劇場公開日 2019年5月10日

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「憲法第38条を言ってみろ!」轢き逃げ 最高の最悪な日 kossykossyさんの映画レビュー(感想・評価)

3.0憲法第38条を言ってみろ!

2019年5月20日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

 ほぼ加害者側の描写が中心から始まり、被害者遺族(水谷豊、檀ふみ)が登場するのは中盤に差し掛かってから!という珍しい構成。神戸の近くなんだろうと想像はできるものの、ここはどこなんだろう?とずっと気になってしまう。ジープを運転していた宗方修一(中山)の車ナンバープレートもご丁寧に“神倉”となっており、明らかに“神戸”と書かれたナンバーを撮影のために偽装してあると思われた(有印私文書偽造同行使道路交通法違反)。

 もちろん轢き逃げは道路交通法上、許されないこと。直ちに運転を停止し、救護義務を怠った場合には人身事故に係る救護義務・危険防止措置義務違反となり、罪はぐーんと重くなってしまう。そして同乗していた同僚で親友の森田輝(石田)にも犯人隠匿罪、救護義務違反が科せられる。そもそも酒を飲んでるわけでもないし、スピードは若干出ていたかもしれないが、違反もしていないようだし(ぶつかり方がショックを感じない程度だった)、救護して警察に連絡すれば罪はずっと軽くなるはずだ。

 そんな不思議な展開の社会派サスペンスながら、罪悪感とゼネコンの会社での地位や副社長の娘との結婚を天秤にかけながら、堕ちてゆく若者の心理を上手く捉えていた。さらに、動物の目を集めた脅迫状もどき、披露宴での祝電にまで脅迫文を混ぜるなどの犯人(刑法第222条)。そして警察側はじわりじわりと犯人に迫ってゆくのだ。

 被害者遺族が登場するのが轢き逃げ犯が逮捕されてから。悲しみに暮れる夫婦の姿もさることながら、現場にも家にも携帯がなかったことから、父親・時山光央はその携帯を探すため娘の勤務先や友人たちを訪ねまわる。何かをしなければふさぎこんでしまうだろう、この展開はさすがだと言うほかない。そして、合コンをやったという事実を掴み、喫茶店“スマイル”では男と会っていたことまで突き止めた父親。

 意外と言えば意外。男の家に携帯があるはずだと睨んだ時山は大胆にも男のアパートに侵入する(刑法第130条:住居侵入罪、刑法261条:器物損壊罪ただし親告罪)。部屋に帰ってきた男と乱闘(傷害罪?)。と、時山の自宅には大きな刑事訴訟法の本が置いてあったことから、どこまでが罪になるのか色々勉強しての行為だったのだろう。ただし、動物図鑑や携帯が無かったら大変なことになっていたに違いない(ストーリー仮定妄想罪)。

 それにしても泣けるシーンはといえば、親友たちの言葉だったり、母親の寛大さだったり、留置所で「別れよう」とまで言われた早苗(小林)の寛容さだったりする。そして水谷豊が相棒の存在無しで孤独な独自捜査をする姿。今までの刑事ドラマでの経験を十分生かした作品となったと思う。

 ポートアイランドはわかったけど、気になったのは時山家。1両編成の電車が走ってた。どこ?ちょっとしたことで往来危険罪になってしまいそう・・・

kossy
kazzさんのコメント
2019年5月22日

私も、登山列車のような斜めになった車両が気になって、しかも窓のすぐ外を通っているようだったのが違和感あって、調べたんですよ。

kazz
kazzさんのコメント
2019年5月21日

時山家の窓から見えていたのは、神戸市灘区の摩耶山を上り降りする単線「摩耶ケーブル線」ですね。
民家の脇を通ってます。

kazz