劇場公開日 2019年6月14日

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「簡単な英会話くらいは身につけなきゃ・・・と思った」旅のおわり世界のはじまり kossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0簡単な英会話くらいは身につけなきゃ・・・と思った

2020年9月7日
PCから投稿
鑑賞方法:CS/BS/ケーブル

 ユーラシア大陸のど真ん中にあるウズベキスタン。ロシア語のような雰囲気もあるが公用語はウズベク語。歴史をみても、イスラムやモンゴル帝国に占領され、やがてはロシア、ソ連に組み込まれていった国。サマルカンドなんてまさにドラクエの世界・・・

 怪魚探しがメインであろうTV番組のクルーたち。劇場の中の壁の装飾なんて「うちの番組はそういうの求められていない」と片づけられるし、ふしぎ発見やなるほどザ・ワールドとは違い、深夜枠のマニアックな番組なのだろうか?敗戦後の日本兵の話なんて興味深いところなのに。

 中心となるのは葉子役の前田敦子なのですが、撮影隊は加瀬亮、染谷将太、柄本時生という豪華な布陣であり、彼らは裏方に回っても演技力抜群だ。まぁ、前田敦子あってこその作品だろうし、レポートする中身も面白いものじゃない。裏金使って協力してもらうというのはヤラセ番組の皮肉としかいいようがないのです。

 全体的にドキュメンタリー風の成長物語なのですが、黒沢清がそこで終わるわけがない。終盤の展開には異国の中での疎外感や言葉の通じない恐怖が感じられる。彼女の恋人が東京湾の消防士をしていることも不安定要素の一つであり、男が多いバスの中や暗い路地なども恐怖感を煽る。それでも彼女自身の懸命に生きていくことがそのままタイトルの“旅”であり、ウズベキスタン人の優しさに気づくことが“はじまり”でもある。

 不思議な感覚に陥る劇場にも生きていることの喜びを感じるし、ラストの「オク」によって繋がっていることの満足感が得られる仕組みになっていた。ただ、「愛の讃歌」ばかりじゃ飽きがくるなぁ・・・前田敦子好きの人なら満足だろうけど。

kossy