「これは、私たちの日常。」翔んで埼玉 つとみさんの映画レビュー(感想・評価)
これは、私たちの日常。
このレビューを書こうとして、点数をどうしようか、割と迷っていた。面白かったし、4か5かどうしようか…と思いながらスマホに指が触れ、5つの星が煌めいた。もはや大いなる力の存在を感じずにはいられない。これが埼玉解放戦線の力…!
「ローカルネタ」「関東人しか楽しめない」などと、少なくない人々に苦言を呈されているようだが、意外なことに海外勢も「翔んで埼玉」を楽しく観賞しているようだ。
曰く、「埼玉ってニューヨークに対するニュージャージーだよね!」「イタリアにも都市同士のライバル意識はあるよ!」などなど。世界中の色々な土地で「翔んで埼玉」は笑いと哀愁を振りまいている。
ディスられ、イジられることに慣れきった埼玉だからこそ、素直に総てをさらけ出し、埼玉県人以外の、あらゆる人々にその熱き郷土愛と爆笑を届ける事が出来たのだ。
肉を切らせて骨を断つ、恐るべし、埼玉…!
かく言う私も、埼玉の仕掛けた壮大な作戦に翻弄され、陥落させられた一人だ。
都内で社会人をしていたら、「翔んで埼玉」的な戦の火蓋は簡単に切って落とされる。
都内組だって、油断しているとクラス分けによる流れ弾が心に突き刺さる。架空の日本でありながら、これは確かに私たちの日常だ。
ギャグの体裁を取りながら、日常に潜む対立と闘争を抉り出してくるとは、天晴れじゃないか、埼玉…!
困惑と不条理の世界から、解放と平和への道筋まで見出だそうとする貪欲さ。運命の愛と自立への導きを描く壮大さ。そして、それを笑いで包む謙虚さ。
間違いなく21世紀の日本の姿を刻む怪作だ。本当に凄いよ、埼玉…!
割と本気で埼玉県人が羨ましく思える。海なんて無くたって良いじゃない!等身大の自分を愛せる埼玉の、更なる飛翔を祈る。