「堺雅人のいない「半沢直樹」」七つの会議 Naguyさんの映画レビュー(感想・評価)
堺雅人のいない「半沢直樹」
面白いといえば面白いのだが、個人的にリアルな"会社人"というポジションだからなのか、池井戸潤ドラマはむなしい。
リアリティがあるのはいいが、ドラマで正義が貫かれても、現実は違うでしょ…という後味の悪さがどこか残る。"会社人"ではない人は心から楽しめるのだろうか?
趣味としての"映画"は、自分では経験のできない未知の人生を知る場所として楽しんでいるので、居心地が悪いのだと思う。池井戸ドラマの登場人物の行動は、すべて想定内である。
また内容的にも複数話の連続ドラマのほうが向いている。「空飛ぶタイヤ」(2018)もそうだったが、原作はいずれも映画化するには、展開が忙しすぎる。
本作は、すでにテレビドラマ化もされている。もともとは日本経済新聞電子版に連載されていた小説で、短編7話構成の群像劇スタイルだったので「七つの会議」というタイトル。単行本化に際して1話を加えている。
中堅メーカー・東京建電の営業一課の八角民夫は、いわゆる"ぐうたら社員"。しかし八角には隠された秘密がある。
ほんとうは7話それぞれに主役がいるところを映画的にアレンジ、野村萬斎が主役を務める。福澤克雄監督はドラマ「半沢直樹」、「ルーズヴェルト・ゲーム」、「下町ロケット」、「陸王」などで池井戸作品を演出してきただけに、同じテイストである。
香川照之、及川光博、片岡愛之助、音尾琢真、立川談春、北大路欣也と、池井戸ドラマの常連が勢揃い。おおざっぱにいうと、堺雅人がいない「半沢直樹」である。
新しい野村萬斎が見られる。それは"姿勢が悪いこと"。普通の俳優ならば何にも感じないところだが、背中が丸まっている野村萬斎は珍しい。もちろん役作りだろう。
エンターテイメント映画として1回観る分にはいいと思うが、やっぱり苦手である。
(2019/2/2/TOHOシネマズ日比谷/シネスコ)