「観たことのないような静謐な不穏」ヘレディタリー 継承 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
観たことのないような静謐な不穏
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この映画の不穏で恐ろしいのだけれど、どことなく笑ってしまうような感覚は、どこまでが監督の手のひらの内なのだろうか?
とにかく主人公たちを突き放した、ただ無機質に観察しているかのような映像によって、われわれは傍観者の役割を与えられる。主人公家族はとんでもない悲劇に見舞われ、やがて超常現象的な恐怖が矢継ぎ早に訪れる。彼らの身になったらとても正気ではいられないのだが、映画の視点の冷徹さが、そしてその冷徹さを成立させるミニチュアを見ているかのような画郭が、感情移入を許さないのだ。
それでいて、あらゆる場面がいちいち異様であり、その圧が尋常でないため、どれだけ静かなシーンであっても目をそらすことができない。ぶっちゃけるとラストシーンはあれでよかったのだろうかと疑問を抱いたりもするのだが、表現の力という点で、全編、監督の才気に気圧されずはいられないパワーに満ちた新種のエンタメだと思う。
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