カランコエの花のレビュー・感想・評価
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外側から見るLGBTの視野、このご時世だからこそ考えるべき作品
短編映画でNo.1の呼び声の高い今作。限定公開を受けて初めての鑑賞。進むのが怖かった…。
学校という社会の縮図の中で、LGBTの話題が身近に落とされる。犯人探しのように探る者、カミングアウトを偶然聞いたことに胸を痛める者、事実を知っても平然を装って取り繕う者…クラスの中の誰かに、自分のファーストインプレッションが存在していて、取り囲む環境を在々と照らされる。もちろん、そこに必ず共感してほしい訳ではない。寧ろ、カミングアウトに「あっ、そうなんだ」くらいになるのが理想だと個人的には思う。つまり、当事者にどう気遣っても、寄り添えていない。離していると同然なのだ。その難しさともどかしさが、空いた空席と共に浮かび上がる。しかし、「異性愛」がスタンダードとなっている以上、反芻するにも時間はかかる。結局、教育レベルからの改革が必要なのだろう。だから、これから育つ子どもたちが純粋に多様性を持つまで、社会的な変動は難しい気がする。
先述した、「ただただ怖い…」という意味をここで述べたい。それは、封鎖的で身を削られるように進むから。当事者が分からないまま進み、カミングアウトも許されない状況。知れば解決する訳でもない。その日々がカウントされていくのが怖かった。ひっくり返るまでは。
この映画を通じて、広い視野で話さなくてはいけないと痛感した。制度的な性的マイノリティの整備をしてほしいのではない。住みやすく生きやすいための環境作りが求められているのだから。今一度考え、自分自身に問いかけてみる。
表面と内面にある格差のリアル
期間限定で無料配信されていたので気になり観てみました。
無料公開された背景には自民党のLGBT差別発言があるのですが、自分はただの映画好きだから政治的発言はしたくないし出来る立場じゃない。でも一応人間ではあるので同じ人間として「知らねぇクセに批判すんなよ!」と思います。
その「知らねぇクセに批判する奴」はこの映画にも出てきて、過剰演出気味ではあるものの現代人のLGBTに対する認識をビシビシと浮かび上がらせていた。
テーマの追い込み方がとにかく上手なんだよなぁ。日常からどんどん追い詰められていく姿を荒ぶる感情のような撮影で表現していく。
なんだかやりきれない。やっぱり社会全体の問題なんだなと改めて感じました。
カランコエの花言葉は〈あなたを守る〉
LGBTを題材とした39分のショートフィルム。
無料配信していたので鑑賞。
保健教師がLGBTについて授業を行ったことで、クラス内にLGBTの人がいるのではないかという波紋が広がっていく。
傑作でした。
短編ともあってかなり観やすい上、短編とは思えないほどのメッセージ性。
これはすごかった。
皆さんのレビューにもありますが、保健教師のデリカシーの無さが気になりましたね。
“LGBTを差別するのはダメです”
口ではいくらでも言える。
これではただの主観的意見。
もっと間接的にアクション出来なかったのか?
この問題は本当にデリケートで難しい問題。
今のご時世、差別的発言はすぐ叩かれる。
かといってLGBT差別だと言って特別視するのもどうかと思いますし、だから放置・無視していい訳でもない。
自分も差別はしないものの(していないと信じている)、自分の中での恋愛と切り離して考えがちなところはどうしてもあります。
人種や障害、病気など何にしても、心のどこかで自分とは違うと冷ややかな立場を取っちゃうことって、気づかないだけで誰しもあるんじゃないでしょうか。
気づかないうちに誰かを傷つけているかもしれない、身の回りの人も知らないところで悩み苦しんでいるかもしれない。
劇中の桜も女子の中でイケメンの話とか上がるたびに辛かったんだろうなと。
そもそも、自分もLGBTではないとは言い切れない。
途中で目覚める、気付くこともあると聞くし。
桜が「何で庇うの?」と言っていましたが、彼女としては普通に扱って欲しかったのかな。
まるで腫れ物に触るみたいに、レズビアンが悪であるかのように。
月乃が「違うよ、桜がレズビアンなわけないじゃん」っていっていたのも、彼女なりの優しさだろうけど、自分が桜の立場だったらちょっと傷つく。
LGBTという言葉がある以上、社会的にマジョリティである恋愛とマイノリティである恋愛を分けなくてはいけないのか。
男子の犯人捜しやどうしていいかわからない友達、クラス内に広がっていく空気感がやけにリアルで、観ていて辛かった。
この問題について正しい答えは出ないけれど、この映画が一つの解決策、考え方の選択肢になれば良いですね。
NCW卒業生の監督映画~同性に好かれた方の視点
LGBTでレズの女子高校生を描く。個人の葛藤を描くというよりは、学校生活の中での生徒同士の関わりを描く。
全体的に淡いトーンの色合い。レズビアンの女子高校生に好かれる相手側の葛藤も描いているところが斬新。
いまLGBTを開示して寛容になっていこうとする社会の時流に沿った映画で、40分もので見やすい。啓蒙VTRにも使われているようだ。NCWの卒業生が監督した映画。
繊細
会話やクラス内の雰囲気にリアリティがあって親しみやすい映画
LGBTに関する映画は初めて見たが
この映画では当事者側の気持ちに入り込むことは難しいと思った。
偏見やそれに対する反応の難しさは感じることが出来た
私自身、女の子を好きになるし周りにもそうゆう子やそれで悩んでる子がいるが
実際こうはならない、と思った
もっとLGBTを軽く捉えるような人物がクラス内にいればもっとリアリティがでたのではないかと思う
エンドロールに桜の会話を入れたのはよかった
これがLGBTへの普通の反応なのかな。
ある日突然LGBTの授業を受けたことからクラスの中にLGBTの人がいるんじゃないかっていう噂が広まってく。
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私は映画で結構LGBTへの知識ついてる方だと思うし、なにせ女子校という特殊な環境にいたから周りにLGBTの子もいた。だから正直普通の人ってこういう反応になるんだってちょっと意外だった。
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結局、先生がLGBTの授業したのってほんとにクラスにLGBTの子がいてその子に相談されてたから。正直先生のつめの甘さにイラついた。
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正直生徒たちの反応は素直な反応だと思う。大人の理解が足りてなくて中途半端な対応をして余計波紋を広げてしまうことの方が問題。
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透き通った空気に織り混ざる残酷さ
周りの人たちの、「守るつもりの優しさ」が逆に本人を傷つけていき、えっ、ここで終わるの?!という、見ている側にとって一番苦しいタイミングでエンドロールへ。ある意味救いの無い区切り方で、だから観た人はいったいどうすればよかったのかと自分でモヤモヤ考えるしかない。それがとてもよかった。
生徒たちの様子がわざとらしくなくとても自然に撮られていて、透き通った素敵な空気を醸し出していた。その空気感と、なんてことない日常の中で表れる残酷さが織り混ざっているところもとてもいいなと思った。
40分で気付かされたこと
この映画では、マジョリティ視点で描かれている。
序盤ではクラスの誰かがLGBTである事だけ噂が流れ、発覚した時には、間違った配慮で本人を傷つけてしまう…
さくら自身が、純粋に月乃を想い、幸せそうに保健医に恋バナをするシーンは、女同士だと言う事で罪悪感をもって恋愛をしているわけではない。
LGBTの違いで悩んでいるとかそういう事ではなく、さくら自身もふつうに、好きの気持ちを抱いているだけ。
そこに何の意義を唱えるものかと、苦しくなりました。
月乃は、次の日学校に来なくなったさくらを思い、後悔と苦しさで涙を流します。
大事な友達なのに、「守る」つもりで発した言葉が、彼女ごと否定をして「守れなかった」。
この絶望感と、暗転からのエンドロールの保健室の会話の対比が、非常に考えさせられる演出でした。
これを観る時、友人にゲイやトランスジェンダーが多く、自分には理解があるものと考えていました。
LGBTに偏見を持っていないつもりでも、マイノリティの人々は辛い思いをたくさんしているだろう、といった部分にフォーカスしすぎて、下手にフォローをし過ぎたり、やたら持ち上げたり、結局ネガティブな受け取りとなる事はありがちなのかと。
保健の先生の授業も、自己満足になってしまっていたり…
いい意味で、LGBTに敢えて着目しなくなる社会になっていけたらいいのかなと思います。
クラスメイトの男の子がさくらを好きで、最後に茶化す男友達と喧嘩をするシーンが好きです。
ここで何が問題だったのかを、彼が学び、さくらを「守る」(守りたい)というところが見えたのがとても良かったです…何度も観ました。
カランコエの花の花言葉はね、、
あっという間に終わりがきた。まるで、花言葉を頭の中で反芻しながら後悔しているツキちゃんが、時間を後戻りすることができない現実に戸惑っているのと同じように。
あの終わり方はずるいよな。反省する暇も与えないんだもの。尺がもともとそうだというのは別問題として、むしろあの尺だからこそ、僕の心に、やり残した気持ちを植え付けられてしまった。
たぶんツキちゃんは、避けてしまった自分を責めているかもしれない。守ってあげられなかった自分を。あそこは「違う」というんじゃなくて、肯定する別の言葉じゃなきゃいけなかったと悔やんでいやしないだろうか。今も。
新しいけれど自然な描き方
あぁ、こういう描き方があったのか!と思った。周囲の視点。分かっているようで分かっていない、差別というものの意識が全くなく差別している、分かりあおうとしてすれ違う。短い映画の中にこれだけの表現を詰め込めるのは巧いな...と思った。
若い頃ってああいう風に自分と違う人間(みんな違うのに)、自分の常識で測れないひとたちをナチュラルに受け入れない、「ないもの」としてスルーしてしまう傾向があると思う。「あるのが当たり前、違うのが当然」という当たり前の多様性を皆が獲得するのはいつのことなのだろう。というか自分も無意識ではそういうことをしているのではないか。ひたすらに考えさせられた。
思いやりの形
カランコエの花、なかなかみにいけなかったこの作品をやっと観ることができました。友達を思う心と未知なることへの戸惑いを素のままに表現されて、40分の短い中にいろんな思いが詰まっていました。
見えない配慮をする自分を見つめなおす
"カランコエを止めるな!"というハッシュタグも現れた(笑)、今年もうひとつのロングランヒット映画である。「カメラを止めるな!」と同時期(7月)公開で規模は小さいながらも、クチコミが広がり、静かなロングランを続けている。
ただ本作は短編映画(39分)である。コメディでもない。大幅な拡大上映となることはないかもしれない。
LGBT映画である。2017年・第26回レインボー・リール東京(東京国際レズビアン&ゲイ映画祭)のコンペティションでグランプリを受賞している。
ある日、高校のクラスで休講した授業の代わりに、「LGBTについて」 の授業が行われる。あまりに突然であったのと、ほかのクラスでは同様の授業が行われなかったことをきっかけに、"クラスにLGBTの当事者がいるのではないか"というウワサが広まっていく。
思春期の子供たちが、それぞれに行動をとる。騒いで茶化す男子もいれば、どうやって守るべきかにひとり悩む女子もいる。
高評価のポイントは、LGBT当事者の視点や立場ではなく、周囲の人の目線から描いていることである。主人公も一般の女子高生。身も蓋もない言い方になってしまうが、LGBTいじめが発生した学級のようすをそのまんまカメラは捉えた、道徳教育のビデオのようである。
しかし、いわゆるLGBT映画のように、当事者が悩んだり、苦しんだり、泣いたりすることで、差別を認識させるのではなく、周囲の人々のとまどい、不安といった空気感をとらえ、コミュニティとしてどうするべきかを考えさせる作品になっている。
タイトルの、"カランコエ"の花言葉は、"あなたを守る"、"おおらかな心"。主人公の月乃が髪を束ねているシュシュがカランコエの花に見えるということから、そのシュシュを頭につけてあえて登校するようになる。
本作を観たのは恥ずかしながら、そういったメッセージ性ではなく、今田美桜(いまだ みおう・21歳)が主演しているから。そして、この名作に出会った。今年、ドラマ「花のち晴れ〜花男 Next Season〜」でメジャー人気になり、これからの出演映画は増えていくであろう女優である。
中川駿監督は、あえてLGBTについて意識的な準備をせずに本作に取り組んでいる。インタビューで、"偏見を持っているつもりはなくとも、距離を置いている"、"特別な配慮をすることがおかしい"と語る。
男の監督が、女優を主役にするときは何も構えないのに、LGBTを主役にする映画に特別な準備をするとしたら、それこそが差別であると。
そうはいっても、見えない配慮をする周囲のひとりかもしれない。
(2018/10/26/UPLINK渋谷/シネスコ)
あなたを守りたかった
例の授業の辺りからだんだん居心地が悪くなってくる。
「見つかってしまう」という不安と「見つけてほしい」という欲求に挟まれて息苦しくなっていたら唐突に終わり、物凄いエンドロールに入っていた。
みんな少しずつ足りなくて、少しずつ掛け違えていくのが手に取るように分かる。でも誰かを責めることもできない。
下手な授業をしてしまう先生も月乃の困惑も新木の反応と終盤の変化もリアル。
ただあなたを守りたかった、というポスターの一文を思うだけで胸が張り裂けそうになる。
それでも明確な救いをいくつか拾うことができた。
高校生たちの一週間を切り取った作品なので、その前後中にあるたくさんの余白を自分なりに埋めていくのが楽しい。
カランコエの花に似た赤いシュシュが、途端に重くなるシーンがとても好き。
その時の月乃の行動とラストの行動が対になっていてすごく切なくなるんだけど、心情や意味の表現として分かりやすいし何より本当に綺麗だった。
マイノリティ側に分かりやすく感情移入させるのではなく、敢えてマジョリティ側に焦点が絞られているのが新鮮。
観た後たくさんのことを考えずにいられなくなるので、世界に問いかける手段としても良いと思う。
何より、普通の高校生に訪れた変化の時を描いた作品として面白かった。
ほとんどエチュード的に撮影していたらしい。所々たどたどしい部分はあれど、自分がその場にいるような感覚になり、個人的なことをよく考えてしまった。
一応そうだったりそうじゃなかったり、自分をジャンル分け出来ないままでいて、それが一番しっくりくるからまあいいかと思いつつずっと迷っている気もしていて、でもこの映画を観てその後の監督と出演者の話を聞く内に自分を見つけてくれたような、そっと肯定してくれたような気がして気付いたらボロボロ泣いていた。
映画では高校生が主体だけど実際は若者より親世代や祖父母世代の理解を得ることの方が遥かに難しいと思っていて、でもこの映画に関わったことや観たことで気持ちを近くしてくれた人が確かにいることが嬉しい。
個人にとっては自然なことでも、所謂LGBTが少数派であるとこは確かなので、違和感を覚えるのは当たり前だと思う。
人それぞれなのであまり強いことは言えないけど、例えばこの映画をきっかけに少しでも考え方の方向を変えたり心を傾けてくれる人がいたら良いなと思う。
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