「レバノンの哀しい現実」存在のない子供たち アンディぴっとさんの映画レビュー(感想・評価)
レバノンの哀しい現実
観るのがとても辛い映画だった。誕生日がはっきりしない12歳だろうゼインは学校にも行けず働いて、妹の初潮の面倒までみる。何故?母親に知られると嫁がされるから。まだ11歳なのに、、、反発したゼインは家を出るけれど、もっと過酷な状況になる。助けてくれた女性もエチオピアからの不法滞在で、赤ちゃんを抱えて必死で生きている。それでもゼインを助けるのだから、これまた辛い。彼女も赤ちゃんヨナスの世話をゼインに頼んで仕事に行けるからお互い助け合っているのだけれど。
ゼインとヨナスが2人だけで何日一緒にいたんだろう、、、どうしていいか分からず困っただろうに。ゼインの置かれた状況を思うと心が張り裂けそうになる。
ヨナスの足を縛ったり、クスリを砕いて水に混ぜて売ったりと、両親と同じ事をしてなんとか生き延びる。あんなに憎んでいる親と結局同じ事をするしかない状況が観ていてとても辛い。
出生届を取りに戻ったゼインは(そんなものはないのだけれど)妹が死んだ事を知って、結婚した男を刺して逮捕されるのだけど、刑務所の中の方がまともな暮らしが出来ていることが悲しい。きちんと食事はできるし、寝る場所もある。刑務所の中のほうがマシって、なんなんだ!あまりにも悲しすぎる。
いちばんつらいのはラジオへの生電話。両親を訴えた裁判でも言った言葉、子供を産まないで!育てられないなら産まないで!子供がわかる事を何故この両親はわからないんだろう。苦しい生活の中で11歳の娘を売るように結婚させ、死なせているのにその状況の中で妊娠するって、、、理解し難い。でも子供を産むように言われて育ったと両親が裁判の中でいっていた。これは宗教的な事もあるんだろうか。
負の連鎖、貧しい中で親も身分証がなくまともに働けない。子供も当然身分がない。ずっとずっとどん底のまま。そんな人たちが大勢いる中東の現実。あまりにも辛い辛すぎる。
最後の身分証の写真を撮るためのゼインの一瞬の笑顔だけがせめてもの救い。とても、とても辛い映画だけど、小学生には無理だろうが中学生以上には観て欲しい映画。