「縁遠い世界の話、なのか?」ヘレディタリー 継承 hhelibeさんの映画レビュー(感想・評価)
縁遠い世界の話、なのか?
ホラーは苦手であんまり観たことないんだけど、評判を聞いて勇気を出して鑑賞。
怖さレベルだけで言うと、想像してたほどではなかったかも。
でも映画の情報を私が完全に受け取れてるかと言うと、それも怪しいけど。
母親アニーが主人公と見せかけて、最終的には息子ピーターが主人公になるんだけど、振り返ってみると「何もない所にバックミラーが見える」とか「自分の部屋から一瞬で授業中の学校になる」とか、ピーター主眼の演出が多用される一方、母親は娘の事故現場をミニチュアで再現してたりと明らかな異常さを見せていて、そのことは早い段階から暗示されていたんだなと。
しかし自分の人生と「悪魔」が縁遠すぎて、悪魔って言われても…と最後のオチはあんまりピンとこなかった。
(映画とズレるけど、「自分以外の意思で、自分の命が道具のように扱われる」という理不尽は、昨今のニュースを見てると一部の企業や国の態度と変わらないなーと。ものすごいブラック企業のトップに「悪魔!」とか言うのは比喩でもなんでもなかったんだなー。)
でも観劇後は「悪魔かー」ってなったけど、観てる間はほんとに怖くて面白かった。やっぱり演出が凄いんだと思う。
ミニチュアを眺める視点のカメラワークとか、捉えられてない箇所も多いので、2回め観たい気持ちもちょっとある。
ところで。
アニーの話だと、この家族の悲劇は祖母が亡くなってから始まったんじゃなくて、今までも脈々と続いていたことが分かる。
祖父はどんな経緯で餓死したのか。
生前の祖母はどんな人物だったのか。
晩年の介護はかなり大変なものだったんだろう。
ピーターが生まれた時も、祖母から遠ざけるために壮絶な諍いが起こったはずだ。
映画の前日譚も十分にホラーめいた映画になりそうで、ちょっと観てみたい。
「その背後には悪魔がいる」とか言われると自分とは関係ない話に思えてしまうけど、悲劇や惨劇というものは、一番身近で一番味方であるはずの存在に軋轢が入ることで増殖していくんだなぁ…と感じた。