「いろんな意味で良い面と悪い面を混濁させた仕上がり」エヴァ ぐうたらさんの映画レビュー(感想・評価)
いろんな意味で良い面と悪い面を混濁させた仕上がり
いろんな意味で、良さと悪さを併せ持った映画だ。まずオープニングのシークエンスは主人公と老人との意味深なやりとりや、巧妙なセリフの応酬、そして何より本作に幾度も登場する列車が目の前を通過していくという不可思議な部屋も含めて、緻密に計算された場面に仕上がった。そこで手にする「戯曲」も含め、導入部としては完璧。泥舟で川を渡ってしまったが故に戻れなくなる主人公の葛藤も、そこから竹を割ったような性格で客を魅了する情婦につきまとって着想を得ようとする流れも面白い。
だが、彼の本心は見えにくく、かといってヒロインのイザベル・ユペールにも感情移入など出来るわけもなく、結果的にすべての事柄が平行線をたどったまま、ひとつのカタルシスもなく結末を迎えたという印象。同じ脚本を使ったとしても、もう少し主人公の複雑怪奇な心理にうまく迫れる監督だったなら、この映画は劇的に深みを増したであろう。つくづく勿体ない映画だ。
コメントする