存在のない子供たちのレビュー・感想・評価
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揺さぶられるような、世界観が変わるような凄い映画
夏休み期間のアニメ作品、ディズニー作品がランキング上位を占める中、あえてこの映画を見てきました。
シネスイッチ銀座という渋い映画館で(上映館が少ないかったので)。
中東 レバノンで、出生届を出してもらえず、生きていく上で最低限の法的資格を持たせてもらえなかった子供達に起こる悲劇の話。
揺さぶられるような、世界観が変わるような凄い映画でした。
子どもを作るな
息が詰まりました。どこからどう見ても地獄、登場人物全員が地獄のような境遇に立たされていて、この状況を呑気にメロンソーダを飲みながら見ていることがもうしんどくて、全然息ができませんでした。
戸籍がないことから始まって、親からの愛情がない、住む家がない、食べ物がない、飲み水がない、頼れる大人がいない、安全な場所がない、あるのは絶望だけ?こんなことが同じ地球上で起きていると思うと、自分がちっぽけなことで悩んでぼーっと生きていることがもはや恥ずかしくて、見ていて辛かった。
正直私はこの映画で誰が悪い、とか分からなくて、子どもを作ることが正しいと信じて劣悪な環境でも子どもを作り続けるゼインの両親、ただただ息子を守りたかったラヒル、大人たちはみんな自分勝手で子供達を傷つけるけど、こんな最低な国で(劇中のセリフにありました)ただ生きるのに必死だったのだと思うと誰も責める気になれない。アスプロは流石にサイテーだけど。
ゼイン演じる子役の、眼がとても印象的。子供とは思えない、何もかもに絶望してしまった表情。自分勝手な大人、環境に呑まれても自分自身だけでなく大切な妹や弟のことを守ろうとする姿に思わず涙も出ました。給水タンクをあけて放った「最低な国だな。水もないのかよ。」というセリフが印象的。
今ここ日本で穏やかに映画を見て美味しいご飯を食べて仲間と過ごし暖かいベッドで眠れていること、こんな当たり前の日常に感謝しようと思えました。
絶望だけではなく勇気と強さを感じた
評価が良いので車で2時間遠征。
ネタバレ無しで言うと、、、
映画でタバコ吸う
子供がタバコ吸う
子供が働く
子供が万引きする
子供が結婚する
などなど、日本では問題になる映像が多い。
日本人なら目を背けたい。
日本とは虐待の意味もレベルも違いすぎる。
可哀想だとも思うし、日本人は恵まれているとも思います。
ただ、、、そんな単純な話ではないような気がした。
冒頭にあるとおり、
「育てられないなら産むな!」
と、親や大人を避難するのは簡単だけど、少しだけ大人の立場も理解出来てしまった。
どちらかと言うと、
それでも少年は前に向かって生きていく。
とう言う、絶望よりも勇気や強さのようなものを感じた。
この映画を日本では見ることが出来たことに感謝。
大人は判ってくれない
レバノンのスラムから家出した少年が不法移民のエチオピア人の幼児の面倒をみるという究極のサバイバル状況を描く。ドキュメンタリーのような撮影方法なので、その綱渡りの毎日が直截に迫ってくる。裁判の場面とラストの一気呵成の解決のあたりだけドラマ的な作劇が感じられたが。
ドゥニ・ヴィルヌーヴの「灼熱の魂」もレバノンが舞台だったのを思い出した。苛酷な国情は依然として続いているのだろうか。
冷房の効いた映画館の椅子に座って彼の国の映画を見ている我々の空々しさが何とも居心地悪く感じられた。
生きるということを訴える子供
主人公のゼインは12、3だが出生証明書がないので年齢がわからない。そんな彼が訴えるのは自分の親。なぜ産んだのか、と。
そもそも親が産まなければ生がないため、そんなことをする子は滅多にないのだけれども、ゼインが訴えているものが生きるということそのものであることが辛い。
これはすごい
日本で教育を受けさせてくれる親のもとに生まれたことは奇跡的な幸運と思ったほうがいいのかもというくらい壮絶な人生を子どもたちが送っている。世界中のすべての人に見てもらいたい。ヨナスの愛らしさが残酷な境遇をより鮮やかにしています。
レバノン映画すごい
「判決、二つの希望」に続いてレバノン映画すごい。映像で見てるけど、想像が及ばない世界。移民、民族?、宗教、経済の困難?からくるありとあらゆる問題が12歳のゼインの肩にかかってる。ゼインは家族を守りたいだけ。でも12歳だよ?
子供は親を選べない。理不尽で過酷な境遇の中、それでも戦い必死で愛す...
子供は親を選べない。理不尽で過酷な境遇の中、それでも戦い必死で愛する者を守り生きようとするゼインの姿が胸を打つ。最後のゼインの笑顔がとても美しく切なかった。
ゼインの瞳とヨナスの瞳と…
12歳にして呪われた世界に生まれて来たことを既に知ってしまったゼイン。まだ分かる筈もないヨナスのつぶらな瞳。赤ん坊が勝手に何処かへ行かないように犬のように繋がれている姿が時々出てくる。ゼインもバスを待つ間、ひとまずヨナスを綱で繋いでおくが、自由になろうともがくヨナスの姿を見て綱を解いてやる。まるで、この痛ましい世界に繋がれた自分の代わりにヨナスをこの世界から自由にしてやるように。ヨナスを再び胸に抱く事が出来たラヒル、身分証明書用の写真撮影に笑顔で応えるゼイン、ベタなラストかも知れないし、これでハッピーエンドとは言えないかも知れないが泣きました。
大切なことを描いた映画
身分証明書=出産証明書がない少年が、両親を訴える話。
この映画を観た人は、普段気づかない、身分証明書、日本では戸籍票の重要さに気づく。
暮らしの中で、ありがたいと思うことはないが、なかったらこんなに大変なのか、ということを実際に観せてくれる。
そしてレバノンという国の過酷さ。難民なら受け取れる奉仕の食事は、自国の貧民には与えられないという、現実的な矛盾。貧民街では、子供が生まれても出生届を出さないことが日常茶飯事ということ。少女は、初潮を迎えたら、口べらしなのか、すぐに誰かと結婚させられるということ。
毎日を暮らしている彼らにとっては当たり前のこういう事を、ひとつひとつ驚きをもって、みつめる我々。そして、ずっと観ていても救いが訪れない結末。
苛酷だからこそ、何が大切なことなのか、子供を育てる上で、絶対に怠ってはいけないことは何なのか、がクリアにあぶり出される。
みんな観るべき映画だよね、疲れるけれど。
書道
音楽が先行し、画面と役者が後に続く演出になっている。
ただ、映画的な遊びは無い。
余りにも境遇が掛け離れているので、きちんと溢さずに受け入れられるか不安だったが、失礼ながらエンタメとしてしっかりしている。
【ゼイン少年の気骨ある行動、言動に激しく心打たれた作品。】
ー 苛烈で哀切極まりない物語である。ー
・極限の貧困の中、両親を見限り、独りで生きる選択をするゼインの瞳は”悲しみ、怒り、困惑、絶望”を見事に表現している。
・家を飛び出し、荒れた都会の中で、彼に笑顔はなく、一日一日を必死に生き抜く。
そこで知り合ったシングルマザーの幼子の面倒も健気にみる。
愛する妹を想い、相手の男にきっちり復讐する。
ゼインは身体は小さいが、中身は立派な漢である。
その彼の最後に見せた表情が画面一杯に映し出された途端、涙が止まらなくなった。
<この作品は世に蔓延る様々な問題に正面から切り込み、観る側に深い余韻と重い問いかけをしてくる紛れもない傑作である。>
<2019年8月4日 劇場にて鑑賞>
当たり前ではない子どもの笑顔
主人公の男の子をはじめ、子どもたちも命を落とさず大人になれた人も凄まじい状況をサバイバルしている。そこまでしてやっと大人になっても絶望しかない生活が待ってる。
こんな酷い状況でもこの主人公は妹や世話をする赤ちゃんのことを一番に愛してることに涙が止まらないです。
粉ミルクとオムツ
「両親を訴えたい!僕を産んだ罪で」そんな冒頭でスタートする本編。絶望的な状況の中で必要以上に悲劇的に感じないのは、描かれているのが主人公の逞しさと優しさだからなのか。最後の訴えは胸をえぐられる…しかしラストシーンで救われた気をした。ちゃんと存在しているよ。
「存在」に圧倒される
シリア内戦がマスメディアでも盛んに報道されていた頃、私はUNHCRに少しばかりの寄付をしたことがある。
それによって、私は「何か」が為されるべきだと、確かに考えていたはずである。しかしその「何か」とは一体何を指し示していたのであろうかーーエンドロールを見ながらそう自問していた。
翻って、本作では、ゼインの弁護士役(監督)以外は、ほとんどのキャストが素人でかつ、役と類似した境遇を持つ人々であるという。
ゼイン(実際の名もゼインというらしい)も、シリアから家族と共にレバノンの難民キャンプに逃れてきていた所を、キャスティングディレクターにスカウトされたのだそうだ。
ゼインに限らず、彼ら/彼女らのその「存在」に圧倒されるのは、そのためだろう。演じるのではなく、ただ、スクリーンの中で自分自身を生きていたーーそれを私は目の当たりにして、言葉を失う。
ーーゼインは本作の出演を契機として、家族と共にノルウェーへの第三国定住を認められそうだ。
それを知ったとき、ゼインのあの、悲しみを湛えながらも未来への希望を宿しているかのような瞳と、その笑顔とに、私は救われたのだと思う。私の「行為」には意味がーーわずかなものでしかないかもしれないがーーあったのではないかと。
真実は映画の中に
素晴らしい。そして、恐ろしい。
主人公ゼインの素朴な瞳がだんだんうつむきがちに、虚ろになって行くのがとても切ない。子供が苦しむだけで反則なのに、これでもかというくらい厳しい事態が続く。
貧困や虐待というと「万引き家族」が思い出されるが、子供に手を差し伸べる"家族"がいたが、こちらは助けてくれる大人がいない。
親から逃げ、路頭に迷う12歳の少年ゼインに、唯一手を差し伸べたのは、不法就労のシングルマザー、ラヒル。家に招き、赤ん坊のヨナスをゼインに預けて働きに出る。しかし、やがてラヒルも窮地に立たされて、なんとかしようと奔走する。
ある日、ラヒルは家に帰らず、ゼインはヨナスを抱いてラヒルを探しに街に出る。赤ん坊のヨナスを抱えたゼインが、トボトボと道を歩く。このシーンだけでグッとくる。誰も助けの来ない中、幼い二人が街を彷徨う。ラヒルは見つからず、ゼインは自分でヨナスのためにミルクや食料を手に入れ、なんとか糊口をしのぐが、やがてそれも…。
暴力や絶望が前面に出ることはなく、ゼインの目線で淡々と日常が描かれる。ドキュメンタリーのようだが、きちんと整理された物語が展開され、映像も綺麗に切り取られて映画としての主張が、全編に溢れている。これが逆に、圧倒的なリアリティとして迫ってくる。ニュースやドキュメンタリー番組で、こうした実情を知るが、ドラマとして整理されることで、実態がストレートに伝わってくる。子供に労働させる親、子を売る親、非合法な商売を手伝わせる親。ゼインの目線は、ただただ冷静に真実を見つめる。
ただ、IDが無いだけで、親は仕事に就けず、貧困のしわ寄せが、子供達を直撃する。法律上はその親の子供も存在せず、こうした社会の仕組みが、貧困の連鎖に追い打ちをかける。そして、ゼインは素直に親の不実の罪を訴える。
伝わる真実は、映画の中にしか無いのかもしれない。
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