劇場公開日 2019年7月20日

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「何を奪われようとも「心」だけは。」存在のない子供たち ちゃーはんさんの映画レビュー(感想・評価)

5.0何を奪われようとも「心」だけは。

2019年8月23日
iPhoneアプリから投稿

評価なんておこがましい。感想を書くことすら躊躇する。「とにかく見たほうがいい」と思わせてくれる映画に出逢えることは、数少ない。

この物語は、物語ではあるけど、異世界の話でも、遠く離れた銀河の話でも、どこかの誰かが考えた話でもない。現実だ。今、ぼくたちが生きている世界のどこかで起きている現実だ。

「登場人物がみんな誰かのためにがんばっている」とかそんな甘いものではない。現実は、無慈悲。誰が救われた?登場人物の中の誰が救われただろうか。誰も救われてはいない。物語が終わった後のことを想像してみる。つらい現実が待ち続けていることは容易に想像できる。しかも、それがつらいことだと自覚することもできない。だって、日本でのうのうと暮らすぼくのような生活すら知らないのだから。

大人は子どもをどう思っているのだろう。少なくともこの物語の大人たちは、自分のことしか考えていない。他人を思いやるなんて隙間すらない生活を送っている。でも、子どもは違ったと信じたい。ゼインは違ったと信じたい。ゼインも自分のためだけに生きていたかもしれない。大人になくて、ゼインにあったもの。それは「心」

人の心さえ蝕む人種の壁、戦争、宗教問題、貧困。いわゆる、幸せな国に、幸せな時代に、幸せな環境に生まれたぼくは、一体何を思っていいのだろうか。

ちゃーはん