「€150(ユーロ)也」2重螺旋の恋人 いぱねまさんの映画レビュー(感想・評価)
€150(ユーロ)也
2018年8月23日現在19,218円/回の診療費は相当高いけど、まぁセレブの話だからどうでもいいか(苦笑
デビッド・クローネンバーグ作品は観ていないが、デビッド・リンチ作品のぬるい感じはイメージとして覚えたなぁと。フランソワ・オゾン監督作品は初めて観るし、尚且つ原作も未読なので、あくまで映画作品の感想なのだが、いわゆる『双子』という奇妙な生物をサスペンスとしてのアイデアとしてフィーチャーした内容である。それと、日本ではブラックジャックで誰もが周知のピノコ的なアイデアも含有されている。多作という監督の能力だが、それだけ色々な題材を上手く内包する技術を持っている才能高い人なんだと思う。
フランス映画的なイメージはあまり感じさせない作りである。
冒頭の髪を切るシーン、そして次の膣内検査のクスコの小道具等、それぞれそんなに難しくなく主人公の女性の人生みたいなものを象徴するようなカットになっている。双子をサスペンスのトリックに使うのは、日本の『溝口正史』的なアイデアに似ていて、これも親近感が湧く。官能小説で双子の兄弟が、金持ちの娘を陥れるという内容の話を読んだことがあるが、それも何となく似ているようで(今作は、主人公女性が双子に興味を持つということなので立場は逆なのだが)、ストーリーは入り込みやすい。
ただ、オチは直ぐには飲み込めなかった。余りにも夢と現実のシーンがあやふやになってしまっているので、本当に愛した男は双子だったのか、どっちを撃ったのかに囚われるとその辺りを見失いそうな怖さを覚える。一応整理すると、多分、弟を撃ってしまうのだが、女はそれに気付いていない。ラスト前の病院のシーンで、タバコを吸う男は、多分兄の方だ。だから、ラストのサンドラが窓を叩き割るシーンで『嫉妬』を表現し、しかし、女は『行動を起こさない欲望は害を与える』に従って、快楽を選ぶという事だと思うのだが、間違っているのだろうね。何だか不思議な浮遊感、そして示唆は一切与えないストーリー性を楽しめるかどうか、今作品はそこがミソなんだろうと思う。こういう作品が日本にもあるといいのだが・・・ NHKのEテレで、池松壮亮とオゾン監督の会談を観て、次回は是非、池松がキャストの作品を観てみたい願望が湧いてくる、そんな日本と親和性の高い作品である。