誰もがそれを知っているのレビュー・感想・評価
全12件を表示
ちょっと登場人物が多すぎるところがネック
アスガー・ファルハディ監督の作品は何となく面白そうで何作か観てしまっている。実際、そんなに好きなわけではないと思うけれど不思議だ。
ファルハディ監督の脚本は、特定の人が抱える後ろめたさを絶妙に切り取ったものが特長かと思う。本作もそのカテゴリといえるだろう。
邦題は「誰もがそれを知っている」だ。とてもストレートで、その意味するところなどという説明もいらない。
しかし、本作が面白いのは、実際は誰もが知っているわけではないところだ。
誘拐される娘についての秘密は村の噂話でしかない。噂話が仮に事実だとしても(事実なんだけども)それを「知っている」とは言わない。
「知っている」わけではないが、ほとんど「知っている」と同義であり、よほど親しい間でもないかぎり当人たちに確認出来ない微妙さが面白いといえる。
そんなに大きくない村で噂が広まりやすいところが問題をややこしくする。
多くの人が問う「どうしてパコが金を出すのか」と。聞かれた相手は分からないとしか言えない。
そこで、一番最初のパコとイレーナが似ているという噂話からピンとくるわけだ。ああそういうことかと。
こうして「知っている」わけではないのに「知っている」状態が出来上がる。
単なる噂話の範囲を出ていないとしても、状況が確信に変える。
ファルハデイ監督らしい内容で、犯人探しというミステリーがある分、娯楽性が高かった気もするけれど、過去作に比べてそんなに面白くはなかった。
登場人物が多く、それぞれの立場と関係性の把握に手間取り物語に没入できなかったのが理由かなと思う。
観終われば重要な人物は数人だったと分かるけれど、観ている最中は誰を覚えていないといけないか分からないからね。主要人物と非主要人物の描きわけに失敗してしまったように思える。
最後がひどい
誘拐された娘の母親がとても性悪に見えた。義父も実の父親頼みで情けない。とにかく実の父親が気の毒に見えた。プロだろうが、素人だろうか悪党に身代金が渡る事は断じてあってはならないと思う。そう言う意味で金が相手に渡ってガッカリした。あり得ない点も多々あって、娘が帰ってきた後だろうと警察に通報しない、見つかった時も救急車すら呼ばない。普通に自分達の地元に帰って行き街を離れる。叔母さんが家族内の若い女が関係してると気付いた点まだいいけど、それすらなければもう救われない。だけど犯人が捕まるシーンはなく終わるし、叔母さんが家族に話す伏線で終わり。ラストが今まで見た時間返して感が酷い。犯人には制裁を下すべきだし、それは家族内の若い女も例外ではない。とにかく実の父親には金を返してあげて欲しい。でないと誘拐が増えても困る。悪い事は制裁が下るとこまで描いて欲しかった。
神様では‥
救えない。娘の誘拐事件を契機に、大家族、その周囲の人の昔からの思いが複雑に入り乱れ、人々の本性が見えてくる。タイトルの何を知っているのかは、ペネロペとハビエルが昔恋人同士であったこと。誘拐された娘が実は二人の子供だったことまでは、似ているから噂になったとは言え、誰もが知ってるとは思えない。姪夫婦が企てたのはわからなかったが、どこまで計画的だったのだろうか。ペネロペ夫妻が金持ちだから、狙ったのだろうが、ハビエルが農園まで手放すとまでは思わなかったのではないか。今更ハビエルに実の娘だから、金を出して助けてというペネロペは非常に身勝手だと思うし、娘助けたい一心でなりふり構わずもわかる。愛していた恋人に急に去られた過去があり、今さら実の子と真実を打ち明けられ、7年掛けて耕した農園を手放すに至ったハビエルの気持ちは痛たまれない。助けに行ったのは自分だけど、実の父親であることは告げられず、親元へ返す。。家に帰ると妻にも出ていかれている。不憫すぎるが、安堵からか、微笑む姿が、人間デカすぎる!それに引き換え、ペネロペ夫は無力過ぎる。神頼みでは結局何も救えない。
パコ、甘えてばかりでごめんね
アスガー・ファルハディ監督の新作という知識だけで見に行ったので、あまりプロットを把握しておらず、最初結婚式やらの牧歌的な場面が延々と続くのでどうなることかと思っていたら、誘拐事件の発生で俄然不穏な空気になってきた。
ミステリー常習者の私としては、自作自演含めあらゆる犯人の可能性を検討しながら鑑賞していたのだが、結果的には想定外だった。だけどそこには「やられた!」という爽快感はなく、ただ肩透かし感だけが…(だってそもそも誰?という)。
濃密な人間関係の錯綜した描写は相変わらず堪能できた。“誰もが〜”には当人は入っていないんですね。
さすが、イヤミスの帝王ファルハディ監督
アルゼンチン在住のラウラ(ペネロペ・クルス)。
妹の再婚結婚式に出席するため、ティーンエイジャーの娘イレーネ(カルラ・カンプラ)と幼い息子を連れて故郷のスペインに帰省した。
そこでは、元大地主の父親をはじめ、実家で暮らす姉夫婦、今回結婚する妹に加え、元の雇人の息子で幼なじみのパコ(ハビエル・バルデム)と久々に再会する。
パコは、かつてのラウラの恋人で、彼女が金銭面で苦慮した際に、彼女の持ち分の土地を買い、その後、葡萄畑として再生して、いまは村での羽振りもいい。
そして、妹の結婚式当日。
家での披露パーティの夜、先に部屋へ戻ったイレーネの姿が見えなくなってしまう・・・
といったところから始まる物語で、主要な人物の姿が見えなくなってしまうのは出世作『彼女が消えた浜辺』と同じ趣向。
当初、自らの意志で行方をくらましたのではないかとも思えたが、ほどなくして脅迫メールが届いたことで、誘拐事件だと確信する・・・
ということで、この事件の中で、謳い文句にあるとおりの「隠していたはずの秘密と家族の嘘がほころび始める」ので、これまでの作風とそう変わらない。
これまでのファルハディ監督作品では、緻密とも言われる、事件が事件を呼び、当事者たちの闇があぶり出されるわけだが、どうも心の闇をあぶり出さんがための展開が鼻に付き、途中で鑑賞するのを投げ出してしまいたくなったのだけれど、今回は事件が起きるのも遅く、その後の展開も急がない。
その分、ラウラの気持ちをスター女優ペネロペ・クルスが「これでもか」的演技でみせ、さらに、スター男優ハビエル・バルデムが「これでもだぁ」的演技でみせるので、ぐいぐい惹き込まれていきます。
でも・・・
観終わって数日経つと、やっぱりファルハディ監督の嫌な嫌いな面が思い出されて、どうにも居心地が悪い。
それは、
誘拐されてから、日が経ちすぎ。
もう、娘の命が危険ではないかと思われる時点になっても警察には通報しない。
それほど、警察不信なのか?
にもかかわらず、義兄が紹介する元警官には相談し、単に、家族間の不信の募らせるだけ。
老齢の父親をはじめ、長姉夫婦も含めて、自分たちのせいで没落したにもかかわらず、自意識だけが過剰。
パコが事件当初から積極的にかかわる理由がわからない。
重要事項は映画後半で明らかにされ、それは彼も初めて知る。
そして、成功している葡萄農園の経営者であるにもかかわらず、雇人たちのことを気にせず、畑を手放すのは、やはり無責任。
パコの妻の言い分のほうが理がある・・・
と、理詰めのようにみえて、登場人物の心の奥底を表すための作り手の都合のいい展開になっているのは、過去作品と同様ではないかしらん・・・と思い始め、どうも、やっぱりファルハディ監督とは相性が悪い。
いや、もう、ぶっちゃけてしまうが、「狂言誘拐」ぐらいのユルイ話のほうが、どうも個人的には好みだったような。
ま、そうなると、ファルハディ監督の持ち味がなくなっちゃうのだろうけど。
さすが、イヤミスの帝王ファルハディ監督、と改めて思った次第。
2019年ベストムービー!
見応えのある人間劇でした。
サスペンス映画なんですが、主演3人を含め皆んな良い演技をしており、2時間以上をすっかり引き込まれてしまいました。
観ている側も、色んな心の疑念が湧いてくるような臨場感のある作品でした。
今年最も必見な一本でしょうね。
*ラスト、ハビエル・バルデムがベッドで浮かべる微笑がしびれます…(笑)
*エンド・クレジットで流れる歌が素敵です。
日本映画でも描ける、村社会の悪しき因習
ペネロペとハビエル・バルデムの夫婦共演ということで観ました。ストーリーは単なる少女誘拐の映画です。
観終わった後に、隣の席のご夫婦が「理解し辛い映画だね。」と話していましたが、それは違うだろうと思いました。「誰もがそれを知ってる」というタイトルを考えれば、誰が、何のために誘拐をしたのか、誰が得をして、誰が損をしたのか、これを考えればこの映画は超一級のサスペンス映画です。誰もが何を知っていたのか、私の書いたタイトルが少しネタバレになっています。
火サス 名探偵少なめ スペイン
予備知識なく ペネロペクルスで観ました
年をとって いい年増になった 昼メロ路線かなと思いきや 火サスでした。
親戚や地元が集まる田舎の結婚式 皆楽しそうにしてるけど…でも 長い歴史 実は色々ありますよね。それが原因で起こる…
目のつけどころは面白いのだが…
なんかすごく不完全燃焼 火サスなら 船越英一郎辺りが解き明かすところですがそれがメインでもない。 犯人に結末があるでもない。その映画のテーマはない のは分かるけど 元恋人と旦那のところは少しぐっとくる。となると、やはりペネロペの魅力?の映画か 違うよね だとしたら もっとペネロペを魅力的に撮らないと… やはり 犯人の動機が背景は分かるけど… 絵描きかたが弱かったのでは 動機は家族全員 または地元の人全員にあるけど この犯人でなければならなかったところは描けていない それともスペインでは誘拐はそれだけ日常な事なのか
違うよな 結構 決断のいる犯罪だと思うが… なんか薄いよな スペインとペネロペが好きな外国人がスペインで撮りたかった感がでてしまっている。それは悪くないけど、扱うにはテーマがちょっとシリアスなのではないか?
ただ、仕事の農園も妻も無くしてしまった男が全てを無くしながらの男の顔はよかった。
あぁどうにもできない…/ポルファボール連発
ファルハディ監督ですから、スッキリする話は書きません。
善悪の判断が簡単な話も書きません。はじめの問題が解決しないまま、各人が混乱して勝手な事をし始め、事はだんだん別の問題を浮かび上がらせるでしょう。
別離、セールスマンと見ましたが、そういう作風です。
その作家性が大物役者夫婦を主演に迎えたことで、若干マイルドに見やすくなりました。その事をどう評価するかで、立ち位置は変わるでしょう。わたしは見やすくなっててありがたかった派です。
舞台になった国の世相風刺も割と効いてます。
この映画で言えば、ラウラの姉の夫フェルナンドの出稼ぎ労働者(大体が外国人?)への差別心、ラウラの結婚する妹の夫がカタルーニャ人で、スペイン人からのカタルーニャ人への差別とその逆(妹の夫の家族は結婚式に乗り気でなさそうだった)、あたりがそれかと。さらっとちらっと何度も出てくるので、あぁ勉強になりますって思いました。
ラウラの夫役の人は、どっかで見た渋いイケボイスおじ様やなーとおもってたら、人生スイッチに出てた人らしいです。どの話の人か忘れましたが。
ラウラのムスメの父親が実はパコってゆうオチは何となくわかりました。つか、わかりやすくするための夫婦起用ですよね。たぶん。
誘拐犯が誰かについては、全然予想できませんでした。
一応無粋にネタバレしておくと、ラウラの姉の娘(ラウラの姪)の夫(あるいは夫予定の彼氏)でした。ラウラの姪も共犯者といってよいでしょう。姪の夫もどきの相棒?は、どっかに出てました?パコの妻の働く更生施設の子?わかりませんでした。
パコは哀れですよ。ラウラの家の家族には使用人の息子がうちの土地を二束三文で買ってえらそうに!みたいな目で見られ、知らんかったのに娘がいた事を聞かされて、葡萄畑裏されて、金取られて(30万€でしたっけ?3600万とか、4000万くらい?)、妻にも捨てられ(多分)。
面白かったっちゃー面白かったです。
セリフ、ポルファボールに頼りすぎですね。
あ、結婚式の歌、あの日にかえりたい系の未練ソングと違いました?あれでよかったんかな、新郎新婦は。それとも映画のオチへのフリであの歌詞だったんでしょうかね。
誰もがそうだと思ってた
妹の結婚式のパーティーの最中に娘を誘拐され、母親と家族や友人達が奔走する話。
誘拐事件を扱ってはいるけれど、拐われた娘がどうとか犯人がどうとかよりも、脅迫される親達メインという少し変わった作風。
タイトルと序盤の人物紹介や会話等で「それ」はみている側にも判る訳で、その上でどう行動するのかをみていく流れ…何だけど、特に迷いも葛藤も意外性もなく進んでいくのみで面白味に欠ける。
強いていうなら犯人についてこれから「誰もがそれを知っている」になるのかなとか考えてみたり…。
知らせたくない事実ほど
アスガー・ファルハディ今作の舞台はスペイン!ということで華やかな始まりから突然の不幸がやってくるところで話が急展開します。とはいえ、なんでも解決できるスーパーマンがいるわけでもなく淡々と時間だけが過ぎていく中で家族の中に不満や疑心暗鬼だけが広がっていく、その中で人間はどう行動するのか?という本質をじわじわとあぶり出していくような作品です。前監督作を観ていればわかるのですが、スカッとして終了というタイプの作品ではないのでそういった結末を求める観客からは評価されない作品でしょう。でも想像していた結末とは違って驚きました。作品としては幕を下ろしますが、観客の中にモヤっと残っていく独特の作風です。
とてもよかった
イラストを描くようにサンプルDVDで見た。女性がいちいちみんなきれいで色気がすごいのだけど、おじさん連中も色気たっぷりでそりゃあ間違いも起こるだろうという気分になる。結婚式の場面が長々と続いてそういう種類の映画なのかと不安になったのだが、事件が起こってからはぐいぐいと引き込まれた。
全12件を表示