「事実は小説よりも…」ボヘミアン・ラプソディ BBさんの映画レビュー(感想・評価)
事実は小説よりも…
ザンジバル生まれ、(両親は)ゾロアスター教、インド系、ゲイ、ジャンキー、大ヒットメーカーであり、偉大なるパフォーマー。
衣装は奇抜。
タンクトップにピチピチパンツでパーフォーマンスを行うこともあるマッチョのちょび髭の出っ歯(歯が多い、と劇中で説明あり)。
そしてエイズで若くして亡くなる…。
漫画でも見ない、濃すぎるキャラのフレディ。
キャラ設定もエピソードも、足し算に次ぐ足し算で、
物語だったら「どれか1つ突き抜けてたらいいよ。やりすぎ」と削られるレベル。
でも「やりすぎ、濃すぎ」も、「事実なんだからしょうがない」。
情操教育の一環(というか、私が見たかった)で、4歳の娘と共に出かけられるか煩悶して、
「異性同姓問わずのベッドシーンなどが出てきたり、激しいドラッグシーンが出てきたりしたら、どうしたらいいか答えが見つからない…」と、結果1人で出かけることにしたが、
そう過激なシーンもなく、心配したけれど一緒でも行けたかもな、というくらい、意外と子どもでも(面白がってくれるかどうかは置いておいて)安心して見られる作品になっていた。
フレディの人生を、駆け足で。
彼の複雑な内面の変化を感じ取ることができたのは、
主演の目力と演技力によるものが大きい。
どこか怯えていて、迷いのある不安そうな視線の揺らぎに、
ここまで偉大なロックスターも、
私たちと同じ人間であり、
同じように自分のあり方に悩み、
答えがわからないまま、ただ走っていたのだという、
当たり前のことに気づかされる。
名前を変え、出生を伏せ、過去を語らず、セクシャリティも偽り、
「フレディ・マーキュリー」として生きた。
それでも中に確かに「ファルーク・バルサラ」がいたことを受け入れる姿には、涙を誘われる。
ファルークであり、
フレディであること。
偉大なロックスターの、規模大きめの「自分探し」。
こんなにキャラとエピソードが濃い「事実」と名曲の数々に、そんじょそこらの音楽フィクションは勝てるわけがない。
ていうか、なかなかノンフィクションでも難しい。
エピソード対抗馬はジョン・レノンくらいじゃ?
と思っていたら、ジョンの暗殺事件も映画化されるんですね。
それはそれで楽しみです。