九月の恋と出会うまで : インタビュー
運命は変えられるのか? 高橋一生&川口春奈が初共演「九月の恋と出会うまで」で問う
「書店員が選んだ、もう一度読みたい恋愛小説」第1位となった松尾由美氏の小説を、高橋一生と川口春奈の出演で実写映画化した「九月の恋と出会うまで」(3月1日公開)。意外にも恋愛映画初主演作となった高橋と、映画・ドラマ・CMと幅広く出演してきた川口が初共演を果たした。心地よいハーモニーで互いを引き出し合い、純度の高い恋愛譚を紡ぎ上げた2人に、話を聞いた。(取材・文・写真/山崎伸子)
これまでさまざまなラブストーリーの相手役を務めてきた高橋だが、今回主演としてオファーが入ったことについて「ありがたいと思ってお受けしました。これから先、これだけ王道のラブストーリーは、なかなかできないだろうと思ったので」と感謝したそうだ。
川口は、以前から高橋との共演を待ち望んでいたという。「高橋さんと一緒にお芝居ができること自体が嬉しかったです。また恋愛ものについては、今でないとできない作品もたくさんあると思うから、このタイミングで高橋さんとご一緒できてよかったです」。初共演の感想を詳しく聞いてみると、「高橋さんはすごく物静かで寡黙なイメージがありましたが、たくさんおしゃべりをしてくださったし、すごい聞き上手でもあります。私は本来人見知りですが、高橋さんは私のくだらない話も聞いてくれるし、1を投げたら10を返してくれる、とても優しい方です」と声を弾ませた。
一方の高橋は「それは単純に僕が楽しかったからです」と笑顔を見せる。「川口さんは自分の思っていることをちゃんとストレートに話してくれる人。僕も川口さんは物静かな人だと思っていましたが、バーンとドアを開け放して話してくれたので、そのまま楽しく会話ができました」。
少し不思議なマンションに引っ越してきた志織(川口)と、小説家を志している隣人の平野(高橋)。ある日志織は、自分の部屋から聞こえた“未来からの声”に従ったことで命を救われる。しかし、そのことでタイムパラドックスが生じ、365日後、自身が消えてしまう事態に。志織は平野の協力を得て、最悪の結末を回避しようと動き出す。
演じた役どころとの共通点を聞くと、川口は「ないです」としながらも、「共感する部分や尊敬する部分はありました」と明かす。「変な正義感があるところや、面倒見がよいところ、体調が悪いのに必死に頑張るところとか。健気で真っ直ぐだし、相手に対して自分を捧げられる女の子という点がすばらしいです」と、その魅力をとらえた。
川口自身は、恋愛においては、志織よりもう少しハッキリしているタイプだそう。「2人のように、ぎこちなさや曖昧な距離感を持つ感じが、いかにも恋って感じがします。なんか引きで見ていていいなあと」。
高橋は「あまり共通点を考えてお芝居はしない」とキッパリ。「ここ最近は、やらせていただく役の密度が濃くなっているので、役でいる時間のほうが長いんです。そうすると自分との違いなどを考える時間もなく、ただ没入してしまうので、自分とは違うという風には、受け取れなくて。共感しっぱなしというか、主観になっているので、自分との違いなども、あまりわからないんです」と、演技派ならではの心境を説明した。
未来を変えることによって生まれたタイムパラドックスが描かれる本作。2人は、自分自身の手によって運命を変えられると思っているのだろうか。
高橋はもともとSF小説が大好きで、タイムパラドックスに関する本もよく読むという。その観点から、「僕は『運命を変えている』ということですら、すでに運命によって定められていると思います。つまり、全部が裏打ちされている気がします。もっと言ってしまうと、全部自分で決めているとも思っています」と持論を述べる。
川口は「そうかもしれない」と頷きながら、「私は運命を自分で切り開き、いろんな人と出会うべくして出会いたい。それ自体が運命かもしれないけど、自分ではそうありたいです。もちろん、明日のこともわからないけど、私は自分でつかみたい」。力強く語ってくれるところが、なんとも頼もしい。
常に質問を思慮深く咀嚼し、理路整然と答えてくれる高橋と、どんな質問でも素直に直球で話してくれる川口。タイプは違えど、現場で真摯に相手と向き合うアプローチ方法は共通していたよう。2人が織りなす予測不能のラブストーリーを、存分に堪能してほしい。