存在のない子供たちのレビュー・感想・評価
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この映画で心が動かされない人はいないはず。
観終わって、電車に乗っている今でも、最後のゼインの笑顔を思い出しては涙が止まりません。
生まれて初めて自分のIDが作られるのが、刑務所の中という皮肉。
感想を言葉にするにはあまりにも私の語彙が足りませんが、「みんなに好かれて、尊敬される立派な人になりたかった」と、12歳で人生を悟り、諦めるなんてこと、どの時代どの国にもあってたまるものかと…悔しくて涙が出ます。
まるで嫌なドキュメンタリーでも観たかのようなリアルなカメラワークと演者の演技も秀逸です。
素晴らしい作品でした。
ゼインの強さ
邦題に惹き付けられ、更に中東の社会問題を
描いた作品だと知りずっと気になっていた作品。
キャッチコピーから想像すると法廷劇なのか?
日本版ポスターに写る幼いこの少年が何をしたんだろうか?
とにかく心待ちにしていた作品。
と同時に果たして作品の重みに自分は耐えられるのだろうか心配も
あった本作。
結論から先に。
涙無しには観ることの出来ない素晴らしい作品。
125分があっという間で感動で心が充たされました。
泣けるから作品が良いとは限らないですが、
想像以上の奥深い物語の展開、主人公ゼイン少年の美しさ瞳を
通して映し出される世界観、様々な問題を抱えるこの地域の厳しい
現実に焦点を当てながらも生きることに対する揺るぎない逞しさ、
そして純粋さがこの作品にはあると感じました。
この作品には幾つかの涙も存在します。
それぞれの涙を通して社会問題を
見せつけられるし、個人的に感じたのは母親の辛さと強さ。
またこの作品の魅力は厳しい現実の重苦しさ一辺倒では
ないところでしょうか。
こういう作風に仕上げられるのはナディーン・ラバキー監督のセンスなんでしょうね。
彼女の今後の作品にも注目したい。
そしてゼインを演じたゼイン・アル・ラフィーアくん、
彼のピュアで力強い瞳の先に何があるのか是非スクリーンで
体感していただきたいです。
切なく胸が張り裂けそう。観るべき作品。
レバノンに逃れて来たシリア難民の子供達の生きる姿に胸が張り裂けそうになりました。
ただそんな絶望の中にも、時折見せる子供達の無邪気な姿にクスッとしたり。主人公ゼインを演じるゼイン・アル・ラフィーアくんの終始悟りきった、野良犬の様な瞳に魅せられました。
社会問題と言う意味では是枝監督作品の子供の瞳と相通ずる物がありました。
子供が守られる法的秩序が有るのは、ほんの一部の先進国である事を実感。そう言う意味で一人でも多くの人がこの現実を認識する事により、大きな意味が生まれる作品だと思います。
大ヒットして多くの人に観てもらいたい。
女性監督だ…
納得。こんなに厳しい子供目線な現実世界は女性ならではかも。世界は広くてこんなにも過酷な環境の子供達もいるんだな、と。お話も衝撃的だけど主人公の子役がすごいな。セリフも少ないのにひしひしと感情が伝わってきたよ。
観る覚悟が必要かも。
子供にはあまりにも過酷な現実を生き抜いていきながら、彼の持つ揺るぎない信念のようなものには、自分の生ぬるさを突きつけられているようでもありました。
淡々とした描写が、苦しくなるほどにリアリティを増していく。
最後の少年の表情にほんの少し救われました。
強烈なメッセージに圧倒される
大人がいかにずるく、大人というだけで信用を得ることができる存在なのかを思い知らされる。
その「おかしな社会」のなかで、ジッと大人たちを観察し、批判し、判断してきたゼインの決断にとにかく圧倒される。
もう、騙されない!そんな言葉では、納まりがつかない、決着をつけようとするゼインの覚悟に圧倒される。
この映画の展開の素晴らしさ、シナリオの的確さ、ゼインのキャスティング、そのどれをとっても監督の強い意志が現れている。
とにかく、素晴らしい。
どこの国も、貧困と搾取、児童虐待は深刻なのだと。
そして、「育てられないならば産むな」
というメッセージは、当事者の子どもにしか言えないことなのかもしれないとさえ思う。
「育てる」ってどういうこと?
何が必要なのか。
最低限、ただ一つ。
一緒にいても、離れていても、ただ一つ。
それがあっても、育てることはできないかもしれない。
けれども、それがなければ、他に満ちていても育たないんだろう。
監督の次回作に期待です!
命あるものの怒り
物語として、フィクションとしてだからこそ昇華された迫力があった。
貧困や人種差別、宗教対立、戦争や移民の問題で、出生届すら出されておらず、「存在しないことになっている」ため、基本的な人権が与えられず、教育、愛までも受けることができない子どもたちがゴロゴロいる。
映画の舞台となったレバノンだけでなく、今の「中東の現実」を映し出していた。
主人公の少年の怒りは、自分の両親だけでなく、子どもに救いの手を差し伸べることのない、国、世界、社会そのものへ向いている。
レバノンだけでなく、世界中で国籍も戸籍もない子どもたちがいることを、映画から強く訴えていた。
それを体現した、子役(ゼイン役)のゼイン・アル=ハッジの演技がすごい。
ゼイン自身がシリア難民の子で、自身の体験と役柄に重なる部分が多かったからからなのかもしれない。
裁判シーンも、本物の裁判官に演じてもらったそうだ。
是枝監督かよ!って言いたくなる感じの作りではあったが、奴隷や臓器目的の人身売買組織まで出てくるあたり、日本の比でないレベルで闇の深さが半端なかったです。
傑作のひとつとして、おすすめ。
存在のない子どもたち
レバノンのことをテーマにした作品は今回が初めてでした。
西洋から見たレバノンなのかもしれないと監督さんの名前を見たときに頭をよぎりました。
貧困や戦争が1握りの武器商人や関連企業そして政治家たちを儲けさせる限りこの世から貧困や戦争といったものがなくならない切なさは常日頃感じつつ、
自分自身も食べ物を食べ過ぎて太っていたりする現実の狭間に決してこの世の中の不条理に加担していないわけでは無い事実に自己嫌悪にも陥ります。
日本にも戸籍のない子供がいるとニュースや新聞で見聞きし何か自分自身でもこの問題の解決に役立てることがあれば募金であっても参加していきたいと思っています。
日頃の自分の生活は偽善者的であっても人間は誰1人として完全な善人完全な悪人はいないので自分を否定せずできる範囲で社会に貢献していきたいと思いました。
主演のゼイン・アル=ハッジくんが素晴らしい
中東の貧困・移民問題を、12歳の少年の目線で描く人間ドラマで、過酷な現実を描く内容だが、少年の優しさと賢さと誠実さを応援したくなる。
とにかく主演のゼイン・アル=ハッジくんが素晴らしい。
彼の演技と存在感で驚くが、本物のシリア難民で、演技経験は無いらしい。
スラムの俯瞰撮影やベイルートの朧げな景色や時代遅れの遊園地などの情景も印象的。
世話できないなら、産むな!
また1つ、児童婚や児童労働という貧困がテーマの映画が出たという感じだが、「世話できないなら、産むな!」という少年のメッセージは過激だ。斬新な切り口で、他とは一線を画するテーマ内容である。
また、2時間たっぷりあるにもかかわらず、1カットどころか、1フレームの無駄すらない展開。俳優の一つ一つの所作も、計画され尽くされている。そういう技術的な面でも感心した映画だった。
孤独な少年の、両親への反抗。ラストは賛否あると思うが、心に刺さる名作であることは間違いないだろう。
ゼインの守りたかったもの
観終わったあと、ラストシーンが残像のように残った
劇場を出るときに、壁に映画のシーンのパネルと共に記載されたコメントを読んでいたら、町山さんのコメントが、胸にズシンと来た
きっと、観る前なら、そこまでは響かなかったコメント
ゼインを演じるゼインの、その瞳
ゼインを始め、映画の中の人物と似たような境遇の人たちが演じていると聞いていたけれど、その瞳の力のなさが胸に突き刺さる
誰かが悪いわけではない
訴えられた両親たちもまた抜け出ることの出来ない日々の中にいる人たちでもあるから
まさに負の連鎖のような状況
それでも、ゼインが両親を訴えてでも守ろうとしたものに、胸が詰まった
不思議なことに、希望のかけらもないはずの現状の中、それでも何か微かな明るいものが見えるように感じるのは、ゼインのおかげだろうと思う
その小さな身体で、世界の広さも知らない視点で、全てを諦めたような瞳で、善と悪の違いが存在しないような場所で、妹を、赤ん坊を、必死で守ろうとするその思いやりや優しさのおかげ
心に重く、深く、残る
凄い…
うまく言葉にできないのですが、ゼインの強さと優しさに、誰がこの子を守るんだ…と、ただただゼインを抱きしめたくなるというか…。
世界によって環境が全然違うので日本に生まれた時点でわたしたちは恵まれているということは確かなのですが、
ゼインの 世話できないなら作るな という訴えは一人一人が意識しなければならず、この映画が世界中の多くの人に届き響くと良いなと思いました。
普段はハッピーな気分になる作品が好きなので、久々にこんな気持ちになる映画を観ました。
でも暗い気持ちになるとか悲しいというよりも、凄く良いもの観た、という感じで、改めて映画って素晴らしいなと思いました。
映画を観る→現実逃避だったけれど、これは現実の方がマシと思ってしまう映画でした。
毎日仕事で忙しくて、何のために生きているんだろうと激務の時に思っていた。いっそ全部投げ出してどこか行きたいなんてことも。そんな時、この作品に出合いました。
つらさは人それぞれで、比べる物ではないのですが、この作品を観て、いかに自分が恵まれているのかを実感しました。いつもは現実逃避で映画を観ていますが、これにいたっては、この現実に生きていて良かったと思う程。
身分証。誰もが一つはもっているはず。保険証、免許証、パスポートなど。持ち歩くの面倒だなあなんて思っていたけれど、この作品の主人公ゼインは、それすらできない。貧困を理由に両親から出生届が出されていないため、社会的には存在していないのだ。存在していないので、学校にも病院にもいけない。働くしかないゼインと兄弟たち。
どん底かと思ったらまだ底があるような次々に辛いことが襲い掛かる。
育てられないなら産むなという言葉が胸につきささります。
と、ここまで書くと重い映画かと思われますが、主人公をはじめ登場人物のどのような環境であっても生きようとする強さや、ユーモアあふれる描写、そしてラストの展開など決して重いだけの作品ではありません。
観て本当に良かったと思っています。
タイトルなし
『大人たちに聞いてほしい。
世話できないなら産むな』
これはゼインの心からの訴えです
.
俳優ではない出演者たち
ストリートキャスティング
中東の貧困・移民問題で
映画と同じような境遇におかれた人達
その表情や言葉はリアル
現実に起きていることだということを
知らなくてはいけない
.
ゼインは怒っていた
でも必死に生きていた
生きるために
親と同じことをしてしまっている姿は辛い
でも彼はその術しか知らない…
負の連鎖は断ち切らなければいけない
簡単なことではないが
差しのべる手
救いが必要だということを
考えなくてはいけない
.
.
ゼインの吐き捨てるような言葉が
忘れられません
心が痛い
子供を悲しまる親なんて糞食らえだ!
こんなにも食い入るように映画を観ることになるとは…。
本当にあっという間の125分でした。
カンヌ映画祭で、『万引き家族』と一緒に話題になった作品だからこそ、すごく興味深い作品の一つでした。
家族の問題を取り上げていて、同じようなテーマだと思っていましたが、こちらの方がいろんな意味で深くて重い…。
貧困問題だけでなく、宗教問題、男女差別、環境汚染など、少年を取り巻く生活は、過酷すぎて言葉にならない…。
朝起きてまず思うとこは、今日生きるための食事を確保しなくてはと考えること。
生きる=食べる、という悲惨な現実に打ちのめされました。
学校に行くこともままならず、親は仕事をすることを強制的に進めてくる…。
例え、行かせてくれたとしても、学校で物をもらえるかもしれないという、希望的観測の進めだけ。
子供達の将来のことなど考えもせず、親は次々に子供を産み、ますます生活が苦しくなっていくのです。
親としての責任や、将来の幸せなど全く考えもせず、今ある現実から逃げようとするだけの親たち。
さらに愛する11歳の妹を、ロリコン男の嫁にやろうとする両親。
いくら金がないといえど、やっていい事と悪いことの分別を間違えてはいけない…!
両親のあまりの非情な行為に、12歳のゼインは怒りを爆発させ、立ち向かいますが、全く歯が立たず…。
あまりの悲しみと怒りに、親に愛想をつかしたゼインは、12歳にして家を飛び出す決心をします。
行く当てなんてないと分かっているのに、それでも家族から逃げることを選んだ少年。
その強い決断力が、観る者を圧倒させます。
ゼインの悲しく遠い目から感じる寂しさと、絶望、怒り…。
12歳にして、ここまでドン底の世界を知ってしまったら、私だったら立ち直れる気がしない…。
それくらい彼のとった行動は大人。
こうして、全てを悟った彼は、12歳にして立派な大人へと変貌していました。
優しい言葉なんてかけてもらったこともなく、いつも暴力や罵倒ばかりの生活。
痩せ細り、まるで小学校低学年くらいのガリガリの少年と成り果ててしまった彼が、何故ここまで必死に両親を訴えるのか?
裁判から見えてくる真実に、悲しみの涙をこらえることに必死でした。
特に、少年の悲しそうな表情がずっと脳に焼き付いていて離れません…。
『誰も知らない』という映画の柳楽優弥くんを観ているかのよう…。
あの虚ろで空っぽの目は、親を信用、信頼しなくなった証のように感じました。
あの目は、映画を観終わってもしばらく忘れることができそうにありません。
子供が大人を見限った時、あんな表情になるんだなと感じました。
今年観た洋画の中でも、一番印象に残るであろう作品。
今日試写会で出会えたことに感謝です。
ありがとうございました(^^)
ずっしり重いレバノン版『万引き家族』
レバノンの貧民街に暮らすゼインは学校にも行かせてもらえず家族の生計を助けるために色々な仕事をさせられているが兄弟思いの優しい少年。妹のサハールが近所の商店主と強制的に結婚させられたことに耐えられないゼインは家を飛び出し海沿いの町に辿り着き、小さな遊園地のレストランで働くエチオピア移民の女性ラヒールと出会う。ラヒールの息子ヨナスの世話をすることを条件に一緒に暮らし始めたゼインだったが、ある日ラヒールが家に戻らなくなり仕方なくヨナスを連れて町に出るが・・・。
冒頭にゼインが法廷に立つシーンから始まり、なぜ彼が法廷に立っているのかを紐解いていく構成。貧しい生活の中で身につけたサバイバルスキルと実に子供っぽいヤンチャさで厳しい世界を生き抜くゼインが辿り着いた自分の出生に関する真実、狡猾に振る舞う男達に不当に虐げられる移民達、そしてスクリーンの向こうから饐えた腐臭が漂って来そうな薄汚れた街並み。何もかもが凄惨な世界で、それでもゼインの置かれた現状を知り手を差し伸べる人達によって暗闇に微かな光が差し込む様がしんみりと胸に沁みる静かな感動作。
リオを舞台にブラジルを代表するフェルナンド・メイレレス、ジョゼ・パジーリャ他国内外の多彩なスタッフ、キャストによる短編10作によるオムニバス映画『リオ、アイラブユー』でハーヴェイ・カイテル主演の”O Milagre”を監督していたナディーン・ラバキーの監督作。”O Milagre”は神様から電話がかかってくると信じて公衆電話の傍から離れようとしない少年を巡るファンタジー、本作とも通底する厳しい現実を真正面から見つめる強さと包み込むような母性が印象的。どちらにも出演されている監督の確固たる理性を携えた凛とした美しさももちろんカッコいいですが、自ら演じる役を通じて主人公に対する自分の思いを滲ませるかのような演技も素晴らしいです。
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