「名もなき被害者たちの悲しさが胸に迫る」天国でまた会おう とえさんの映画レビュー(感想・評価)
名もなき被害者たちの悲しさが胸に迫る
第一次世界大戦の終了間際に、顔に重傷を負ってしまった青年が、戦後、パリで企てた前代未聞の詐欺についての物語
主人公の青年エドゥアールは、戦争で顔に重傷を負ってしまったため、そのほとんどが仮面を被った姿で登場する
そんなエドゥアールは、戦争で命を落とした「名前のない犠牲者たち」を象徴している
そこでエドゥアールは「戦没者を慰霊すること」を装った詐欺をするのだが、その行為そのものが、犠牲者たちの思いを代弁している
日頃、戦争にも、犠牲者にも無関心なくせに「犠牲者を悼むため」というと、溢れるほどに金が集まるのだが、それは、金持ちの偽善と見栄でしかない
そして、本来なら、戦争を計画した者や、ゴーサインを出した者が罰せられるべきなのに、彼らはケガをするどころか、誰よりも贅沢な暮らしをして生きている
この映画は、そんな戦争の欺瞞や理不尽への皮肉であふれている
戦争で体の一部を失われた人間が苦しい生活を強いられ、逆に酷いことをした人間が贅沢な暮らしをしているのはなぜなのか
そして、この映画の素晴らしいところは、そんな眉間にしわを寄せたくなるような話を、とても美しく華麗に、観客に苦痛を与えず、寓話的に描いているところにある
表面的な美しさの裏側には、苦しみが内包され、悪事を行なった人間には、やがて天罰がくだる
戦争とは、人を殺す以外に何の目的があるのか
美しい映像と共に、その理不尽さについて、考えさせられた作品だった
そうですね〜。
人によって気になるところが違うからこそ、映画は面白いし、いろんな人の感想が読みたくなるんですねー。
こちらこそ、勉強になりました。
ありがとうございました。
確かにモルヒネを奪うあたりのシーンはそのような意味合いを強く感じることがありますね。ろくな治療も受けられない怪我人が放ったらかしにされてるわけですから。観る人によって気になるポイントが違うわけで、表現にも差異がでるものなのですね。
丁寧にお応えいただいたので、改めて勉強になりました。
ありがとうございました。
琥珀さん、コメントありがとうございます。
そうですね。私の言葉足らずだったみたいですね。
戦争の犠牲者たちが貧しい暮らしを強いられている一方で、戦争を利用して富める者たちいるという不条理を表現したつもりでした。
全ての人がそうであると書いたつもりはなかったのですが、読み返してみると、確かに説明不足だったように思います。
ご指摘ありがとうございました。
『戦没者慰霊や犠牲者を悼むことが金持ちの見栄と偽善でしかない。』
という表現は不適切だと思います。
生還した元兵士や戦場に家族を見送ることしかできなかった遺族、或いは友人知人を悼む時に、そのような場所があり、偲ぶべき人の名前が刻まれていることがどれだけ大事か。そして無関心だった人にとっても、そういう場に出向きなぜこの人たちが亡くならなければならなかったのか、を考える機会があるのとないのとでは全く違うと思います。総裁だって自分の息子を悼む為に、15万フラン出したのではないでしょうか。
お金を出す人の中に不届きな動機の人がいるかもしれませんが、慰霊碑には大切な意味があります。私の誤解かもしれませんが、戦争や災害の慰霊碑への望ましくない理解が広がるのが怖かったのでコメントさせていただきました。