「存在感のある子供たち」存在のない子供たち ミカエルさんの映画レビュー(感想・評価)
存在感のある子供たち
子供が少な過ぎて国の一大事になっている国があれば、子供が増えすぎて満足に育てられない国もある、世界とは実に歪な構造を成している。
世の中は不公平であるといっても埒が明かない。子供はどんな国で生まれ、どんな親に育てられるか選択ができない。劣悪な環境から抜け出そうと努力をしても、ほぼ絶望という状況だってある。
少女の強制結婚、子供の人身売買、不法移民など、この映画で扱われている社会問題は、日本には馴染みの薄いものだが、育児放棄や虐待のニュースが後を立たない日本の現実を考えると、決して他人事ではない。子供を労働力としかみなさず、愛も教育も与えない親がいる国で起きていることは、形を変えて、世界のすべての大人の責任を問いただしているように思われる。
不法移民であるシングルマザーの幼児の面倒をみることになった少年が、スケートボードに鍋を括り付け、さらに、その鍋の中にベビーカーのごとく幼児を座らせ、街を移動する姿は、壮絶である。少年も幼児も存在のない子供たちである。少年は両親が出生届を出さなかったため、幼児は母親が不法移民のためであるが、たとえ戸籍はなくても、映画の中での存在感は際立ち、並の人間を凌駕している。
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