「3.4世話ができないなら産まないで」存在のない子供たち asa89さんの映画レビュー(感想・評価)
3.4世話ができないなら産まないで
世話ができないなら産まないで
それがとても印象に残る映画でした。
全体的に展開が暗く、ちょっとした希望もない
赤ん坊を置き去りにしようとするシーンはとても切なく映りました。
全てに絶望した旦那が神の名のもとに子どもを作り続けるが、育てることができないまま寝ているだけ。子どもたちに変わりに働いてもらう。その構図はさながら軍隊アリのような別次元の生命体のコロニーを見ているかのように映りました。
それが軽蔑に値する、憐憫に値するというわけではなく、経済的に豊かではない中での子供の増加は必然的にそうなるのであるということを表しているようにも思った。もちろん子だくさんでたとえ貧しくても幸せな家庭もあるとは思うが、目の前の生活のために物を盗む、ウルトラCの商品を密売するという誘惑をコントロールすることは難しいだろうなと思った。
昨今では日本の異次元の少子化対策を考えておりますが、こうしたものを見ると、ますますもう限界なのではと思います。それは人口の少なさを前提とした都市運営にしていかないと行けないのでは?ということです。それを既存を維持するために一時的にお金を配っても将来への不安、常識があればあるほど産もうと思わないし、移民を入れても分断問題でより既存維持どころか経済基盤の後退もありうるでしょう。
また一概に人口の増加は人口ボーナスを産まないんじゃないのかとも個人的には思っています。昨今は中国オワコン、時代はインドとアフリカ!!となっていますが、経済的な土壌、文化的な背景がビジネスにまだ適しているとはいえません。圧倒的なカースト、民族のルツボの対立、クオリティなどを考慮すると人口の多さ、個人の能力の高さだけでは国内全体を豊かにするのには十分ではないでしょう。個人的にはインドやアフリカの上位層だけが海外で転職しまくって豊かになるだけのような気もしています。
唯一合理的なのは職業の安定と、所得の将来的な安定性があればいいですが、昨今の業務はちょうどいい仕事がなくなっているようにも思います。単純労働か、業務の高度化であります。高度すぎるスキルが必要なものと、現実的な体力が必要な仕事。そうなると今の中間層がどちらかに流れ落ち、将来的に家計が厳しくなる可能性があり、一人ならぎり生きれるが、二人以上になるとどう考えてもジリ貧とわかりきっている脳みそがそれを押してまで結婚しない。
それを押してまで子どもを産むとしたら、映画本編のようになにか「合理的ではない理屈」(宗教や文化、家族観など)によるものなのだろうと思った。
映画本編は最後はいい感じで終わりましたが、その実は『神は僕たちにボロ雑巾であることを望んだ』という状況なのだろと思ってやり場のない虚無感を感じた。