大人のためのグリム童話 手をなくした少女のレビュー・感想・評価
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手法の驚き
映画を観て驚く時、2種類の驚きがある。内容への驚きと「こんな表現の仕方があるのか!」という手法への驚きだ。映画の歴史もそれなりに積み重なり、さすがに最近は手法自体に驚くことは少なくなっていたが、これは久々に手法そのものの驚かされた。
クリプトキノグラフィーと監督が独自に名付けたその手法は、一枚一枚の絵はところどころ線が欠けていて不完全だが、それらの絵を連続させることによって初めて完成した絵が浮かび上がる。欠けた部分をそれぞれの絵が補うことで、人物が浮かんでくる。
一人で長編を作るためにデッサン量を減らすことにしたことから生まれた手法だという。
日本のアニメは作画枚数を減らすことで作業効率を確保したが、この監督はデッサン量を減らすことで効率化を図った。結果、効率だけでなく独自のテイストのアニメーションを生み出した。
映像が絵の連続であるからこそできる、新しい絵の描き方だ。
芸術的だった
全てがリアルに描かれる日本のアニメとは対象的な作品でしたが、登場人物の感情や表情が凄く良く分かる作りでした。アニメーションは抽象的なのに、不思議です。音や動きなのでしょうか?とても芸術的だったのと哲学的だったので、セバスチャン監督の作品をまた鑑賞したいです。
おとなのための
そのような冠言葉をつけないとクレームがくるか。童話や伝承、昔話は時にグロいもので、加筆修正の歴史かもしれないが、本作はそういった流れと真っ向対峙する。残酷描写も性も穢れも示してくる。
どこで一旦停止しても絵になる絵本の世界観。省略やデフォルメで成り立つ表現手法。見えない意味をこちらであれこれ想像や解釈で肉づけするところに価値がある。色彩的な意味づけや模様、極端ですらあるカット割り、何かデフォルメされていてよくは見えないが、どうもこのようなことが進行しているようだと思わせるような表現、残像として頭に残る絵の数々、アニメーションでできることを追求してくる。
アニメが良いか絵本が良いか。その疑問は残る。
残酷ながらも、独自性と自立性に溢れ、美しく、全く新しいアニメーション!
アヌシー国際アニメーション映画祭審査員賞他、各国で多くの賞を受賞。
『グリム童話』の一編、『手なしむすめ』を原作としたフランス製アニメーション。
貧しい暮らしの父、母、娘。
父は悪魔に騙され、富と引き換えに娘を差し出す。
娘は父に両腕を切断される。
娘は家を出、放浪する…。
色んな意味で驚きの本作。
何から語ればいいのやら…。
まずは、
アニメでグリム童話と言うとディズニー・アニメのようなファンタスティックで楽しい作品を思い浮かべるが、基のグリム童話は本当は残酷な物語なのは有名な話。
本作もあらすじだけで分かる通り、楽しさとは無縁。
過酷な運命に翻弄されるヒロイン、腕の切断や目玉をくり抜くなどの残酷描写、性的な描写も。
それらがハイクオリティーの画だったら、胸糞悪く、とことんド鬱アニメであったろう。
独特の手法だからこそ、不思議な寓話として作品世界に誘われる。
その手法というのが、“クリプトキノグラフィー”。
監督たった一人で作画を手掛け、極力簡素化/省略化した作画技法。
そして、その画のタッチに何より驚かされた。
水墨画風と言えばまだしも、雑な下書きのような画が動く。
見初めはさすがに戸惑った。これを80分間見なければならないのか…。
しかし見ていく内に、ある事に気付く。
キャラや画が動いてるというより、それらを形作る線そのものが躍動しているのだ。…いや、寧ろ、息づいていると言っていい。
故・高畑勲監督の絵巻アニメ『かぐや姫の物語』や油絵が動く『ゴッホ 最期の手紙』の画の表現にも驚かされたが、こんな表現のアニメは見た事が無い!
画自体は簡素だが、描写は繊細で時に美しくもあり、いつしか引き込まれてしまう。
物語の方も一筋縄ではいかない。
不思議な精霊の力に護られながら、娘はある王国に辿り着く。
王子と出会い、見初められ、結婚。妃に。子も産まれる。
勿論、シンデレラ・ストーリーなどではない。
再び、悪魔が…。
悪魔の仕業により、娘、王子、仕える庭師の思惑が交錯。
娘は赤子を抱え、王宮を去る。
再び各地を放浪し、時も流れ、この寓話の結末は…。
一応の“めでたし めでたし”。
しかし、決して画に描いたようなハッピーエンドではなく、見た人に委ねる。
独自性、自立性。
それはまるで、たった一人で誰も作った事が無いようなアニメを創り上げた監督の才気と、アニメーションの新たな表現を切り拓いたかのよう。
ちょっと無理だった…
映像表現は、確かに斬新的だけど…。
普通に動くアニメーションなら、もう少し違った印象をもったかも知れないけど…。
観るのに疲れた…って感じ?
そして、オリジナルの話を知っているか、いないかでも印象が変わるのではないだろうか?
この部分も無知で…。
ちょっとダメだった…というのが感想でした。残念…。
悪魔にすら愛想尽かされる美
日本風のアニメに慣れた目には
ちょっと単純な絵に見えてしまうけど
その絵からしっかり細かな感情が
ちゃんと伝わって来てなかなか切ない〜。
人間の根源的な醜さと、
それを跳ね返してしまう程の
悪魔にすら愛想尽かされる精神の美しさと
強い愛が交互に表現され、
時にエロチックで、時に少々グロい表現もあり、
とても内容の濃い、まさしく「大人のためのグリム童話」
ハリウッド系や日本のアニメとは全く違う世界を
ぜひ、観て欲しいと思いますね〜〜。
で、月に8本ほど映画館に通う中途半端な映画好き的には
墨絵の様な柔らかな輪郭、例えるなら鳥獣戯画
(蛙と兎が相撲をとってる教科書に載ってたヤツ)が
動き出した様な絵に、水彩画っぽい優しい色の四角が
その人物を象徴して浮かび上がる。
先日亡くなった高畑勲氏が以前に、
あるヨーロッパのアニメ、墨絵が動きだした様な作品を観て
それに影響されて
「ホーホケキョウーとなりの山田くん」を作った!
と聞いたが、まさにそのヨーロッパアニメの系譜を継ぐ作品。
元になった原作のグリム童話では、
紆余曲折の末「めでたしめでたし」なのだそうですが
この映画自体は「めでたしめでたし」とは言い切れない〜
そこが観る人に委ねられている。
私は「真の楽園は結局そこなんだ〜」とちょっと切なく感じた。
大人にぜひおすすめです!
@もう一度観るなら?
「数年後に映画館で〜。
歳を取ったらどう感じるのか?その違い確かめたいわ」
現代に蘇った紙芝居
新海誠監督作品の真逆を行くような、ほぼ線描だけのアニメ作品。ですが、目が慣れてくれば動く紙芝居みたいで、今回のようなおとぎ話の表現方法としては十分にアリですね。それにしても、子供の時に色々読んだり聞かされたりしたグリム童話ですが、こんなにメルヘンでリアリスティックなものだとはついぞ気付いておりませんでした。面白い体験でした。
圧倒的な映像
表現描画に作品の世界に深く潜らされる80分間、終演時はちょっと足に力が入らず立ち上がるのが億劫になってしまいました。
重厚な主幹から相違りエンドロールはやや軽め、此れに拠り心落ち着き日常に呼び戻された感じ、凄まじく素晴らしい映画でした。
カッコ良すぎ!
とりあえず、出だしは不慣れで荒々しい画風に辟易するかもしれない。しかし、その絵が徐々に効果的になっていき、作品すべてを彩る要素となることは間違いないので、シンプルしすぎる音と音楽にも負けないで、煌びやかな作品であることを信じて、鑑賞したい作品。
この作品は、クリプトキノグラフィーと呼ばれる手法を用いているらしい。これは「暗号」を意味するクリプトグラフィーと「映画」を意味するキノを組み合わせた監督のセバスチャン・ローデンバック自らによる造語だとか。あたかも唯一無二のように聞こえてしまうけれど、個人的には故人となってしまった日本アニメの巨匠の影響を強く感じた。似てるからどうのこうの言うつもりはないが、よく分からない言葉がどうも気にくわなかっただけ。内容はかぐや姫より面白かったと思うし、こっちの方が好みだし─。
ひとりでほとんどの作画をしたらしいが、それによる粗も感じるし味わいも感じるし、苦労も感じられて、とにかく絵に不思議と引き込まれてしまった。絵の質は高いとは思えないけれど、芸術性は非常に高い。と言うと我ながら胡散臭い表現だと思ってしまうけれど、印象派の絵をどう思っているのか─その感覚がこの作品に対する評価に大きな影響を与えるような気がするということ。
個性的な絵とか線が長時間にわたって自由に動き続けることって、それだけでも凄いと個人的には思ってしまうのだが─。
エンディングのメロディーも非常に良かったので、凄く好感を持ったし、何よりもカッコいい作品だと思った。
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