「激動の現代史を意にも介さぬ男女の愛」COLD WAR あの歌、2つの心 バッハ。さんの映画レビュー(感想・評価)
激動の現代史を意にも介さぬ男女の愛
国策によって結成された歌舞団の指導者と新人として出会った男と女が、時代の流れに翻弄される。と、こう説明してもウソではないはずなのに、まったくそんな印象は残らない。この男女の痴話話は、もはや全体主義とか芸術の在り方とかそういうレベルを超越しているのだ。
あまりにも美しいモノクロ映像と音楽で綴られる男と女の遍歴は、確かに外的要因によって波瀾を増しているのだが、くっついたり離れたりを続ける主人公カップルにとって、そんなものは自分たちのややこしい恋愛を盛り上げるスパイスとしか感じてないようにも見える。
ミュージシャン同士のどうしようもない痴話話という意味でスコセッシの『ニューヨーク、ニューヨーク』を思い出したりもしたし、なんなら『天気の子』にも通じる部分があるように思う。とにかく「夫婦喧嘩は犬も食わぬ」を地で行く唯我独尊カップルの姿を、面白いと思えるか否かが観客側の分かれ道だろうし、自分はこのワガママな恋愛を非常に楽しんで観た。楽しむ、というには暗い部分も多いが、それもまたアッパレな暗さだったように思う。
コメントする