劇場公開日 2018年8月31日

  • 予告編を見る

「日本もレバノンも同じ」判決、ふたつの希望 ノリック007さんの映画レビュー(感想・評価)

5.0日本もレバノンも同じ

2018年9月2日
PCから投稿
鑑賞方法:映画館

怖い

知的

難しい

「THE INSULT(侮辱)」で法廷で争点となる侮辱を示しています。
鑑賞後には、邦題「判決、ふたつの希望」の方が良い感じがします。

国も、時代背景も、宗教も、人種も、差別も理解しにくい難しい映画です。

レバノン共和国は、中東にあり、南はイスラエル、北から東にかけてシリアと
国境を接し、西は地中海に面しています。
首都は、ベイルートです。
公用語は、アラビア語です。
人口は、598万人です。
通貨は、レバノン・ポンドです。
宗教は、キリスト教が40%、イスラム教が55%です。
産業は、金融業、観光業、食品加工業等ですが、1975年から1990年まで
15年間の内戦、混乱を経て復興中です。

レバノン人は、キリスト教徒もイスラム教徒もいます。
パレスチナ難民は、イスラム教徒です。

1976年1月18日、レバノンのキリスト教徒の民兵組織は、カランティナ地区を制圧し、
1500人ものパレスチナ人とイスラーム教徒を殺害しました。

1976年1月20日、レバノン国民運動(LNM)と提携したパレスチナ人の民兵は、
カランティナ地区での殺害の報復としてダムールの村の500人ものキリスト教徒を
殺害しました。

シャロンは、イスラエルの軍人で、第1次中東戦争では特殊部隊に加わり、
反イスラエル組織に対する壊滅作戦を行うだけでなく、前線指揮官が現場
で独自に判断して、私的な報復も行いました。
シャロンは、その後の2~4次中東戦争でも独断専行で戦闘を行い、戦果を上げ、
国民的な人気を得るが、軍からは評価されず、軍を離れ、政治家になり、
1981~82年は国防相、2001~2006年までは首相になりました。

1982年8月23日に、バシール・ジェマイエルは、イスラエルの支援により、
イスラエルの傀儡政権を作るために、レバノン大統領に選出されました。

1982年9月14日、バシール・ジェマイエルは、爆破テロで、大統領に就任
することなく、死亡しました。

1982年9月16~18日、シャロン国防相が率いるイスラエル軍の助けを得た
キリスト教徒の民兵組織「レバノン軍団」は、バシール・ジェマイエルの殺害の
報復として、3500人ものサブラーとシャティーラのパレスチナ人とシーア派の
レバノン人を殺害しました。

レバノン人は、パレスチナ人に殺されかけたし、親族や知り合いが殺されている
ということです。
パレスチナ人は、シャロン率いるイスラエル人に殺されかけたし、親族や知り合い
が殺されているということです。

殺されかけたり、親族や知り合いが殺されたという気持ちは、決して忘れることは
できないし、許すこともできませんし、謝罪などもってのほかです。

レバノン人は、復興のために、安い人的労働力として、パレスチナ難民を必要と
しています。

パレスチナ難民は、イスラエルに戻ることができずに、レバノンで不法労働者
として生きていかなければなりません。

「判決」は言い渡されます。
歴史は変えられないし、忘れられない。
歴史を踏まえ、進む2人が「ふたつの希望」です。

日本にも不法労働者はいるし、ヘイトスピーチ、パワハラ、セクハラ、いじめ
という差別もあります。

日本人も太平洋戦争中に、アジアで虐殺はしました。
アジアの人々は、日本人のした虐殺を忘れることは無いですし、
許すこともないです。
日本人として、アジアに行くことになれば、代表的な日本人
として、負の遺産を持っていることを認識していないと、
些細なことで大変なことになります。
日本国内なら言い訳や責任転嫁が通用しますが、日本国外では
言い訳や責任転嫁は通用しません。

支持を得るためだけに、言い訳や責任転嫁をして、人々を
扇動する政治家は日本国外では全く役には立ちません。

相手を理解し、誇りと自信を持って仕事することで、新たな
関係を構築し、憎しみの連鎖を断ち切ることはできます。

韓国やシンガポールや米国で仕事をしてきましたが、政治と
仕事は別だという関係を構築できたことに自負を持っています。

映画を理解したいという人にはパンフレットの購入をお勧めします。

ノリック007