「生きることが愛しくなる映画」洗骨 shironさんの映画レビュー(感想・評価)
生きることが愛しくなる映画
いっぱい笑って、いっぱい泣きました。
照屋監督のすごいところは、感動のシーンにも笑いを散りばめてくるところ!
しかも、その笑いを入れることで感動が切れたり薄れたりすることなく、
むしろその笑いによって、感動のシーンがより豊かに人間らしいシーンとなり、愛しさがこみ上げてきます。
声を出して笑いながら、一つのシーンで二度目の涙が流れていました。
沖縄の持つ俯瞰的な目線と言いますか、大らかさとでも言いますか。
自然が豊かなぶん、生と死が近いのかもしれませんね。(アグリ島にはあの世もあるし)
だいたい、普通にヤギがいたり、家の前の道に椅子とテーブルを出して、おじいがサンシンを奏でていたり…私の日常とはかけ離れた風景が驚きですし
美しい海、美しい空。いつも音楽があり、踊りがある。
この風土によって独自の文化が生まれたのだなぁ。と感じました。
その独自文化の最たるものが「洗骨」なのでしょう。
この土地だから出来た風習…
ってか、この風土でないと無理〜!!!
今回初めて「洗骨」という言葉を耳にしたのですが、勝手にカタコンベにあるような、完璧に白骨化した古い先祖の骨を洗う儀式を想像していました。
でも映画のなかの説明によると「風葬」で、土に埋めるのではなく、棺に入れたまま冷暗所に置いてミイラ化した骨を洗う行為と知り
えっ?ミイラ??
しかも亡くなって4年で洗骨…。
そこそこ新しいのでは?
エジプトのミイラは見たことあるけど…4年だと、どんな状態のミイラなのか :(;゙゚'ω゚'):
墓暴きの『ザザンボ』がよぎりました。
いったい監督は「洗骨」のシーンをどのように撮るつもりなのか?
まさか、ミイラを画面に写す気なのかしら…(;´д`)
でも、その不安とちょっとした恐怖は、主人公家族も同じ。
変わり果てた家族を目にするのですから、なおのことでしょう。
母親の葬儀から4年後。
洗骨の為に故郷に戻ってきた子供達と父親との、洗骨までの日々の出来事を一緒に追ううちに、私にもこの家族の「洗骨」に立ち会う覚悟が出来ました。
むしろ、この家族の「洗骨」に立会いたい!と思えるほど。
ネタバレになるので、これ以上は書きませんが
驚きと愛の詰まった「洗骨」シーンを、ぜひ劇場でご覧いただきたい。
その土地に必要だったから生まれて、その土地に必要だったから受け継がれてきた文化。
よそ者の私ですが、洗骨の儀式を通して島がどれだけ命を大切に育んできたかを感じることが出来た気がします。
そして、エンドロールで『童神』が流れます。
歌声と歌詞が心に響いてまたもや大号泣。
まるで映像にはない、これから先の新城一家が見えるかのようでした。
暖かい涙をたくさん流して、沖縄の空のように晴れやかで清々しい気持ちになれました。
照屋年之監督の次回作にも期待します!
#洗骨#洗骨感想