ブリグズビー・ベアのレビュー・感想・評価
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世界が広がる瞬間
○作品全体
世界の広がりというのは必ずしも物理的な広がりだけではない。自分の一部となっているものが自分の知らなかった何かに触れることで違う意味をもつことも世界の広がる瞬間だ。
監禁されていたジェームズがテレビを見たりパーティに行って様々なことに驚くシーンも面白いが、スペンサーとブリグズビーベアについて話したり、映画の特殊効果の存在に触れてブリグズビーベアへの考えが変わっていくシーンが興味深かった。自分の一部になっている作品を誰かと共有できる喜びみたいなものが、ジェームズの表情や仕草から伝わってくるのがとても良い。
作品全体で見るのであれば人の輪の広がりみたいなものが中心となっているのだろうけど、個人的には自分の内だけにある熱意を共有できた瞬間の喜びであるとか、意見交換によって熱意が次のステップへ発展していく様が素敵な作品だなと思った。ブリグズビーベアが嘘番組であったと一度否定されてもなお、好きな物は好きな物として自分の中に存在する心強さみたいなものを感じる作品だった。
○カメラワークとか
・序盤、初めて自室に入るジェームズのカットが良かった。余白の多い空間と胸から上だけ映るジェームズ。ここはジェームズの居場所じゃないというのがにじみ出てるような。
人が物語を必要とする理由
人が生きていくために、物語が必要なんだと思う。本作はそんな物語の力を信じている。外界から隔絶された環境で、ニセの番組を観て育った主人公にとってその番組は世界の全て。その番組の作られたいきさつはどうあれ、主人公はその番組から人生の大切なことを教わった。
人はこの世界を物語を通して学ぶ。ギルガメシュ叙事詩の頃から人は物語を通して世界と人生について学んできた。この映画は、そんな人と物語の関係についての深い洞察がある。
フィクションは事実ではない。しかし人はフィクションから世界の真実を学ぶ。偽物の両親が作った偽物の番組であっても、そこには何かの真実が宿っている。
良くも悪くもスターウォーズという映画史でも一際有名なフィクションに人生を変えられたマーク・ハミルがこの映画にキャスティングされているのは大正解だと思う。役から発する彼のセリフは彼自身の人生も投影されているような説得力がある。
こんな映画だとはつゆほども思わなかった、意外と深くて刺さる掘り出し物の一本
実に奇妙な一作だ。可愛らしいクマさんをめぐる冒険活劇かと思いきや、冒頭からすでにコメディともシリアスともつかぬ線上を綱渡りするかのような、なんとも言えない妙味が炸裂。序盤は『トゥルーマン・ショー』などでおなじみの「メタ・フィクション」というテーマを濃密に描き込み、中盤からは『桐島、部活やめるってよ』のような「自分の手で映画を撮ろう!」的な高揚感あふれるダイナミズムを発動させる。かくも一粒で二度おいしいではないが、一本の中にいくつもの趣向やテーマ、メッセージ性が内包され互いに影響を及ぼし合うのを堪能することができる。
作り手によると「『自分にとっての全て』と思い込んでいたものが突如終焉を迎えた時、人は一体どうするのか?」に焦点をあてた作品でもあるとのこと。人間の生活、人生、暮らしのみならず、宗教、国家、文化に置き換えたとしても多元的で複層的な解釈ができる、極めて現代的な作品と言えそうだ。
二律背反の窮屈さからグレーゾーンへの脱出!
幼児誘拐と拉致監禁、本来ならものすごくどんよりするテーマだが、尾の映画はふんわりと優しいコメディ仕上げ。しかし決してキレイごとではない。
善か悪か、本物か偽物か、現実かファンタジーか。二者択一するにはこの世界は複雑で曖昧に過ぎるし、ムリに切り分けるとこぼれ落ちてしまう大切なことがいっぱいある。この映画は、そんな二律背反の堅苦しさから、キャラクターを、映画を、人生を解き放ってくれる。
清濁併せ吞む、というほど大仰でなく、ただ目の前のできること、やりたいことを積み上げていけば、幸せは見つかるのではないか。
もちろん現実はこの映画よりどす黒く、汚いかも知れないが、この映画程度のささやかな善意や希望は望んでもいいのではないか。
ネタバレが怖くて曖昧なことしか書いていませんが、本物の「いい映画」に出会えて本当に嬉しい。
思いがけない傑作
それまで自分の中の全てだったブリグズビーベアが、実は誘拐犯の父による作品だったと知る
開けた世界にはブリグズビーベア以外の全てがあるが、ブリグズビーベアはない
絶望してもおかしくない状況で、主人公はブリグズビーベアの作者が元父であることに興奮する
そして続きは誰が作るのかと。誰もいないなら僕が作ろうと。
初めてブリグズビーベアの良さを共有できる友達もできた
一緒に劇場版を作ってくれるし、これまでの話をネットにアップして広めてくれもした
閉ざされた世界での救いや教育としての物語
(主人公は新しい父とのバスケより、よっぽどブリグズビーや映画作りに夢中)
そして作者の罪によらない物語
(昨今名作の監督がセクハラなりで問題になってたりするが、作品の価値はそれによらないと言うかのような)
監督の作品観が滲み出ていていい
そして映画作製の楽しさ、温かさがいい。
うわぁ、この映画好きだわ〜。
うわぁ、すごいいい映画!観終わって、心があったまる幸せな気持ちになったなぁ。ちょっとウルっとしちゃった。
ジェームスの素直さと、好きな事や物に対する真っ直ぐな気持ちと、その一生懸命さに胸が打たれた。好きな事してる時間ほど至福な時は無いよね。
それでも人の目が気になって、自信をなくしちゃう事もあるけど、人の評価なんか気にせず自分の信じた事を続ける事に意味がある。
スペンサーのトイレでの言葉にグッときた。
「他人の評価なんてどうでもいいさ、君はやり遂げたんだ。」
自分も頑張ろうって思えた。
ブリグズリーベアもかわいいし、Tシャツかわいいから、買おう。
ほのぼの
ホッとするようなほのぼのストーリー
両親だと思っていた人は誘拐犯だった、という重い話のはずだが、重さは微塵もない。
少ししんみりしたシーンもあったが、基本的には、純粋な?楽観的な?主人公が大好きなブリグズビーベアの続きを自分で作るというお話。
友達からのおすすめ
2023年で見た映画の中のトップ3だったらしい。
ジェームスの「好きなこと」は
やっぱり一番すごいのは、この設定なら普通はこんなストーリーになるんじゃ?みたいな、ある意味常識といってもいいようなことを吹っ飛ばしてちょっと違うストーリーにしているところだよね。
とはいっても完全に無視しているわけではなくて、ジェームスはもちろん、本当の両親も、偽の両親も、痛みや苦しみは節々からみてとれる。ただ、強調して描写することがなかっただけでさ。
痛みはあるけどあえて見せない優しさがいいよね。
ではどんな物語だったかというと、勇気と、好きなことを諦めない気持ちと、最終的にはジェームスが現実という光の国で生きていく立ち直りの物語だったよね。
ジェームスの好きなことというのがブリグズビーベアだと思うかもしれないけど、ブリグズビーはジェームスが自分を投影した勇気の形、自分を表現し伝える手段というだけで、彼が本当に好きなことはもう少し先にあるのもいいよね。
ラストシーンでブリグズビーが手を振ったあと、ジェームスの中の光の国と現実世界が同一になり、更にもっと「好きなこと」に邁進するのかなとか考えると自然と笑みがこぼれるよね。
スターウォーズ・ファンをやめてしまう前に
これはどう見てもジョージ・ルーカスの生涯を意識した映画だろう。
彼が映画作りに情熱を傾けて「スターウォーズ」で成功を収めるまでにたどった数奇な運命を、ジェームズ青年に重ね合わせて描いてある。
個人的な出来事で恐縮だが、「最後のジェダイ」はひどかったと今でも思う。それでも劇場に3回見にいったし、今年予定されている新作も楽しみにしている。しかし、友人の一人は、もうファンをやめてしまった。レイアの「あれ」を見てしまった後に、何とも言えないむなしさを覚え、熱心に集めてきたフィギアなんかも手放し、「ハン・ソロ」も見たいとも思わず、何を話してもなしのつぶて。実に残念なイベントだった。ライアン・ジョンソンは罪作りなことをしたものだ。
そう考えると、この映画は、ファンにとっては刺さりまくる演出が、そうじゃない人にはただのガラクタに見えるし、実際にガラクタなのだと知らしめてくれる。そして、ジェームズ青年の育ての親、マーク・ハミルも、ファンタジーな設定を奇妙なほどピタリとはまって演じている。彼がいなければ、この映画は本当に成立しない。
友人にもう一度言いたい。「せめて、ファンをやめる前にこの映画だけでも見てよ」と。
2019.6.10
安心して観られるし、ちゃんと笑える暖かいコメディ!
ストーリーの大筋は知っていたけど、ジャンルはコメディだと思ってたらから、前半のエモーショナルな雰囲気に驚いた!
音楽も画もしっとりとしていて、「バカコメディではないんだな〜」と。
最初の、「空気が汚染されてるから〜」とかのところは、大筋知っていてもうまいことミスリードされて、「どんな世界線なんだ…!?」とグイグイ引き込まれたので、前情報なしで見る方が面白かったかも。
ホームパーティ(?)のシーンは、世間知らずな主人公がなんか若者に陥れられたりするのかなぁと思ってビクビク観てたけど、みんなほんとに優しい人たちでよかった。笑
刑事さんから、ベアの頭や小道具を受け取るときの、「本物だ!これはアツすぎる!」とウキウキしてるのが、クマガチ勢って感じで面白かった!笑
友達に布教してビデオ貸して、2人で「あのシーンやばいよな!!」と言い合って…少年って感じでよかったし、作品を共有できて嬉しそうな主人公の表情がよかった。
友達くんが、古いSF好きっていうのも納得できるところだったし、ブリグズビーベアのビデオの感じや設定もめちゃくちゃそれっぽくて面白かった!
劇的な状況に置かれてたのに主人公が終始あっけらかんとしているのも、ほんとにクマのことしか考えてないのも可笑しかった!笑
周りの友達や昔の家族や今の家族が、総じてみな優しかったのが良くて、安心してみられる作品だった。
主人公が、「昔のパパ」と呼ぶのがよかったし、刑事さんや新しい両親も、主人公との付き合いが深まるにつれて主人公の心情に寄り添って、「誘拐犯」ではなくて「昔の両親」へと認識を変えていくのがとても柔軟で優しかった。
新しい世界
25年も外の世界に触れず、両親(実は血の繋がってない誘拐犯!)と3人だけで暮らしていたジェームス。周囲には人も住んでないし、家の外は空気が汚れていると教えられている。友達もいない彼は、週に一度渡されるビデオテープを楽しみにしていた。そのビデオのタイトルが、「ブリグズビー・ベア」。
誘拐されて、25年何事もなかったのがすごい。病気になったら。けがしたら。天災に遭遇したら。ジェームスが反抗したら。巧妙に様々な困難をクリアした、テッドとエイプリルは、ある意味すごい。しかも、体操させたり、道徳を植え付けたり、架空ネット上とはいえ人と交流させたり、教育プログラムは侮れないレベル。このエネルギーをもっとまともな方向に使えば良かったのにねぇ。
突然環境が激変して、相当困ったであろうジェームス。一方探し続け、待ち続けた息子でも、変わった言動に戸惑う両親。妹だって突然兄と言われても、ついていけない。こういう場合、他人の方がけっこう付き合いやすい。ジェームスにとって、世界の全てだったブリグズビー・ベアを、面白いと言ってくれたスペンサー。映像方面に進学するスペンサーの助力で、ブリグズビー・ベアの続きを、自ら作ろうと決めた。さあ、ここからまっしぐらに青春ストーリーへ!
ニセ父テッドのファニーボイスを聞けるだけでも、見ごたえのある作品(笑)。じんわりほんわか、笑って泣ける小品。
フジテレビの放送を録画視聴。
ヴィジュアルからもっとポップでファンシーな物語だと思ったら拉致監禁...
[個人的には] 面白かったです
創作活動をしたくなる
海外の映画館で鑑賞。
監禁モノにおける話のメインは脱出になりがちだがそうではない作品もある。
「ルーム」は中盤で脱出し、本作では開始5分で救出される。「ルーム」では脱出後の世界も地獄だったが、本作の主人公はそれまで暮らしていた両親が誘拐犯だったと知るところからのスタートになる。それも25歳で。
自分の好きな物語が突然終わってしまった、なら自分の手で続きを作ろう!となるオタク根性が素晴らしい。
役者になりたかったと語る刑事に、なぜ夢をあきらめたのかと言うジェームズの無垢で残酷な問い。
人はいつ自分の創造性に見切りをつけるようになるのだろうか。ジェームズに協力することで生き生きし始める刑事が良い。
クリエイターの端くれなら、観た後に創作活動をしたくなる一作。
なんじゃこの映画
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