アメリカン・アニマルズのレビュー・感想・評価
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ドラマと現実が虚実綯い交ぜになった異色作
ケンタッキー州の大学生スペンサーは退屈な日常をひっくり返すような何かが起きないかとぼんやり期待しながら日々を過ごしていた。そんなある日大学の図書館に貴重な鳥類図鑑が保存されていることを知ったスペンサーは、同じく退屈な日常に悶々としていた悪友ウォーレンに強奪しないかと半ばシャレで持ち掛けたところ大乗り気、さっそく綿密な犯行計画を練り始めるが・・・からの実話サスペンス。
冒頭に「これは真実を元にした映画ではない。真実の映画である」と威勢のいい啖呵を切る本作は虚実綯い交ぜとなった特殊な作品。まずドラマにドキュメンタリーが混じり込んでいて、実際の実行犯たち本人が出てきてそれぞれが当時見聞きしたことを語ると、それがドラマに反映される。しかもそれぞれの記憶が微妙に食い違っているのもそのままドラマにしているので、登場人物がいるはずの場所がカットが切り替わると別の場所になっていたり、出会った人物の服装が入れ替わったりとデタラメ。しまいにゃドラマパートに実行犯本人が映り込んだりして呆気にとられます。そんなムチャクチャな演出はちょっとした出来心がどんどん雪だるま式に膨れ上がり暴走するドラマにガソリンを注ぎ込み、ポーンと投げ捨てたかのような結末にはとんでもなく重たいテーマが滲んでいる。今まで観たことがない破天荒な作風に圧倒されました。劇中で言及される映画やクレジットに被さる歌にもニヤリとさせられます。
これは相当レベルの異色作でホントにヤバいレベルの傑作だと確信していますが、観客が私ともう一人しかいませんでした。・・・もったいない!
お宝を盗むという点ではオーシャンズと同じではありますが
“写実”という幻想
結局のところ、どこまでも“真実”という客観視点は、その当事者のフィルターが掛かれば“まやかし”の域を出ない。それは幾ら沢山の鳥の自然の生態を捉えた鮮やかで活動的なポーズであっても、それは死んでる鳥を針金と糸を用いて生きているかのようなポーズに固定する方法により描いていた作者の制作した図鑑でも同様だ。
今作の冒頭で“真実の物語”というテロップが強調されるが、その通りで、構造設計をストーリー部門と本人達のインタビューというシークエンスを差し込む形で、それがクロスオーバーしていくメタ展開に演出される、このところのハリウッド作品に散見される造りになっているからである。但し、段々と信用ならざる語り手により、どんどんとストーリーがぼやけてきて霧の中に突き落とされる羽目に陥る。
粗筋は四人の大学生が、鬱屈とした閉塞感の中で、それを打破するための“イベント”としてのプレミア本強奪を計画実行し、しかし理想と現実とのギャップにたちまち理性を失い崩壊していく、ダーク青春モノ作品である。こういう役を幾つもこなしてきたであろう若手俳優陣の演技はすっかり堂に入っている。特に気の弱い主人公役の俳優の丁寧だがどこか後ろ暗さを抱える演技は或る意味ワンパターンかもしれないが、なかなかそれを表現できる役者がいないならばどうしても集中してしまうのは仕方がない。
ストーリー前半の計画中のワクワク感の演出は、それこそ多幸感に溢れる。犯罪という禁忌を、しかしパーフェクトゲームに仕上げることが可能かもしれないという過信は、若さ故の高揚感であろう。こうして仲間達と一緒に同じ目的に立ち向かうイベントは、映画だけの世界ではなく、こうして現実にもあるんだという嬉しさを爆発させている。そしていざ、その完璧という勝手に思っていた、脳内完成図がガラガラと音を立てて崩れる様は、今度は観客共々居たたまれなさが容赦なく襲いかかり、前半にちょくちょく挟まれていたギャグ要素も鳴りを潜め、一気に夢から覚める。その一番の基点は人への攻撃による負傷。前半の脳内成功シーンの鮮やかでスマートな制御停止が、実際はもっと生々しく、そして尊厳を踏みにじる残虐な行為として繰広げられそれを否応なしに見せつけられる。そんな動揺が益々計画を陳腐な犯罪にメタモルフォーズしてゆく。動機は親の離婚による家族崩壊を受け止められない逃避や、漠然と目指してる成りたい自分に足りないピース(と勝手に妄想している)を埋めるためのハードル、友人を失いたくない想いや、親を超えたい気持など、中二病爆発によるスーサイドなのである。前半のファッショナブルさが際立つほど、後半の追い詰められる緊張感や失望感が生きてくるので、どんどん心が折れ続ける。別に今作品は、道徳的なテーマを訴える訳では無い。自己責任論を押しつけるテーマでもなく、理想と現実の中で溺れる青年達をありのままに載せてる“図鑑”なのである。しかし、その図鑑は本当に真実を写しているのであろうか、当人達にも分らない・・・
物語はこの映画で完結する
私が観る前に思っていた映画とは違う映画だったけど、これは、これで、良い意味で裏切られた作品だった
「このままでは、平凡で退屈な大人になってしまう」と感じた大学生4人組が、大学の図書館に貯蔵してある希少本の図鑑を盗む計画を立てる
その話は実話が元になっているのだけど、この映画が他の映画と違うのは、当事者たちが、映画の中に出てきて、その当時の様子を語るのだ
それは、本人しか知らない心情の吐露であって、それがドラマで描かれる実話にリアリティを増している
主人公は4人の大学生だ
大学生ぐらいの年頃というのは、たいてい無謀で、無敵で、何でもできると思い込んでいる
たとえば、カンフー映画を観たら、自分もカンフーの達人になった気分になってしまうように、
彼らは「オーシャンズ11」を観たら、泥棒ができるような気分になってしまうのだ
そんなノリで、泥棒を計画したのが始まりだ
しかし、多くの人が経験あるように若さの勢いとか、ノリっていうのは、たいてい、バカげているもので…
ここでは、ノリと勢いだけではない苦味や痛みも描かれている
はるか昔に、私もそんな時期を通ったからこそ、彼らの痛みが心に突き刺さってくる
若さの勢いがあまりにバカげていて、笑ってしまうシーンも多かったけど、その代償をキッチリと払わされているところに現実を超えたリアルがあると思った
単細胞にも程があるでしょ。
痛快な犯罪映画ではない
大学の図書館に所蔵されているプレミア本を4人の大学生が盗み出すという話。
緻密な計画で華麗に盗み出す!ということはなく、計画は結構ずさんで粗く、犯行現場や売りさばこうとしたときの対応とかも行き当たりだった。これじゃ無計画な、ただの強盗だ。しかも盗んだ後どこに売るかってことを準備してたんじゃないの?そりゃ捕まるわな。
でも、本作の面白さはそこではなく、盗んだ大学生(当時)たち本人(30歳くらい?)が出演していること。しかも結構序盤から。それぞれの言い分や記憶で再編成しているからか、食い違いを見せたり、何でこんなことしたの?というバカらしい部分も見せるのが面白かった。
なんかなー、もう少し面白くなった気がするのに。もったいないな。
刑を終えて映画に・・出ざるをえなかった?
予告編を見る限りオーシャンズ的なお洒落泥棒を期待してしまうし、実際のところ計画段階で彼等の脳内に映し出される犯行イメージ映像はなんとスムーズで格好良いワンカット長回しであることか!しかし残念ながらこの映画はファンタジーではない。まず冒頭で「この映画は実話に基づいた物語ではない。実話である。」との断り書きが出る。そして事件の実際の犯人たちが4人とも劇中に登場してくる(それも話が転がり始めるたびに顔を出して現実に引きずり戻す)ものだから、クライムエンタテイメントとはほど遠い「ほぼドキュメンタリー映画」なのだ。まだ何者でもない大学時代の焦燥と恍惚と不安が交互にやってくるような若者の気分がよく描かれていてヒリヒリしてしまう。刑期を終えたとは言え普通なら顔を晒したくは無いだろうに…そこがやはり良くも悪くもアメリカの凄さなのだろうか。
事前情報から、もっとドキュメンタリー寄りかと思ってましたが、割とエ...
ハラハラのドキュメンタリー
学生4人が何か大きな事をしたい、と目論んで大学図書館に貯蔵してある12億円の絵画の窃盗計画を実行する、というストーリー。
しかし見てると実に甘い作戦で軽率過ぎてハラハラしてそこは楽しめた。
自分も若かったらちゃっかり参加したい、と思いながら見れた。しかし失敗に終わった後の後悔したメンバーの顔を見てると少し可哀想になった。
若い時ノリで軽率な行動取らなくて本当に良かった、と(笑
一夜で飛べる鳥などいない
2004年にケンタッキー州トランシルヴァニア大学で
起きた実際の事件を映画化。
大学の図書館に保管された、鑑定額1200万ドルという
オーデュポンの大書『アメリカの鳥類』を盗み出そうと
した学生たちの顛末を、事件を起こした当人達を含む
関係者へのインタビューと再現ドラマで構成……という
より、その2つが混濁したようなユニークな作りで描く。
...
まず楽しいのが、人を食ったユーモラスな語り口。
再現ドラマの途中で演じられている本人が登場して
「こんなんだったよな?」と主人公に話しかけてきたり、
「青いマフラー……いや、紫だったかも」というナレー
ションと連動して再現ドラマの映像が変化するなど、
遊び心たっぷりの演出がそこら中に仕込まれている。
主人公たちが強盗計画を練る前半はおとなしめでやや
冗長さも覚えたものの、先述の自在な語り口に加え、
夜の街灯下を行くフラミンゴ等々の奇抜なショットや、
強盗直前の変装~犯行までのピリピリと緊張感を煽る
キレの良さなどは素晴らしく、最後までダレずに観られた。
主人公たち4人はけっこう優秀な学生たちなのだが、
強盗の方法を教えてくれる人は周りにいないので
(いないね普通)、計画の参考に『現金に体を張れ』
『オーシャンズ11』『レザボア・ドッグス』といった
過去の強盗映画で勉強して真似する展開が可笑しい。
主人公たちが犯行を脳内シミュレーションする
シーンも、それこそ『オーシャンズ11』のよう
になめらかで鮮やかでクール!なのだけど――
いよいよ映画後半、実際に強盗計画がスタートすると、
予想外の事態やらイマイチ定まらない覚悟やらが原因
でアタフタドタバタの悲惨極まりない犯行模様が展開。
強盗後もやることなすこと裏目に出て目も当てられない。
ここの流れは傍から見ればほとんどコメディだけれど、
図書館員の女性を暴行し恐怖させたことは笑い事では
済まないし、主人公らの感じている緊張感や焦燥感も
イヤというほど伝わってるので、苦笑いしながらも
彼らの行く末にだんだんと気が重くなってくる。
...
僕も主人公たちのことを「バカだなあ」と笑ったり、
「考えが浅いわあ」と苛立ったりはしたけれど――
若い時分なんてのは誰だってバカで浅はかなもの
である(なんなら現在進行形でそうである)。
本作の主人公たちが抱える『今の自分を変えたい』
という鬱屈した気持ち、そして自分の浅はかさが
元で過ちを起こした後の羞恥心や絶望というものは、
誰しも大なり小なり身に覚えがあるものではと思う。
それに、多分誰だって一度は信じたいと願うものじゃないか。
自分の人生は特別なのだと。自分も何かきっかけ
さえ与えられれば、特別な何かになれるのだと。
主人公ウォーレンが、図書館に一緒に保管されている
ダーウィンの『種の起源』よりもオーデュポンの書に
惹かれたのは、幼くして母を亡くし、放浪しながら鳥類画
を描き続けたというオーデュポンの特異な生涯が、まさしく
自分の憧れる“特別な人生”として心を揺さぶったからだ。
実質的なリーダーだったオーウェンの、「こんな暗くて
じめじめした人生からは一刻も早く抜け出したい」という
想いも、若い彼にしてみれば切実なものだったと思う。
だが残念ながら“傑出”とか“不世出”とかいう言葉は
そもそも世の圧倒的大多数が凡庸であるからこそ
成り立つ訳で、特別な人間なんてそうそういない。
それに、たとえどんな大天才だろうといきなり世に
名を残すような偉業を成し遂げられる訳じゃない。
一夜で飛べる鳥は無し。事を成すのに近道は無いのである。
ウォーレンの青い瞳とフクロウの青い瞳とがダブるカット。
フクロウは300°近くも首が回るが、眼球そのものは
あまり動かず視野は狭いのだそうな。映画の所々で
挟み込まれるオーデュポンの描いた猛禽は、目先の
獲物ばかりに食らい付いて周囲を見回すことを
しなかった主人公たちを表していたんだろうか。
...
結局、彼ら4人に残されたのは、
名声でも劇的な人生でもなく、前科者の烙印と……
手前勝手な理由のために罪もない人を傷付け、
愛し信じてくれた家族を傷付け、そして
己の人生そのものを傷付けたという後悔。
animal は言わずもがな“動物”の意味だが、
他方では“人でなし” の意味でも遣われる。
動物的な本能のみに従って手前勝手に生きる
人間は、えてして周囲の人々を傷付ける。そして、
『若気の至り』だなんて優しい言葉が人生で通用
するのは、それで誰も傷付かなかった場合だけだ。
以上。
インタビューと再現ドラマを混濁させる手法に
よってしか生み出せない人を食ったユーモア、
そして舌先に確かに感じるリアルな人生の苦味。
ノイズミュージックのような硬質なスコアも
全編に不穏さと緊張感をもたらしていてグッド。
非常に楽しめました。大満足の4.0判定です。
<2019.05.18鑑賞>
段取りは大事
ポスタービジュアルの格好よさ、予告のわくわく感、前評判から期待して見たらなんだか肩透かし。
なんと主人公たちメンバー、関係者本人がインタビューで登場するアイデアは面白いと思ったが、フィクション、ドキュメンタリーどっちつかずになっちゃったような。
モト友たちの再会、食い違う証言の答え合わせ、なんてラスト(これはフィクション)があったらなあ、なんて妄想してしまいました。
影響を受けた
高校三年生で一緒に何か特別なことをしたがっていた友達と2人で鑑賞。今観たからこそ感じるものがあったと思います。
同じような人間ばっかの学校で他の人とは違うことを示すためにはなにか特別なことをしなければならないのです。
だけどその特別を履き違えてしまってはならないんだということを学びました。
罪悪感に苛まれながら警察から逃げる姿に胸が痛くなりました。
何度も辞めるタイミングがあったスペンサー。なんなら1回辞退したにも関わらずに人生の転換期を求めて結局参加してしまう。望んでいたものは手に入るはずもない。
この時代に響く作品なんじゃないかと思います。
ドキドキ感あり
勢いだけでは
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