い舞台と役者が揃ったので、もうひとつパンチを効かせて欲しかった。
多分、貴殿の思いが今作品の訴えたい”キモ”なんだと思います。フィクションだからカタルシスや都合の良い着地点に導くべきというテレビドラマ的発想では今作品のアピールの意図は解読できないのではないでしょうか。
これが現実、これが現状の姿、これが突きつけられた目を背けたくなる今日。それは決して他人事ではない、どの家庭でも起こり得る事実。そうして砂上の楼閣の上で人々の幸せは形作られている世界を感じ取って欲しいというメッセージなのではないでしょうか。