劇場公開日 2018年12月28日

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「本音を言って愛される」こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話 耶馬英彦さんの映画レビュー(感想・評価)

4.0本音を言って愛される

2018年12月31日
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鑑賞方法:映画館

 大泉洋は、映画「駆込み女と駆出し男」に出演したとき、樹木希林さんが出ると全部持っていかれると話していた。樹木希林とはニュアンスが異なるが、高畑充希も独特のエネルギーを放っていて、その場のシーンを全部持っていくところがある。若手の女優で同じようなオーラを持つのは黒木華で、高畑充希の動に対して黒木華の静とでも言えばいいのだろうか。いずれも日本の映画を背負っていく女優である。
 とは言え本作品の大泉洋は、高畑充希のオーラに霞んでしまうことなく、主人公としての存在感を十分に示している。ともすれば暗い無表情になり勝ちな病人の役を明るくデフォルメして演じることで、類型に陥ることなく、ユニークな主人公の個性を演じきった。
 映画の最初のほうでは、ALSの患者でボランティアの世話になっている主人公が妙に強気で厚かましく、どうしてみんながボランティアを続けられるのかが理解できなかったが、物語が進むにつれてその理由が明らかになっていく。そしてその理由そのものがこの映画のテーマであることもわかる。
 なかなかよくできた映画で、後半になると主人公の魅力でシーンが輝き出す。そして同時進行で周囲の人々も耀きはじめる。とても盛り上がる作品である。自分に正直に、本音で他人と接する主人公の前向きな生き方は、友達関係に悩む子供たちに是非とも観てもらいたい。悪意を持たなければ、本音を言っても愛されるのだ。そういう映画である。

耶馬英彦