劇場公開日 2018年10月12日

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「見くらべがたのしい」バーバラと心の巨人 津次郎さんの映画レビュー(感想・評価)

3.5見くらべがたのしい

2020年7月11日
PCから投稿

A Monster Calls「怪物はささやく」(2016)に酷似していました。原作は違いますが話はほぼ同じ。モンスターの造形も似ています。

過酷な現実を受け容れられない子供が、空想の世界に逃げるというドラマです。
重い病の母親、主人公は母親が死んでゆくことを直視できません。
悲しみをかかえ、現実を逃避する主人公にはモンスターが見えます。
強迫観念がつくった異形のもの=モンスターに対峙し、乗り越えようともがく主人公の内的葛藤が描かれます。

両作とも潤沢な資金が感じられ、つくりも手がたいものでした。互角に感じましたがimdbではA Monster Callsのほうがひとまわり高めでした。

A Monster Callsは小説、I Kill Giantsは絵本(グラフィックノヴェル)を元にしているそうです。
顕著な違いは主人公が少年(A Monster Calls)か、少女(I Kill Giants)か、だけですが、幼くして親の死に遭うのは通有する物語です。同じ話でも、どこの国にあっても不思議ではないと思います。

I Kill Giantsには絵本から翻案されていることがよくわかるキャラクターデザインがあります。
主人公バーバラは大柄で、オーバル型眼鏡とウサギ耳のカチューシャ、いつも薄汚れたジーンズ色のコートを着ています。
バーバラとつるむソフィアは小柄で色白で三つ編み、園児のレインコートに見える黄色いコートを着ています。
絵になります。

バーバラは変人。学内でも孤立し、いじめられてもいます。じぶんの世界にこもって、現実を憎み凡人を呪い、妄想が生み出した禍々しいスペルとGiantsの餌付けに奔走し、ソフィアにしか心をひらきません。

このような物語は、幼心を理解できたとしても、楽しむにはいったんじぶんを純真にしなければばならないと思います。
醒めていると楽しめない映画です。
ただし、幼少期に親を亡くした体験者にははかりしれない視点が備わっているはずです。

制作費を見たらI Kill Giantsが17億円。A Monster Callsは46億円でした。A Monster Callsはゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)で9部門を受賞しています。それは妥当に感じますが、個人的に見比べるとこっちが気に入りました。

バーバラ役はMadison Wolfeという女優です。
『バーバラ役の選考には500人以上の女優が応募したが、その熾烈な競争を勝ち抜いたのがウルフだった。』(wikiより)
映画時で14歳。特徴は広い額。骨格形成の時期でもありますが、顔の半分がほぼ額です。偉人顔の特徴に広い額という項目がありますが、なるほどと思わせます。だてに選ってはいません。

ラスト、母の死を受け容れ、空想の世界から解放されたバーバラは、いわば健全になって、格好も変わります。この時のポニーテールとスタジャンもいい感じでした。バーバラと小さくて生真面目でイギリス訛りのソフィアが、個人的にはA Monster Callsに勝った理由です。が、どちらも良作で、たのしい見比べでした。

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津次郎