「子供を悲しまる親なんて糞食らえだ!」存在のない子供たち ガーコさんの映画レビュー(感想・評価)
子供を悲しまる親なんて糞食らえだ!
こんなにも食い入るように映画を観ることになるとは…。
本当にあっという間の125分でした。
カンヌ映画祭で、『万引き家族』と一緒に話題になった作品だからこそ、すごく興味深い作品の一つでした。
家族の問題を取り上げていて、同じようなテーマだと思っていましたが、こちらの方がいろんな意味で深くて重い…。
貧困問題だけでなく、宗教問題、男女差別、環境汚染など、少年を取り巻く生活は、過酷すぎて言葉にならない…。
朝起きてまず思うとこは、今日生きるための食事を確保しなくてはと考えること。
生きる=食べる、という悲惨な現実に打ちのめされました。
学校に行くこともままならず、親は仕事をすることを強制的に進めてくる…。
例え、行かせてくれたとしても、学校で物をもらえるかもしれないという、希望的観測の進めだけ。
子供達の将来のことなど考えもせず、親は次々に子供を産み、ますます生活が苦しくなっていくのです。
親としての責任や、将来の幸せなど全く考えもせず、今ある現実から逃げようとするだけの親たち。
さらに愛する11歳の妹を、ロリコン男の嫁にやろうとする両親。
いくら金がないといえど、やっていい事と悪いことの分別を間違えてはいけない…!
両親のあまりの非情な行為に、12歳のゼインは怒りを爆発させ、立ち向かいますが、全く歯が立たず…。
あまりの悲しみと怒りに、親に愛想をつかしたゼインは、12歳にして家を飛び出す決心をします。
行く当てなんてないと分かっているのに、それでも家族から逃げることを選んだ少年。
その強い決断力が、観る者を圧倒させます。
ゼインの悲しく遠い目から感じる寂しさと、絶望、怒り…。
12歳にして、ここまでドン底の世界を知ってしまったら、私だったら立ち直れる気がしない…。
それくらい彼のとった行動は大人。
こうして、全てを悟った彼は、12歳にして立派な大人へと変貌していました。
優しい言葉なんてかけてもらったこともなく、いつも暴力や罵倒ばかりの生活。
痩せ細り、まるで小学校低学年くらいのガリガリの少年と成り果ててしまった彼が、何故ここまで必死に両親を訴えるのか?
裁判から見えてくる真実に、悲しみの涙をこらえることに必死でした。
特に、少年の悲しそうな表情がずっと脳に焼き付いていて離れません…。
『誰も知らない』という映画の柳楽優弥くんを観ているかのよう…。
あの虚ろで空っぽの目は、親を信用、信頼しなくなった証のように感じました。
あの目は、映画を観終わってもしばらく忘れることができそうにありません。
子供が大人を見限った時、あんな表情になるんだなと感じました。
今年観た洋画の中でも、一番印象に残るであろう作品。
今日試写会で出会えたことに感謝です。
ありがとうございました(^^)