騙し絵の牙のレビュー・感想・評価
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タイトルなし(ネタバレ)
変わり者編集長・速水(大泉洋)が当然、編集長と言う実働部隊から覇権争いのキーパーソンになっている所がピンとこない。新社長・東松龍司(佐藤浩市)の更迭とKIBAプロジェクトの頓挫を「社長室」で、どんでん返しをするのは、ミステリーの犯人当ての様でチープである。伊庭惟高(中村倫也)は後ろ盾も無いのに、何の権力があるのかも分からない。持ち株が多いのなら役員会議が蚊帳の外だったのもおかしい。もっと良い演出があったと思う。まだ伊庭惟高(中村倫也)に対しても速水(大泉洋)が、上から目線でしゃべっていたら、「俺はいつでも辞めてやる。面白い事がやりたいだけの放浪者」の人と言う事で納得できるが、伊庭惟高(中村倫也)に対してヘコヘコしてるから、キャラがブレブレだと思う。
たぶん原作者は、会社で責任ある仕事をしたことが無いんだと思う。
だから、権力争いの人と、実働部隊の発想がまったく違う事を知らないんだと思う。
新規制と普遍性
各登場人物の初登場の場面でそれぞれの人格を台詞・話し方・表情・行動・仕草・スタイリングを総動員して伝達してくる感じに、こんな情報量が多い作品が観たかったんだよ!ととても幸せな気持ちになりました。全編を通してプロットの意外性よりも演技アンサンブルの方が刺さった。
現実世界の構造的な課題や実際に起きている事、実際に完成したプロジェクトをコンテクストにしてるので同時代性を強調しているかと思いきや普遍性にもしっかり目配せしているのは流石。
同時多発的に今正に起きている構造転換をある分野に焦点を当てて描きつつ、それはいつの時代も常に起きている事である、つまりエンタルピーは常に増大しているという事を描いている。それに対抗する手段は普遍性と逆の特殊性を指向する事である、という事を一つの説得力を持った解を以って示している。
LITEの劇版がとても良くてサントラを買ってしまいました。
最後まで見応えのある、ちょっと活力をもらえる映画
大泉洋さん
出版戦略の二極化
とても面白かった。
重すぎず、誰も死なないし、どよんともこない空気の中で味わえる作品なのは、出版という娯楽文化の上での話だからだと思う。
見終えて思うのは、誰も騙し合っていなくて、それぞれの生い立ちや背景のもと、移りゆく今に合わせて牙を仕掛けているだけということ。
紙媒体にとって、手に取って貰う販路整備が非常に重要。でも中身も重要。
紙媒体は雑誌に依存、雑誌は広告に依存。
この収益体質を変えない限り、中身も面白くはできない。
そのどこにこだわるかが、登場人物ごとに違っていて、とても面白い。
速水は根がフリーで各出版社を渡り歩いてきただけあり、出会いや人脈や考え方も輪を広げていくスタイル。良いものは共有していけば良いという思考の持ち主。最後には先代社長の息子惟高氏と組み、薫風社文書をAmazon独占販売とする拡大の戦略を取るが、面白さを重視する。
先代社長、伊庭喜之助のもと5年温めた、昔から文学を扱ってきた歴史ある薫風社の文学資料館を本の物流センターとして扱うKIBAプロジェクト。
これを先代亡き後もどうにか推し進めたい改革派の東松と、小説薫風の品格と歴史を守りたい宮藤の派閥争いに思えたが、先代の息子惟高は既に先手を打ち、薫風社の書籍をAmazon独占販売とする交渉をアメリカで半年かけてまとめ、雑誌はweb化する策を練っていた。
東松は先代を守りたい、そして敵対派を出し抜きたい一心だったようだが、KIBAを進めるには時が立ちすぎていて、のろのろしているうち惟高も帰国し、失脚。
利益の出ない小説薫風が社内で聖域化しているものの、宮藤は薫風のブランド力をかざすだけで、風穴を開けようとしない。どころか、小説の賞に影響力を持ち、文学界の公平な評価を妨げてその名を汚す言動まで。結果、失脚する。
小説薫風を背負い守ろうとしていた江波は、薫風と作家と宮藤に失礼のないよう、名を汚さぬ事だけを考えていたようだ。作中、守りの象徴、攻めない象徴的存在。だが最後には高野を手伝い新たな一歩を踏み出す。
高野は街の書店が実家で、作品や作者と向き合って高めていきたい。良いものがあると思ってお客さんが足を運んでくれるスタイルを最終的に父から継承し、ドラマにも漫画にもなっていない、本で読むしかないもの。そこでしか買えない本を扱う選択と集中型を取った。
社内の派閥争い、社内の小説薫風vsその他雑誌の争い。雑誌トリニティの編集グループも巻き込まれながら、販売部数のために企画を挙げていく。
速水はサバゲーを趣味とし、前から気になっていたのはジョージ真崎ことモデルの城島咲の狂った文体だった。銃器好きの城島咲がトリニティで表現するきっかけを作る。城島咲役の池田エライザ以外できないような、可愛くて闇とハードボイルドを秘めた存在感がとても良かった。
高野は新人作家として目をつけていた矢嶋聖が薫風の賞からははずれるため、個人で目をかけてデビューさせようと思っていたが、実は矢嶋と、高野が好きな伝説の小説家、神座(かむくら)は同じ人物だった。
大御所作家としては、二階堂というワイン好きで出版社の経費で豪遊する、所謂な作家先生も出てくる。二階堂は長年甘やかされていた指摘を受け、原作をトリニティでコミック化する決意をする。
みんな、表現した文章を、現代でも認めて貰いたい気持ちはあって。
それらの文章や才能と、現代の市場や消費者動向とのかけ合わせを行いつつ、縮小業界を担わねばならない出版社の方々の苦悩がわかりやすく上手に描かれていた。
らしさvs面白さでは、作中では面白さに軍敗が上がったようだ。
販路の拡大vs縮小のどちらが面白いのかは、速水も高野も生存戦略のどちらを取ったかというだけで、正解はないような気がした。
尻すぼみ
尻すぼみかな。
出版会社内の権力闘争に、主人公が上手く立ち回って勝利を収めるかに見えたが・・・というお話。いろんな人の騙しあいが確かにあり、終盤まで一気に駆け抜ける疾走感は見ごたえがありました。ただ、ラストの15分があまりにも尻すぼみで。
最終的に部下の高野(松岡茉優)に裏切られる形(高野に悪気は全くない)になりますが、会社で得た情報・案件を持ち出して退社するのは、訴えられないのかな?と疑問。
また、会社側に立ち自分を他部署に移動させた元上司の江波(木村佳乃)と、退社後、仲良く一緒に仕事するかなぁ?とこれまた疑問。
主人公の速水(大泉洋)にしても、会社に残りまた地道に会社のために奔走するというようなエンディングもしっくりこないんですよね。原作小説のすぐに退社後、起業家となって、自ら「株式会社トリニティ」を設立、という流れになぜしなかったんでしょうか?
大泉洋もインタビューで「(原作で当て書きされていたのに)私が出た映画の中で一番、私っぽくなかった」というようなコメントをしており、本人もちょっと納得してなかったのかな?とも思いました。
by TRICKSTER10
もっと大きどんでん返しを期待した
出し抜く、仕掛ける…
出版業界の行末を見るような、騙し騙され、面白い内容だった。大泉洋をあてがきしたと言うだけあって、まさに大泉洋のために作られた、軽さの中にもピリッとある感じ。佐野史郎は適役。
さながらマカロニウェスタンの用心棒
これほど手の込んだ裏があったとは、まさにタイトルに納得です。
いかにも現代の出版界の苦境の様をノンフィクションばりに描きます、創業一族と番頭さんたちの暗躍も妙にリアリティを感じます。バラエティ雑誌の売り上げ向上策も現実的で感心した。
原作の老舗出版社という舞台設定の上に練られた脚本で曲者揃いの豪華俳優陣が重みを添えて、軽妙な主人公とのミックスがいい味になりました。
アイドルがストーカー対策に3Dプリンターで護身用の拳銃を作っていたなんてエピソード、安倍さんの事件を知って観るとあながちフィクションとは言い切れない時代の怖さを感じます。
大泉洋さんを当て書きしたと言うだけあって、策略家で人たらしなのが嫌味にならないのは大泉さんだから成立するという思いも同感です。社長派と常務派を手玉に取る主人公は業界の流れ者、さながらマカロニウェスタンの用心棒にも思えてきます。
大泉さんレベルでも納得していたのですが部下の松岡茉優さんの方が師匠を越えていたと言うひねった落ちも絶妙でした。
騙し絵の牙ってタイトルが凄い
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