「退屈なのは、私自身。」ここは退屈迎えに来て puccinoさんの映画レビュー(感想・評価)
退屈なのは、私自身。
歳を重ねていくにつれ、青春映画を観たくなるのはなぜなのか。観ている間はあの頃の自分を思い出し、
懐かしさと同時にどこかに落としてきてしまった大事な何かを気付かせてくれる。
それが何かは分からないけど。
終始緊張感のカケラもない日常が延々と続くようなこのけだるい空気感は、あの頃の悶々とした毎日と、
今の自分達の状況そのものを表現しているのかもしれない。
結局みんな椎名君のことが大好きだったんだね。今でも。
あの時好きな気持ちをなんとなく伝えていれば、今だにこんなにも想いを募らせることはなかったのに。
思い出なんて自分に都合のいい妄想に変わっていくもの。
劇中歌の「茜色の夕日」
まさかあのタイミングでこの歌が聴けるなんて。軽い鳥肌が。
「あたし」が唄うこんなにも可愛くて切ない「茜色の夕日」を今まで聴いたことがないよ…
原チャリを飛ばしてグシャグシャの顔して泣きながら唄う新保君。もう最高に情けなくてカッコ悪くて。
観ててもらい泣きしそうになった。一体どこに向かって走ってんだよ新保君…
この二人の悔しい気持ちを振り絞った叫びの歌は
迂闊にも頼りない私の心の奥底に沈んでいた何かに響いてしまったのです。
「高校生のままだよね」
「私」が言ったこの言葉は椎名君のことではなく、何も変わってない今の自分達に対して嘆いた本音だろう。
憧れの東京と憧れの椎名君。
憧れの対象はとっくに自分を追い越して先に進んでいるんだよ。
退屈と思うのは何も変わらない自分のせい。
いつまでも引きずってちゃダメなんだ。
最後の場面
屋上から見える夕暮れの東京の景色がとても綺麗 。画面いっぱいに広がる憧れの東京。
そしてタイトルの後のあのオチ。最高。
どこにでもある街に生きるどこにでもいる若者たちの素敵な群像劇でした。