「フランスの雇用問題」セラヴィ! autumn003さんの映画レビュー(感想・評価)
フランスの雇用問題
シネクイントで開催された試写会で観てきました。
結婚式にまつわるコメディとして観に行きましたが、思ったより昨今のフランスの雇用問題が根底にある社会派な作品として考えさせられました。
主人公のマックスは、人間的にクソだなと思うシーンがいくつもありますが、仕事に真摯な人間でもあるので、式の最中次々と起こるトラブルを解決すべく奔走します。長年の経験から解決できるもの(パイ作戦)もあれば、匙を投げたくなるようなトラブル(新郎が空中にリリースされたり花火が爆発した件)もあります。
基本有能だけど恋愛が絡むとアホ化する右腕のアデルや、今作のポンコツ枠こと義弟と助っ人バイト(すべてにおいてポンコツ)に対するフラストレーション等、スタッフに対してキレるシーンもよくわかります。管理職が割を食うのは世界共通かと、哀しいコメディ要素を感じました。
この映画を構成する重要な要素として、式場スタッフの人種がさまざまであること、雇用保険等は全員が完備ではないことがジョークとして使われるくらいだということ、マックスが昨今の雇用問題に怒りを覚えていることがあります。政府の手当の廃止、若者の雇用の不安定、外国人労働者への正常な雇用契約が結べない現状への不満をぶちまけるシーンがあります。こういった部分に日本の現状と重なってしまうところがいくつもあり、考えさせられました。
同監督の「最強のふたり」はひねくれ富豪のフィリップと付き合いのいい楽天家なドリスにうまく焦点が当たっていましたが、今作は群像劇的な側面があるため、どこかの面では共感できても一人の人物や物語に没入できる感じとは違います。ただ、カメラマンと職場体験の学生のように、「古い人間が新しい世代から学んでいくことがある」という部分で楽しませてくれるのが、さすがトレダノ監督とオリヴィエ監督だと思いました。
これから見る方には、自分の共感できる登場人物を見つけて、このとんでもない結婚式の裏側を楽しんでほしいです。