「最後の戦い」死の谷間 レントさんの映画レビュー(感想・評価)
最後の戦い
リュック・ベッソンのデビュー作「最後の戦い」を思い出した。核戦争後に生き残った男たちが一人の女をめぐって互いに殺しあう。人類が戦争で滅んでも愚かな戦いをやめることができない人間の悲しい性を描いた傑作だった。
原作の主人公は15歳の少女であり、男は一人しか出てこない。しかし、核戦争で人類が滅び、唯一生き残った人間が結局愚かな行為を繰り返してしまうという救いのない話であるのは原作と同じかも。むしろ本作は原作以上に人間の持つ業の深さをより鮮明に描いているかもしれない。
恋敵のケイレブを殺したであろうジョンは元研究者であり、知性的で理性的な人間といえる。
アンとの男女関係についても慎重で紳士的であった。しかし、ケイレブが現れたとたん彼の心の奥に潜んでいた様々な感情が表出する。
明らかに二人の関係が気になり、ケイレブをアンに近づけまいとするジョン。また二人がひかれあってると思うと、黒人であるという引け目もあってか自分は身を引くということを口走り、あくまで紳士的に冷静に振る舞おうとする。
しかし、そのように冷静を装えば装うほど彼の中ではケイレブへの嫉妬心でいっぱいになる。
そして二人が深い関係になったと知ったとき遂にジョンはケイレブを手にかけてしまう。
互いの欲望や憎悪がもとで戦争を起こして自滅してしまった人類。その唯一の生き残りである人間が皮肉にも己のエゴから同じ過ちを犯してしまう。
核汚染を免れたオアシスのような谷で再び起きた悲劇。ジョンのように人類の文明を唯一後世に引き継がせる能力があった人間でさえ、この人類の悲しい性からは逃れられないのか。
人類の逃れようもない業の深さを描いたサスペンスの佳作。ちなみに信仰の象徴である教会を取り壊して文明たる発電のための水車に作り変えるくだりなどはとても印象的でいろいろと考えさせる作品でもある。
失礼します
共感ポイントありがとうございます なにぶん、随分前に観賞した作品なのでごめんなさい、あまり記憶になくて・・・ マーゴット・ロビーの顔も変わっている感じで、同じ俳優なのか、時間というのは怖ろしいですね・・・
本編とは関係ありませんが、『福田村事件』他サイトのレビュー、拝見しました 僭越ながら、大変秀逸に表現されている文章だと感じました
どんな国の人達だろうと、条件が重なれば最悪な事態が現実となる そしてそれは今でも繰広げられる あの作品のメッセージは、別に日本人に特化した話ではなく、人間の虚弱さのメカニズムを再現しようとしたフィクションと捉えております 人を蔑む事、そして人に恨まれる事、人を疑う事、最後に憎悪を依代に生きなければならない環境 幾らでも地獄と化すこの世界は、さしずめロシアンルーレットの如くですね(苦笑
そんなタイトロープな世界を認識して欲しいという、其処までしか伝えていないメッセージだと思います 捉え方は人それぞれでしょうが、それが今作品の評価に逆流することに疑問を感じます
私は、貴殿のレビュー、差し出がましいですが共感ポイント付けさせて頂きます