「カッコいい女性RBGが戦ってきた、"差別"という常識」RBG 最強の85才 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
カッコいい女性RBGが戦ってきた、"差別"という常識
マイノリティ差別や性差別に対して:"法の下での平等"を主張できるのも、多くの先達たちのおかげである。特に社会通念として当たり前とされてきた、"女性の役割"という常識と闘ってきた人がいる。
本作は、"JFK"(ジョン・F・ケネディ/第35代アメリカ合衆国大統領)と並び、原題の"RBG"の呼称で通じるほど、米国では有名な女性、"ルース・ベイダー・ギンズバーグ(Ruth Bader Ginsburg)"のドキュメンタリーだ。
連邦最高裁に3人いる女性判事の一人で、現在86歳(映画撮影時は85歳)。特にトランプ大統領就任後から、リベラル派のRBGは、反トランプ派のアイコンとして持ち上げられ、キャラクターグッズまで登場するほどの象徴的な存在となっている。
この映画とセットで観るべき作品がある。今春日本でも公開された、「ビリーブ 未来への大逆転」(2019)だ。ほぼ同時期に製作・公開された作品で、主演のフェリシティ・ジョーンズが、弁護士時代の若きRBG役を演じ、"史上初の男女平等裁判"に挑んだ実話を映画化したものだった。
ニューヨークのユダヤ系の家に生まれたRBGは、学生結婚をし、子育てをしながら苦学の末に弁護士となり、最高裁判事まで上り詰めた努力家。それを支えた夫や家族の協力などが描かれていた。
本作には出てこなかったが、現在ドナルド・トランプ大統領による、"移民の難民申請を自動的に拒否する大統領令"を、連邦最高裁は差し止めている。
米国の最高裁判事は長官を含めて9人。うち4人がリベラル派であり、RBGはその1人なのだ。そして長官を合わせて5人が、その大統領令を抑えている。
連邦最高裁判事の任期は終身で、辞任(引退)しない限り、その職責はつづく。
実はRBGは昨年末、悪性腫瘍の全摘出手術を受け、現在、回復療養中である。
86歳の彼女が退任すると、トランプ大統領が保守派の新判事を指名することになる。そんな思惑に抵抗するかのように、信念と正義を貫くRBG。
日本人には、米国の最高裁判事が誰かなんて、あまり興味のない話である。しかしその半生から"性差別"や"マイノリティ差別"と戦う、カッコいい女性RBGの伝記が映画化される背景には、大きな理由があるのだ。
「ビリーブ」も女性監督のミミ・レダーだったが、本作の監督も女性のベッツィ・ウェストとジュリー・コーエンが務める。
(2019/5/14/ヒューマントラストシネマ有楽町/ビスタ/字幕監修:大林啓吾/字幕:赤坂純子)