凱里ブルースのレビュー・感想・評価
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【淡々としつつも、いつの間にやら引き込まれる幻想的でアーティスティックなロードムービー。】
■中国・貴州省の霧と湿気に包まれた凱里市の小さな診療所に身を置き、老齢の女医と暮らすチェン。
彼が刑期を終えてこの地に帰還した時には、彼の帰りを待っていた妻はこの世になく、甥のウェイウェイも弟の策略でどこかへ連れ去られてしまう。
◆感想
・ビー・ガン監督作品は、鮮やかな色彩と不可思議な世界観に魅了された「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」を見て以来である。そして、今作は上記作品と連動性があると聞き、観たかった作品である。
・どこまでが、この世のロードムービーなのか、どこからか不可思議なロードムービーなのか、観る側にその選択を任せている作品である。
<今作は、特に大きな出来事が起こる訳ではないのに、何故に面白く見えるのだろうか。
そもそも、ロードムービーとはそういう類のジャンルであったな、と思った作品である。>
けっこうよかった
絵作りが凝っていて魅せられる。大して面白いお話ではないのに、絵がすごいから見入ってしまう。長すぎる長回しも意味があるのか分からない。女の子が舟に乗って川を渡ったと思ったら橋で戻る。主人公が上着を着るときに胸のマイクが見える。電車や時間がテーマみたいだ。主人公がヤクザだった時の兄貴と、異母兄弟の兄がごちゃつく。こうして気になる点は多々あるけど、もう一回見て、この映像世界に浸かりたい気持ちがある。もしかしたら話も面白いのかもしれない。
時間は行きつ戻りつその人だけの時間になるということか
凱里ブルースというタイトルがよい。
冒頭、特徴ない顔の人たちが特徴なく薄暗い中出てくるし人間関係もよくわからないが、ストーリー追う映画ではないかと思い、それでも目を凝らしてみる、
薄暗いあまり衛生的でなさそうな住居。
病院には年老いた女性医師がいて気丈に地域医療をみている。体調イマイチな男の医師が主人公で彼の周りにいたり現れる人たちが少しずつ繋がっていく。
列車の通る線路脇の家とはいえないような住まい
外から鍵をかけて閉じ込められているがまあまあしあわせそな子ども
医師なのに泥棒のように鍵をいとも簡単に開けてしまう子どものオジ、、
そこからもう一つの街への旅、
深い緑が美しく、みずみずしく、
店や住まいは老女医のところ以外あまりよろしくない環境で、広い中国大都市ではない街や村の荒廃ぶりは映画を見るたびに今もこうなのかなんでなのか、と思うが、先祖や死者を弔うのに爆竹も紙銭も禁止、古い家屋は取り壊し再開発という話で今の話とわかる。
小さな街、家と家と間の狭い路地を歩けばまっすぐだが、ポンコツバイクでぐるりと迂回していくその様子が長回しで撮られており新鮮だし、小さな街小さな世界小さな宇宙をぐるぐると回っているだけ、ということにも感じられる。
ポンコツバイクタクシーの若い男子が、時計屋に売られた甥っ子と同じ名前で、おそらく服役中に死んだ妻に似ている理髪店の女の子、、風車、時計、様々な水面、、
過去も今も未来も不安定でその時だけの時間なのだと思う。
話題の作品だったので構えて見そうになったが、詩と音楽、時と、光、あとは人と人の出会い、他人としてすれ違うひとと、まれに微熱のような心が繋がる瞬間を感じる。列車や川渡しや古い変わらぬ暮らしぶりに、止まってては行けないはずの時の停止(失政)も感じるしこのまま止まってほしい郷愁も感じるし、静かならあいちやくとやるせない自棄の合判知る気持ちも受け取る
音楽や背後に聞こえる音が心地よく、とにかく風景が美しい。
映像表現の革命
繊細な映像表現と詩の世界から生じる没入感は、映画を観てきて初めて得られた体験。
特徴的な長回しに得られる視覚効果は過去の作品に例を見ない表現力を持つ。
後にイギリス・アメリカで共同製作された「1917」など少なからず影響を与えているはずで、
ビー・ガン自身が”中国映画第8世代”として名乗りを挙げたと同時に、世界の映画界の新たな潮流を予感させる作品となった。
心 不 可 得 不思議。広がる自然大地の中、綴られる詩的な空気感は...
心
不
可
得
不思議。広がる自然大地の中、綴られる詩的な空気感は一見静かにシンプルながら深淵に難解で、ふとしたときに眠ってしまいそうにもなる。大胆に移動する手持ち撮影な長回しには時に酔いそうにもなるけど、そうした特徴が本作の、また恐らくは彼独自の波長・雰囲気を編み上げていくのに一役買っているのは間違いなくて、だから自分はきっとまだまだだなって思った。よく分からないけど魅惑的であることは確かで、またいずれ気が向けば(?)腰を据えて挑戦したいとも思う。どこか浮世離れしたように夢見心地で、現実と想像の区別がつかなくなっていくよう。流れるように様々なキャラクターにカメラが向けられていく。そしてあらゆる狭間はとけていく。君の名は?ウェイウェイさ。これは夢か?
時を戻せば凱里に戻ってくる --- 初めてのビー・ガン作品。その土地に根ざしている、時に(見たことないけど勝手なイメージで)NHK-BSかその辺でやっていそうなドキュメンタリーか旅番組みたいな時間がただ流れることもしばしば。ハンディ手持ち感全開だから手ブレはあるのだけど淀みはない。理解しきれぬも観客が味わい咀嚼すべき賢さ駄々漏れ。本作のことも映画館で見ようと思っていたけど、結局見に行かなかったので、もうストリーミングサービスに追加され見られるのは好印象。かつ、けどやはり暗く大きなあの映画館という環境で見られるべきとも感じた。間違いなく眠ってしまう自信あるが
長尺と風と匂い
何を見せたいのか、何を見せられているのか、はっきり言ってよく分からない。ある人に渡してと老女医に託されたシャツとテープ。シャツは自分で着ちゃうし、テープは人にあげちゃう。飛び入りした歌も上手くないし、バイクタクシーの青年は探しに来た甥と同名。
これは、長い長い夢なのか?
チェンの辿ってきた旅路は、夢と現の間を行き来するものなのか?
スクリーンを通して熱帯地方の湿り気と、濃い緑の匂いを感じる。田舎にしては綺麗に舗装されたアスファルトの霧の道を、ふわふわと走るシーンが好き。
バイクタクシーに乗ってスルスルと登る山道も好き。よく分からない、でも、ひたすら心地いい。鏡を通しての長回しも、オシャレだと思った。複数回あったので、監督は多分好きなんだろうな、この撮り方。もしくは長尺のテクニック?
汽車に描かれた時計によって、時が巻き戻ったのだろうか。過去も現在も未来も、実は曖昧なものなのかもしれない。
過去にも、未来にも、現在にも、心は存在しない。
結局、なんだったのか。
キャストに特に魅力もなく、風景は中国のど田舎で、物語の展開もダラダラしてて、長回しだって意味を感じない。なんだろ、これ。それが正直な感想だった。
ただ、美しかった。
金剛般若経の言葉を引き合いに出しながら、心の流れを問いかけてくる語りには、意味不明の禅問答を吹っ掛けられているような霧中遊泳感を感じながらも、その心地よさに酔いしれる気分になる。そのせいか、現代中国の地方都市の混迷するジメジメっとしたスクリーンからは、不愉快の感情よりも望郷の寂寥感を覚えるのだ。
その気分を増幅させるのは、40分もあったという長回しシーンのせいだろう。あれは、主人公の夢の中なのじゃないのか、と思う。その夢の中では普通に時間が流れて行っているようで、いくつかの時間軸が混在しているように感じた。探している甥は、不遇であった過去の自分。探している老女医の元恋人は、いつか死期の迫った時の未来の自分。だから、過去も未来も現在も、現実でありながら現実味はなく、まるで夢の中。肉体も存在しないし、ましてや心も存在しない。禅でいう空の世界。
たぶんこの映画、観るたびに感じることは違ってきて、彩りは増していくであろう。
6月第2週の土曜日に鑑賞 今年公開された「ロングデイズ・ジャ...
6月第2週の土曜日に鑑賞
今年公開された「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」のビー・ガン監督が2015年に撮った初長編監督作品。
(ロングデイズ・ジャーニーは2018年作品)
「ロングデイズ・ジャーニー」が自分の好きなタイプの世界観だったのでどんな作品なのかとても楽しみでした。
白と灰色が基調となる室内から、カットを挟まず室外を写しだしてゆくショット。
そこには床に反射し半円を描くように広がる橙色の炎と夜空
この人の感性が好きだなと感じた冒頭。
割りと変化の薄い展開と町並みの灰色の世界に少し落ちかけた。いや、多分、落ちた。話しの展開自体が夢と過去と今を写し出している不思議な感覚もあったので、もしかすると落ちたのも夢だったのかもしれない。
(と、自分を正当化してみる)
冒頭のシーンも好きだったけど、他にも好きなシーンがいくつかあって、鏡に人物を写すところであったり、部屋の壁にある物が写し出されてゆくところであったり、列車の中に佇む主人公の写しかたであったりと、この監督の映像の写しかたに対する感覚の素晴らしさを感じました。
そして「ロングデイズ・ジャーニー」でもみせた長回しのワンカットシーン
(ロング・・でのワンカットシーンは3D映像)
「ロング・・」で見せたようなワンカットシーンへの入り口を示すショットは無かったけれど、この距離感を長回しで見せてくれるとは思いもしなかった。
「ロング・・」に比べると、ワンカットの映し方は荒削りな部分もあったけど、逆にそこが、あぁ、ここはこうやって撮ったんだろうなと想像することが出来て、映画を観る楽しさと、疑似撮影体験みたいな楽しさをも味わえました。
32歳のビー・ガン監督
次回作品も楽しみです今年公開された「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」のビー・ガン監督が2015年に撮った初長編監督作品。
(ロングデイズ・ジャーニーは2018年作品)
「ロングデイズ・ジャーニー」が自分の好きなタイプの世界観だったのでどんな作品なのかとても楽しみでした。
白と灰色が基調となる室内から、カットを挟まず室外を写しだしてゆくショット。
そこには床に反射し半円を描くように広がる橙色の炎と夜空
この人の感性が好きだなと感じた冒頭。
割りと変化の薄い展開と町並みの灰色の世界に少し落ちかけた。いや、多分、落ちた。話しの展開自体が夢と過去と今を写し出している不思議な感覚もあったので、もしかすると落ちたのも夢だったのかもしれない。
(と、自分を正当化してみる)
冒頭のシーンも好きだったけど、他にも好きなシーンがいくつかあって、鏡に人物を写すところであったり、部屋の壁にある物が写し出されてゆくところであったり、列車の中に佇む主人公の写しかたであったりと、この監督の映像の写しかたに対する感覚の素晴らしさを感じました。
そして「ロングデイズ・ジャーニー」でもみせた長回しのワンカットシーン
(ロング・・でのワンカットシーンは3D映像)
「ロング・・」で見せたようなワンカットシーンへの入り口を示すショットは無かったけれど、この距離感を長回しで見せてくれるとは思いもしなかった。
「ロング・・」に比べると、ワンカットの映し方は荒削りな部分もあったけど、逆にそこが、あぁ、ここはこうやって撮ったんだろうなと想像することが出来て、映画を観る楽しさと、疑似撮影体験みたいな楽しさをも味わえました。
32歳のビー・ガン監督
次回作品も楽しみです
レーゾン・デートルを求めて旅をする
長いワンシーンがつながれたロードムービーである。日本で言えば「仁義なき戦い」の頃だろうか。土間に物を置く習慣が残っていたり、外から戻っても手を洗わなかったりするから、衛生観念が社会に行き渡る前の話だろう。映像は暗くてわかりづらく、お世辞にも洗練された作品とは言い難い。
ヤクザが詩人になってもおかしくはない。世の価値観は常に揺らいでいて、人は風にそよぐ葦のように翻弄され続けている。封建主義のパラダイムが支配的であればそういう考え方になるし、大義名分にもなって他人を非難する根拠となる。拝金主義のパラダイムが支配的であれば金儲けをした人間が偉い人間なのだ。
誰のために何をするのか。自分は誰に必要とされているのか。自身のレーゾン・デートルを求めて旅をするシェンは、故郷に時の移ろいを見る。残ったのは人の優しさだけなのかもしれない。身の上話を聞いてくれた床屋に大切なものを渡してしまう。それがシェンの優しさなのだ。ヤクザから足を洗い久しぶりに訪れた故郷は、必ずしもシェンを歓迎してくれる訳ではないが、邪慳にもしない。うねうねとあぜ道が通る田んぼに風が吹いている。
欧州・北米では大うけ!
映画における ”Take” : A take is a single continuous
recorded performance.
" ブラブラしたふらふらとした41分間のテイク " とコメントを読んで興味を惹かれ...
It is impossible to retain a past thought, to seize a future thought,
and even to hold onto a present thought.
冒頭に流れるテロップ...”金剛経” に興味のある監督のメッセージだとすぐに分かるが...映画自体に会話らしい会話があるけれども、しかし.....
内容とシナリオがはっきりとする会話がなく、その代わりに物語を埋めるように詩の朗読のような台詞も多く、それとは別に会話の代わりとしてのサウンド・スケープも映画の静かなものに邪魔をしないように耳障りが非常にいいが....
この映画の特徴として、”長回し” いわゆるワンカット撮影されている41分間があり、ダイマイという架空の村を主人公のシェンがバイクの後ろにまたがり村中を巡るシーンは、シェンという被写体を撮るために若い長身のカメラマンが被写体を追いかけるための移動手段として彼自身もバイクに乗り、追い続けた努力のたまものと聞く...しかしながら、いくらリハーサルを入念にしたからといって全ての場面でタイミングが合うかというとそうでもない場面も散見している...カメラが勢いが余って先行して後戻りするシーンや主人公の乗っていたバイクがいざ発進する時に必ずと言っていいほどエンストを繰り返していたのは、カメラマンがバイクに乗るための、またはカメラ自体をバイクに乗っているカメラマンに手渡すための時間稼ぎとしか映っていない...稚拙を通り越してわずかながら悪意にも感じられる。役者も同じことが言えて、台詞を言うつもりで身を前にのり出しているにもかかわらず、タイミングが合わずにまた後ろにと....? リハだけで90日間ッて?
時間が交差をする空間...このモキュメンタリー風映画のシナリオでは個人的にどの部分を指して言われているのか、はっきりと見えてはこない。出版物に対するレビューを数多く載せている情報サイトNYR Dailyにもこんな記事が、「タイムトラベルを前提としているけれども、サイエンスフィクションはほとんどありません。」...と
景色は確かに目を見張るほど緑や自然が美しい。...それとは真逆に中国の地方都市の不潔ぶりが目について到底、美しい映像ばかりとは言えない...そんな代物
家族・親類・友人だけでなく監督本人もカメオ出演している微笑ましい手作り感溢れる映画かもしれないが... 監督のおじさんがシェンさんでした。
めくるめく夢のワンカット
2020-028M 「凱里ブルース」
「ロングデイズ・ジャーニー この夜の涯てへ」のビー・ガン監督のデビュー作品。この作品から長尺ワンカット手法が駆使されている。ストーリーよりも流れるような幽玄な趣で描写されていく人々の動きを追うワンカット撮影のクライマックスに震撼する。
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