審判 劇場公開日:2018年6月30日
解説 「いちばん美しい夏」「スターフィッシュホテル」など日本で活動を続けるイギリス人監督ジョン・ウィリアムズが、フランツ・カフカの不条理文学「審判」を現代東京を舞台に映画化。銀行員の男・木村が30歳の誕生日に自宅マンションで目覚めると、部屋には2人の見知らぬ男たちがいた。彼らは木村を逮捕にしきたと言うが罪状は不明で、木村が無罪を主張すればするほど、蜘蛛の巣のようなシステムに絡み取られて身動きができなくなっていく。救いを求めてあがいても期待はことごとく外れ、やがて木村は出口のないこの迷路の終焉に気づきはじめる。主演は「いちばん美しい夏」で映画デビューを果たし、「工業哀歌バレーボーイズ THE MOVIE」などで活躍する個性派俳優にわつとむ。歌舞伎界の名脇役・坂東彌十郎が特別出演。
2018年製作/118分/日本 配給:百米映画社
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そもそも、カフカの小説を実写化することにより伝えたかった思いがよくわからない。製作陣も迷走したままになってしまったのでは?
2018年7月22日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館
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『変身』で有名なカフカの小説を実写化した作品である。原作は未読であるが、作風は不条理と理不尽の状況下に於いての人間の機微をクールな視点で描く内容であることは想像出来る。 小説をベースに、制作陣の脚色がなされているかと思ったが、どうも充実らしいのは、wikiで調べると粗筋に変化がないことから分かる。なので、そもそも容疑不明での裁判という突拍子もないシチュエーションが、どれだけ作品に入り込めるのかが鍵なのであろう。自分は非常にそこが困難であった。その辺り、もう少し作品内容を壊しても、現代に沿うストーリー設定に再構築してもよかったのではないだろうか。これでは、単に小説を芝居にしてみましただけで、外連味もなにもない。余程文字を読んだ方が却って想像が膨らむかもしれない。法廷(小学校の体育館だが)で、裁判官の後ろで洗濯物を干す女等、これは小説にはキャスティングがないだろうが、それとて不条理コントをみせられているようで、ついていけない。まぁ、そういう作風だと言われれば、もうこれはそういうものだというもので飲み込むしかない。そのシュールをまるで苦い薬のように飲み干して、それで何が得られるかというと、かなりの倦怠感しか包まれないのだが・・・決してカフカの世界観は嫌いではないし、それこそ『変身』は秀逸なSFである。こういう単館系の作品なのだろうから、もっと冒険してもよいのではないだろうか。ドぎついシーンや、肉感的なエロティシズム、ラストの屠殺シーンは、もっとバイオレンス色が強いとその不条理感が映えると思うのだが・・・ どうせ、こういうテーマだから伏線など回収されないのはデフォルトだし、勿論カタルシスなんて甘っちょろいプレゼントはないのは分かっているし求めてもいない。 結局、主人公はその不条理に対するストレスを女の色香や優しさをもって解消していこうとする。そしてその解消法が正に男の息の根を止める、そんな訓示なのだろうと考える。ただ、あれだけの理不尽ならばそっちに癒しを求めるのは自然なことじゃないかなとも思うのだが、自分も主人公と同じで、ろくな死に方をしないだろうな・・・ ただ、何が正解でなにが間違いなのか、人生への教訓なのであろう今作品は、カフカの小説を読むだけでたどり着けると思う。わざわざ実写化しなくても。
1.5 沼 一人の男が30歳の誕生日の朝目覚めると、突然罪状も分からないままに罪人として扱われ、もがくほどにハマっていくという不条理を描いたカフカの審判を基にした話。 舞台を現代日本に置き換えつつ原作そのままに作られた様な感じで、ちょっと現代日本としては違和感のある部分もちらほら。まあ元々めちゃくちゃな話なんだけどね。 現実世界での不条理なことに置き換えて自分なりに思うところはあるけれど、やはり難しい。 それと、淡白というか素直というか、登場人物の感情の波が小さく感じた。
2018年4月27日
PCから投稿
鑑賞方法:試写会
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フランツ・カフカの同名小説を、現代の東京に舞台を移して映画化したものです。 銀行に勤める木村陽介(にわつとむ)。 30歳の誕生日の朝、目覚めると、自宅マンションのベッドの横に見知らぬふたりが立っていた。 まもなく逮捕状が届くはずだ、今回はそれに先立っての調査である、という。 逮捕と告げられるが、身に覚えはない。 ほどなくすると逮捕状が届き、出廷するようにと書かれているが、時間も場所も不明。 当日近所をうろついていると、電柱に廃校になった小学校に簡易裁判所らしきものがある旨の貼り紙を見つけ、ようやくたどり着いたが、そこは体育館の中に十脚ほどの机が並べられ、裁判所ごっこでもしているかの様子。 こともあろうか、裁判官を名乗る男の後ろでは、女性が洗濯物を干しているといった有様だった。 そして、そこでも罪状は告げられず、口にした不平は調書に記録され、一週間後に再び出廷するようにと申し渡される・・・ といったところから始まる物語で、カフカの小説は読んだことはないが、かなり原作に近い内容のようだ。 1962年にオーソン・ウェルズ監督、アンソニー・パーキンス主演で、1992年にデイヴィッド・ジョーンズ監督、カイル・マクラクラン主演で映画化されているが、これも未見。 ただし、1991年にスティーブン・ソダーバーグ監督が撮った、カフカの実人生に『審判』と『城』を盛り込んだ『KAFKA/迷宮の悪夢』は鑑賞している。 カフカの不条理小説は、本来は、石造りのヨーロッパの街が似合うのだろうが、現代の日本でも違和感がなかった。 特に、前半。 体育館の中でつくられた、おふざけのような裁判所などはシュールの極みで、曖昧模糊とした官僚主義の、形式はあるが中身はないところを的確に表現している。 また、それまで挨拶も交わしたことがなかった隣人の女性が、主人公が逮捕されるとなると、俄然興味を示し、なぜか彼のことを事細かに知っているあたりも、妙なリアリティがある。 たぶんに、あまり有名でない俳優たちが演じることで、リアリティが生まれているのかもしれない。 なので、高橋長英や品川徹といった顔なじみのベテラン俳優が登場する後半は、リアリティ感が薄れてしまっていて残念。 特に、品川徹演じる寝たきりの弁護士が登場するシーンでは、周囲の登場人物も含めて出来の悪いコントのよう。 主人公に逮捕を告げに来るふたりのうちのひとりが繰り返し繰り返し見る夢を、そのうち主人公が見はじめ、夢に登場する奇妙な建物が現実に登場する終盤は、70年代の映画風でかなり好み。 主人公には衝撃の結末が訪れるが、もしかしたら、われわれだって同じような顛末をたどるかも・・・と思わずにはいられない。