「ピノコ」2重螺旋の恋人 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)
ピノコ
オゾン監督作品はいつも予想を裏切られ、このエロチックなサスペンスを読み解いてやろうと身構えていたのに、やはりハズレてしまった。邦題からして、カップル2人とも双子の兄妹がいるんだろうと想像はできる。しかし、精神科医ポールの無口で聞き上手な性格とは真逆の性格の兄がいるとわかり、ポールが多重人格障害を患っていて乱暴な男を演じいて、恋人とのセックス・ライフを違った角度で楽しんでるだけなんだろ、と予測してしまったのだ。そう決め込んだら最後、黒子の位置とか髪型とか、気になるところを検証するしかない!しかし、あのひげ面ではそれもかなわなかった。あれこれ考えていた中盤、ポールと一緒にいるときにレイから電話がかかってきたため、深読みしすぎた同一人物説は消え去ってしまった。
双子についてのウンチク、三毛猫についてのウンチクなどが伏線となり、猫の切り取られた性器の指輪とかグロテスクでホラー映画のような様相も帯びてくる。そんな中、クロエ(マリーヌ・バクト)が妊娠してしまい、二股をかけていたためどちらの子かわからない焦燥感。さらに再発した謎の腹痛。そして、腹からエイリアンみたいな何かが飛び出した瞬間、オゾンも変わったな・・・と冷静にスクリーンに見入る自分がいた。
ポールと付き合っていたという女性サンドラがクロエから見た罪悪感であり、付き合い始めたときに見えたシャムの双生児の残像とともに、消し去りたい双子の片割れというコンセプトがあったんでしょうね。ただ、ポールに対しては逆に両面性を求めていたってことなのかな。その反動なのか、女が後ろからやっちゃうってのも、考えてみれば凄いシーンだった。
最終的にはブラックジャックに登場する助手ピノコ誕生のエピソードみたいなもので、ブラックジャックは生かしてピノコを創ったけど、今作では残骸を取り出したに過ぎなかった。おかげでレイはすべてクロエの妄想だったとわかるけど、もう一度観ると矛盾点が見えてくるかもしれません。
胎内にいるとき姉を食ったという冗談めいた話までするクロエだったが、驚愕のラストショットから推察すると、死ぬまで罪悪感に苛まれるんだろうなぁ・・・