「世話できないなら産むな」存在のない子供たち shimoさんの映画レビュー(感想・評価)
世話できないなら産むな
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映画「存在のない子供たち」(ナディーン・ラバキー監督)から。
貧しい両親が出生届を提出していないため、IDを持っていない。
「IDがないってこと=この世に存在していないこと」
言い換えれば、何をやろうとしても、人間として認められない、
そんな意味にもとれる。
それは、主人公ゼインだけでなく、中東の貧民窟には、
多くの「存在のない子供たち」がいる実態を浮き彫りにした。
作品というよりも、ドキュメンタリーに近い気さえする。
特に主人公が育てる赤ん坊は、ミルクを飲ませてもらい、
つかまり立ちをし、立ち上がり歩き始めるまでのシーンは、
これってまさか演技じゃないよな・・と思わせる。
冒頭の裁判シーン。「なぜ法廷に?」「両親を訴えたい」
「何の罪で?」「僕を産んだ罪」は、まだ理解できなかったが、
ラストの裁判シーン。(冒頭のシーンへ戻ったのだが)
「大人たちに聞いてほしい。世話できないなら産むな。
僕は地獄で生きてる」と訴え続ける。
「両親への要望は?」という裁判官の問いに、
「子供を作るな」と言葉を投げ捨てるが、
さらに「大きな声で・・」と裁判官に促され
「子供を作らないで」と懇願する台詞に変わった。
こんな辛い思いは僕だけでいい、お願いだから・・
そう言われたようで、胸が締め付けられる思いだった。
この国では「新型コロナウィルス対策」どころではないな。
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