バーバラと心の巨人のレビュー・感想・評価
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空想は生きるための豊かな知恵
邦題が良い。原題では巨人は実在するのかのようにも感じるが、正直巨人の存在の有無に関してはスリルは乏しい。ならば最初から「心の」と銘打っておいて、なぜバーバラがそんな虚構にとらわれているのかに観客の視点をフォーカスさせた方が物語の緊張感が高い。
物語は少年少女の通過儀礼を、一風変わった展開で描き、空想することで人は強くなれるんだということを描いている。アンダース・ウォルター監督は、オスカー短編賞を受賞した『HELIUM』でも同様のテーマを描いている。『HELIUM』では死を迎える子どもが空想することで死に向き合う、本作では空想で生きることに向き合う少女を描いている。
世界には理不尽なことがたくさんある。それを乗り越えるためにも空想が必要。昔の人は天災を神の怒りなどの宗教的な空想感で乗り越えてきたのと同じことだ。これは人間が本来持つ生きるための豊かな知恵だ。
邦題の「心の」は余計なお節介だが、中身は上出来
原題は「I Kill Giants」。映画の世界では森の木ほども背丈のある巨人が実体を伴って登場する。はたして現実か、それとも想像の産物なのか。もちろん大人の常識にてらせば、巨人なんているわけないから空想に決まっている。だが、サンタクロースや幽霊や宇宙人の存在を信じていた子供の頃の自分だったらどうだろう?そんな風に考えると、邦題に「心の」を入れたことは観客に先入観を与えてしまう点でマイナスだ。私は巨人を殺す、では映画のタイトルっぽくないが、想像力を刺激し解釈の幅を持たせる工夫がほしかった。
作品自体はかなりいい。主演のマディソン・ウルフ、撮影当時は13、14歳あたりだが、確かな才能を感じさせる演技力。クラスで孤立していた彼女と、イギリスから来た転校生との友情の紆余曲折もはらはら、ひりひりさせられる。イモージェン・プーツの出番が少なく魅力を十分に発揮できていないのが惜しい。
思ってたジャンルと
全然ちゃいますやーん!不意打ちですやーん…
フィラデルフィアの海岸沿いにある小さな町に住む主人公のバーバラは、ゴリゴリの中二病な感じで、日夜巨人と戦うための準備をしている。
好きな餌の配合を調べる、餌を付けた罠を仕掛ける、武器を準備する、周囲を監視するなどなど。
でも、時代は現代、普段はバーバラも普通に学校に通ったりしてる、全くの日常世界。
こうなると、完全に周囲はもう変な人としてしか見ない。なので誰も近づかない。
すると自分の基地(中二病と言うかもう小学生ノリよね)の前で見たことのない女の子に声を掛けられる。名前はソフィア、イギリスから引っ越しえ来たらしい。なのでソフィアも孤独。そんな孤独な二人がすぐ打ち解け…ない。バーバラは変人風な上にとことん人を突き放すような口ぶりなので、ますます孤立を深める。
まあ、とは言ってもそのままの距離だとお話が続かないので、ある事件をきっかけに仲良くなるんだけど、でもやっぱりある一線でバーバラはソフィアすら寄せ付けない。
特に異常な執着を見せる巨人退治については、ソフィアもお話レベルはついていけるものの、動物の死体いじくったりし始めるともうついていけない。そりゃそーよ。
学校でも当然浮いた存在で、ソフィアが唯一の人とのつながり。それとあともう一人、スクールカウンセラーのガモーラ、違う、モル先生もバーバラのことを気にかけている。
ただ、大人には更に心を開かないバーバラ。
更に、家でも毎日仕事と家事に追われて疲れ果てている姉のカレン、ゲームばかりで存在空気の兄貴(名前も知らん)との生活もいつもギクシャクしていて、一人で巨人に向き合う時間だけが自分の時間になっている。
さて、ここまで観て、ジャンル的には私しか見えない敵と戦うホラー系なのか、それとも巨人の圧倒的フィジカルに対峙して知恵でやっつけるバトルアクション系なのかな、と思った私はお馬鹿さんなのでしょうか…。
後半、いや終盤近くになるまで、とにかくバーバラがイタい、じゃない、痛々しい。人に対して、なんでそんな言い方するのよ、とこっちが泣けてくるような棘の生えまくった言葉の数々。それを言っちゃあお終いじゃんと思うことが数知れず。それに対してガモーラ先生とソフィアちゃんはマジ献身的で、しまいにはバーバラヘイトが集まりそうなぐらい。
特にソフィアちゃんは途中あれこれあったものの、自分を想ってくれる存在の大切さと言うか健気さと言うか、完全に犯罪になるのでやめておきますが抱きしめてあげたい存在。
最後の20~30分ぐらいかなぁ、最終決戦前からもう感情の振り子が予想もしない方向に振り切れてしまって、その結末は何というか、全てを受け入れつつエンディングを迎えることができた。
久々に映画観てて、例のアレがアレしましたよ。一人でよかったー。
クライマックスまではしんどい展開との結構我慢比べ。だけど、最後はちゃんと受け入れられる結末だと思います。佳作でした。
タイトルなし(ネタバレ)
残念ながらカタルシスが無い。
途中までは期待しながら見ていたが、
ラストまでの予想が出来た時点でそのままの終わりだった。
例を出すと”ビッグフィッシュ”や”ウォルター少年と、夏の休日”の作品のような
腑に落ちる落としどころが無かったのが残念でした。
主演のマディソン・ウルフは素晴らしい演技をしていたので今後も追いかけたいと思います。
現実に対する思慮深さは無いので、虚言ばかりで浅く感じた!!
子供なりの観念の話をずっと聞かされているだけで、全く楽しめませんでした。空想のみではなく現実に対する洞察や思索が無いので、とても浅く感じました。私も子供の頃は空想癖がありましたが、現在は殆ど無くなってしまいました。(全くリア充では無いですが)現実から逃げる必要が無くなったのかと、本作を観ながら考える事ができました。
巨人とは…?
思春期に差し掛かった、女の子の不安や恐れに対する、揺れ動く深層心理を描いた作品。ハリー・ポッター・シリーズのマーク・ラドクリフが製作担当ただけあり、幻想的な描写とサスペンス的な要素を含ませた展開は、観客を、最後まで引きつけた。
心を閉し、家庭でもら学校でも独りぼっちのバーバラだったが、彼女にはいつか自分達を襲いくる巨人を倒す使命があると信じていた。そして、様々な罠を仕掛け、巨人への対抗措置を試みる。
果たして、巨人とは何なのか?作品が進むにつれて、その意味は明らかになる。しかし、それまでにも、学校のいじめっ子、理解のない姉や兄、威圧的な先生等、様々考えられるが、やはりこのテーマの根底には、家族愛があるのだろう。
本作は、巨人が実在する世界のファンタジーなのか、それとも、何かの象徴なのか、という点。本題は、『I KILL GAIANTS』であるから、邦題に『心の』と初めからつけているのは、いかがなものかと思う。
【ある哀しみを抱えながら、必死に生きる少女の心が生み出したモノ。そして、そのモノと心を交わすことで哀しみを乗り越え、成長していく少女の姿が印象的なダーク・ファンタジーテイストの作品。】
ーバーバラは、ちょっと不思議な女の子。”巨人”をおびき寄せるために「エサのジュース」の配合に余念がないし、”巨人”を倒すために、海辺の秘密小屋にはイロイロな秘密兵器や”思い出”が隠されている。そして、彼女は”守護霊への敬意”を示すウサギの耳をいつも、頭部に装着している。-
・ちょっと、変わった女の子であるがゆえに、学校では変わり者として観られているバーバラ。けれど、そんな彼女にもひょんなことから、ソフィアという友達が出来る。
・学校では、心理士の”モル先生”から、優しく話し掛けられるが、バーバラの頑な姿勢は変わらない。ソフィアもモル先生も、巨人の話を信じない・・。
ーモル先生は全て見抜いていたんだろう・・。-
・いじめっ子のテイラーもちょっかいを出してくるが、彼女は”コヴレスキー”と名付けた秘密の武器を秘めたポシェットを常時携帯している。
ーこの、”コヴレスキー”:100年前の野球選手の名前と巨人との関係性が露わになる部分は秀逸である。バーバラの想いが良くわかる・・。-
・何故か、バーバラの食事を含めた面倒を見るのは姉のカレンである。彼女も金融関係の会社で働いているが、イロイロと大変らしい・・。時折、涙を流している。
・そして、徐々に明らかになるバーバラの家族の真実。今まで足を運ぶことのなかった二階の部屋にいたのは・・。
<哀しき現実と向き合う勇気がなかったためにバーバラの心に生れたモノ。だが、現実は残酷で・・。
けれど、その事実を受け入れたバーバラ。その瞬間、敵であったはずの巨人がバーバラに話しかけた事。
新学期を迎え、全てを受け入れたバーバラの頭には、もう”守護霊への敬意”を示すウサギの耳は必要なかった・・。
多少、ストーリー展開は粗いが、ダーク・ファンタジーとしてはあるレベルには到達している作品。
似たテイストの作品として、「怪物はささやく」があるが、見比べてみるのも、一興かもしれないです。>
確かにやり過ぎな邦題だけど。
見くらべがたのしい
A Monster Calls「怪物はささやく」(2016)に酷似していました。原作は違いますが話はほぼ同じ。モンスターの造形も似ています。
過酷な現実を受け容れられない子供が、空想の世界に逃げるというドラマです。
重い病の母親、主人公は母親が死んでゆくことを直視できません。
悲しみをかかえ、現実を逃避する主人公にはモンスターが見えます。
強迫観念がつくった異形のもの=モンスターに対峙し、乗り越えようともがく主人公の内的葛藤が描かれます。
両作とも潤沢な資金が感じられ、つくりも手がたいものでした。互角に感じましたがimdbではA Monster Callsのほうがひとまわり高めでした。
A Monster Callsは小説、I Kill Giantsは絵本(グラフィックノヴェル)を元にしているそうです。
顕著な違いは主人公が少年(A Monster Calls)か、少女(I Kill Giants)か、だけですが、幼くして親の死に遭うのは通有する物語です。同じ話でも、どこの国にあっても不思議ではないと思います。
I Kill Giantsには絵本から翻案されていることがよくわかるキャラクターデザインがあります。
主人公バーバラは大柄で、オーバル型眼鏡とウサギ耳のカチューシャ、いつも薄汚れたジーンズ色のコートを着ています。
バーバラとつるむソフィアは小柄で色白で三つ編み、園児のレインコートに見える黄色いコートを着ています。
絵になります。
バーバラは変人。学内でも孤立し、いじめられてもいます。じぶんの世界にこもって、現実を憎み凡人を呪い、妄想が生み出した禍々しいスペルとGiantsの餌付けに奔走し、ソフィアにしか心をひらきません。
このような物語は、幼心を理解できたとしても、楽しむにはいったんじぶんを純真にしなければばならないと思います。
醒めていると楽しめない映画です。
ただし、幼少期に親を亡くした体験者にははかりしれない視点が備わっているはずです。
制作費を見たらI Kill Giantsが17億円。A Monster Callsは46億円でした。A Monster Callsはゴヤ賞(スペインのアカデミー賞)で9部門を受賞しています。それは妥当に感じますが、個人的に見比べるとこっちが気に入りました。
バーバラ役はMadison Wolfeという女優です。
『バーバラ役の選考には500人以上の女優が応募したが、その熾烈な競争を勝ち抜いたのがウルフだった。』(wikiより)
映画時で14歳。特徴は広い額。骨格形成の時期でもありますが、顔の半分がほぼ額です。偉人顔の特徴に広い額という項目がありますが、なるほどと思わせます。だてに選ってはいません。
ラスト、母の死を受け容れ、空想の世界から解放されたバーバラは、いわば健全になって、格好も変わります。この時のポニーテールとスタジャンもいい感じでした。バーバラと小さくて生真面目でイギリス訛りのソフィアが、個人的にはA Monster Callsに勝った理由です。が、どちらも良作で、たのしい見比べでした。
なぜか引き込まれる
見えないモノへの恐怖・・・新型コロナウィルスも見えない恐怖
ウサ耳パーカーを着込んだメガネ少女バーバラ。森に入って“巨人”の餌を作ったり、仕掛けを作ったりする妄想少女でもある。バーバラによれば天と地の間に体長20マイルの私生児ウルが誕生し、その他の10メートルクラスの巨人(レギュラー・ジャイアント)はみなその子孫であるとのこと。やっかいなのは巨人をも倒すタイタンの存在。いつも携帯しているポシェットにはいざという時に役立つ究極のハンマー「コブレスキー」が入っているのだ。
そんな変わり者のバーバラにもイギリスからの転校生ソフィアという友だちができた。姉のカレンや新任心理士のモル先生(ゾーイ・サルダナ)も巨人を信じてくれそうもなかったけど、ソフィアならと、秘密基地に招待して色々教えてあげるのだった。
学校にはいじめっ子の存在もあり、バーバラと敵対しているのですが、巨人は何のメタファーなんだろうかと考える最初の候補でもあります。やがて地震や竜巻などの天災か、時代がはっきりしないためにテロだったりするのかとも考えられるのです。果敢にもバーバラはみんなを守ると言って、一人巨人に立ち向かおうとする。まず現れたのがレギュラーであるフォレスト・ジャイアント。それを列車の廃車場で火災を起こして倒したのだ・・・ていうか、大人目線で見ればいい迷惑の不良行為だ。
つい手が出てしまうほどのちょい暴力少女。妄想とはいえ、彼女は何に立ち向かおうとしているのか。最近では木の怪物といった『怪物はささやく』(2016)などというメタファーだらけの作品もありましたが、今作では終盤に一気に氷解する。秘密基地にカセットテープを発見したソフィアが聞いたもの。それは100年前のフィリーズのピッチャー・コブレスキーが「ジャイアンツ・キラー」と呼ばれていたこと。そして、母親が重い病気で自宅の一室に暮らしていたという事実が明かされるのだ。
死が目前の母親に会うのが怖くて、妄想世界へと逃げ回っていたバーバラ。東海岸にやってきた嵐と竜巻をものともせず立ち向かう彼女は、タイタンの姿を見て死の恐怖と戦う。コブレスキーが発動し稲妻を千倍にしてタイタンに攻撃。打ち勝つものの、タイタンが「人間は必ず死ぬ。死を恐れるな。恐れたら人生そのものが無意味になってしまう」などと語り掛け、勝った喜びと勇気をもらい、バーバラが現実に向き合うという展開だ。
終盤にわかるメタファーと、成長したバーバラ。病床の母に会う勇気さえなかったところが、子ども的じゃない気もするのですが、今の新型コロナウィルスを思えば、感染症だったのかもしれませんね。
受け止める、ということ
少女の心の葛藤の物語
痛い子にしか見えませんでした
タイトルがネタバレ!
とても良かった
成長
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