「映画に愛される女優、映画監督に愛される女優」旅のおわり世界のはじまり バラージさんの映画レビュー(感想・評価)
映画に愛される女優、映画監督に愛される女優
ほぼ全編前田敦子が出ずっぱり。当て書きをしない黒沢監督が主人公を前田で当て書きしたとのことで、監督の前田敦子愛が全編に溢れており、加瀬亮・染谷将太・柄本時生とウズベキスタンの国民的俳優アディズ・ラジャポフも完全に脇役に徹している。そしてそれが見事にハマっていて、とにかく前田が素晴らしい。ストーリー自体は希薄で淡々と映画が進んでいくが、とにかく前田が映っているだけで画が持つし、中盤とラストの彼女が「愛の讃歌」を朗々と歌い上げるシーンは独特の艶のある歌声に聞き入ってしまう。
前田敦子は映画監督からの評価が高く、犬童一心、山下敦弘、中田秀夫、黒沢清、廣木隆一、堤幸彦、鶴橋康夫らがいずれも絶賛している。思えば市川準監督の最後の長編『あしたの私のつくり方』が映画デビューとなったこともなにやら運命的に思えるほどだ。まさに映画に愛される女優なのだろう。
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