「救いはあるか」轢き逃げ 最高の最悪な日 ワンコさんの映画レビュー(感想・評価)
救いはあるか
冒頭の車のシーンからイライラが募る。
輝の話し方が勘に触るし、タイトルの場面に向かう事が容易に想像できるからだ。
加えて、個人的体験として、狭い道を慎重に注意深く運転してる時でも、ずっと自分のことを話してる同乗者が確かにいることを思い出すからだ(笑)。
映画は、対照的な2人の組み合わせ、3組を絡ませながら進んでいく。
エリート街道を歩む秀一と、カバン持ちのような輝、
事故の真実に拘る時山と、前向きに生きようとする千鶴子、
老練な柳と、血気盛んな正義感に溢れた前田の両刑事だ。
事件は意外な展開を迎える。
映画を観てる多くの人も、輝の行為に憤りを感じても、これは罪に問う事が出来るのか、疑問に感じるに違いない。
時山が、刑事訴訟法の本をテーブルに叩きつけるように置く場面を思い返して、映画もその疑問を共有していたことに気付く。
自白だけでは足りないはずだ。
のぞみの携帯を盗み持っていたことや、脅迫状のようなものを作成した痕跡だけで十分なのか。
輝が移送されるシーンを見ても判然としない。
この映画は、こうした自問自答をさせようとしているのか。
エンディングは、千鶴子と早苗の邂逅のシーンだ。
複雑に絡み合った人間模様の行き着いた先に一縷の望みがあるようで、ほっとする。
多分、事故を起こしてしまった側の家族も、大切な人を亡くした側の家族も、生きていかなくてはならないということなのだろう。
前向きに生きるのには時間もかかるだろうし、わだかまりや怒りが全くなくなるなんて事もないかもしれない。
でも、生きていかなくてはならないというメッセージのように感じる。
余談で申し訳ないが、映画には日本ならではのような、馬鹿馬鹿しい場面もある。大手ゼネコンで男性が多くいる職場とはいえ、部下の胸ぐらを掴んで押し倒すような上司がいるか?とか、社員の娘婿の事故とはいえ、義理の親が引責辞任するか?とか、ちょっと苦笑してしまった。